カテゴリーアーカイブ:行政

中井英雄ほか著『新しい地方財政論』

2020年3月23日   岡本全勝

中井英雄、齊藤愼、堀場勇夫、戸谷裕之著『新しい地方財政論 新版』 (2020年、有斐閣)が、出版されました。10年ぶりの改訂です。若かった先生方も、重鎮になられています(当時も重鎮でしたが)。

コンパクトながら、バランスよくできていますよね。地方財政の標準的教科書といえます。これだけの内容を、この大きさにまとめるのは、なかなか難しいです。著者は、「欲張った」内容とも言っておられますが。
かつての理論重視の教科書と違い、制度、経営、理論、実証という4部構成は、優れものです。学生や自治体職員には、このような構成がふさわしいでしょう。地方財政も、現場での課題や運営が、どんどん新しくなっています。それを入れた内容です。公務員の皆さんにも、お勧めです。

中井先生に「ヤードスティック方式」を教えていただき、交付税の算定に反映させたことが懐かしいです。小生は、地方財政どころか、地方行政から離れて久しく、先生方の議論について行けません(反省)。
地方財政は、自治体現場、制度設計の総務省、研究者、マスコミの専門家などが噛みあった議論ができる、優れた「政策共同体」をつくっています。そのような政策分野って、意外とないのです。
今後とも、これら4者共同による、建設的な議論を期待します。

公務員の転職希望増加

2020年3月18日   岡本全勝

3月15日の日経新聞が「転職希望の公務員が急増 外資やITへ流れる20代」を載せていました。
・・・公務員の人材流出が増えている。大手転職サイトへの公務員の登録数は最高水準にあり、国家公務員の離職者は3年連続で増加した。特に外資系やIT(情報技術)企業に転じる20代が目立つ。中央省庁では国会対応に伴う長時間労働などで、若手を中心に働く意欲が減退している。若手の「公務員離れ」が加速すれば、将来の行政機能の低下を招く恐れがある・・・

・・・公務員の年代別登録者数では、20代が同33%増の7244人と急増した。民間企業の中でも意思決定が速い外資系コンサルタントやITベンチャーに転職する例が多いという。
19年に中央官庁からITベンチャーに転職した30代女性は「省庁で働いてもつぶしがきかない。『最後のチャンス』と30代前半までに民間転職を考える人は多い」と語る。有能な若手ほど現状の業務に疑問を感じている可能性が高い・・・

・・・「生きながら人生の墓場に入った」「一生この仕事で頑張ろうと思うことはできない」――。19年8月、厚労省の若手職員で構成する改革チームが働き方に関する提言をまとめた。20~30代の職員の約半数が業務にやりがいを感じている半面、6割が「心身の健康に悪影響」、4割が「やめたいと思うことがある」と回答した。
総務省の働き方改革チームが18年にまとめたアンケートでも「モチベーション高く仕事ができている」との回答(「どちらかと言えばそう思う」を含む)が部長級以上で90%を超えたが、係長級では54%にとどまった。
慶応大大学院の岩本隆特任教授の調べによると、霞が関で働く国家公務員の残業時間は月平均100時間と民間の14.6時間の約7倍。精神疾患による休業者の比率も3倍高かった。若手を中心に国会対応で長時間拘束されることや、電話対応などの雑務に時間を割かれることが長時間労働の原因となっている・・・

とても危機的、悲しい話です。後輩たちに、魅力ある職場を引き継げなかった私たちにも、責任があります。

政治家の自己愛と他者への共感力

2020年3月16日   岡本全勝

3月14日の朝日新聞オピニオン欄「宰相の言葉」、水島広子・精神科医の発言から。

・・・政治家は自己愛が強いと言われます。「自分は特別な存在」という性格そのものは、私は全否定しません。人を酔わせる演説も、自己愛が強くなければできませんから。自己愛は多くの政治家にとって不可欠なエネルギー源です。
しかしもう一つ、まっとうな政治家に欠かせない条件があります。それは、他者への共感力です。他者とは、自分とは異なる意見を持つ人たちも含みます・・・

学校一斉休校、子育て家庭への影響

2020年3月14日   岡本全勝

新型コロナウィルス対策として、学校の一斉休校が要請されています。予定していなかった学校の休校で、さまざまところに影響が出ています。
3月12日の日経新聞「追跡コロナ 日本の宿題(2)」は「休校「子どもだけで留守番」3割 個人頼みの預け先探し」を報道していました。詳しくは記事を読んでいただくとして。

子育て中の家族がさまざまな状況にあることを、知る機会になりました。
女性の社会進出によって、母親も働いている家庭が多くなりました。その受け皿になっているのが、保育園であり、学校と学童保育です。これらがないと、小さな子どもを抱えた親は、働きに行くことができません。小学校低学年までは、一人で留守番をさせるわけにはいかないでしょう。

親が働きに行けなくなると、収入がなくなるだけでなく、勤務先は労働力を確保できません。小売店や保育園など、お母さんたちが働いている職場で、人手不足になっています。もちろん、母親が休むのではなく、父親が休むこともあります。母子家庭や父子家庭は、きついです。

さらに、給食がなくなって困ったという家庭もあるそうです。貧困家庭で、学校給食が一日のうちで最もバランスの取れた食事だという家もあるそうです。子供たちに無料または安い料金で食事を出す「子ども食堂」も、閉鎖されているところがあるようです。これも、困るでしょうね。

災害時やこのような危機の際に、社会における弱者が浮かび上がります。それを把握し対策を打つ、良い機会だと思いましょう。

国による自治体への計画策定義務づけ

2020年3月12日   岡本全勝

全国知事会の地方分権改革の推進に向けた研究会に、興味深い資料があります。国による計画策定の義務づけについてです。資料1の20ページです。
平成4年(1992年)の157件から、令和元年(2019年)の390件まで、230も増えています。

1 どのような分野で、どのような計画づくりが増えたのか。分析が欲しいです。それによって、近年の行政が取り組んでいる分野が分かります。

2 知事会が問題にしているのは、これら増えている計画づくりが義務ではなく、任意だということです。義務づけは、自治体の自由を拘束するとして、問題としました。だから、任意が増えたのでしょう。
では、任意なら良いか。表面的にはそう見えます。ところが、
・計画づくりが、国庫補助金交付などの要件とされているのです。補助金が欲しければ、計画を作らざるを得ません。
・たぶん自治体では、「法律に規定され、他の自治体も作っているのに、我が市では作らないのか」と聞かれると、右にならえで、作らざるを得なくなることもあるのでしょうね。
計画を作ったかどうかは、国のホームページで公表される場合もあるそうです。

3 390件もあると、首長も職員も、全体像を把握できないでしょうね。もちろん、1市町村が、390全ての対象に該当するわけではありませんが。町村役場では、職員数も少なく、一人あたりどれくらいの計画を担当しているのでしょうか。

4 その計画を作るのに、市町村ではどれくらいの労力が費やされているのでしょうか。時に指摘されるのが、コンサルタント会社への委託(丸投げ)です。小さな町村では、こんなにたくさんつくることはできないでしょう。

各府省の役人は、それぞれの分野で「良かれ」と思って、このような法律や計画づくりを考えたのでしょうが、全体をまとめると、とんでもないことになっています。
自治体も、きっぱりと「我が町は、この計画は不要です」と拒否できれば良いのですが。