カテゴリーアーカイブ:行政

地方と国との司法決着

2020年3月9日   岡本全勝

3月4日の日経新聞オピニオン欄に、斉藤徹弥・編集委員が「地方と国、増える司法決着 地方分権一括法20年」を書いておられました。
・・・自治体と国を対等の関係とした地方分権一括法の施行から4月で20年。地方分権は停滞が否めないが、対等になったかどうかでみると成果と言える事象もある。法の運用や関与を巡って自治体が国と裁判で争う行政訴訟が増えてきたことだ・・・

詳しくは、記事を読んでいただくとして。指摘の通りです。かつては、法律的にも一部上下の関係が残っていましたし、意識の上でも上下の関係がありました。自治体に不満があっても、自治省をはじめとする各省が調整して、事を荒立てないようにしました。自治体も、訴訟に訴えるにしても、条件が厳しかったのです。

・・・政治的な利害調整を法廷で決着させる流れは「政治の司法化」と呼ばれる。政治主導の政策決定をめざした平成の統治機構改革は、冷戦崩壊で行き詰まった官による事前調整を見直し、司法による事後チェックへの移行を進めた。これが令和になって地方行政に現れてきたといえる・・・

次のような指摘もあります。
・・・政治の司法化が進むと、重要になるのが裁判所の信頼性である・・・専門家組織が裁判所を支える関係になることも大切だ。原発訴訟で判断が割れるのは原子力規制委員会の規制基準を妥当とみるか、不十分とするかによるところが大きい。安定した司法判断には、規制委が国民の信頼を高め、裁判所がその権威を認めやすくなる環境が必要になる。
ただ専門職のジョブ型雇用が主流の海外に比べ、日本は専門家組織が弱とされる。専門を重視する雇用形態が広がり、各分野で専門家組織の権威が高まれば、司法による事後チェックが安定し、政策決定でも専門的知見を重視することにつながるだろう・・・

世界の警察官の負担、人と金

2020年3月8日   岡本全勝

2月28日の朝日新聞国際欄に、「米国社会に漂う非介入主義」が載っていました。
ここで紹介するのは、そこに付いている表です。「米同時多発テロ(2001年)後の対テロ戦争関連犠牲者」(表の3)

それによると、総計77万人~80万1000人。内訳は、米軍が7千人ほど、民間契約業者が8千人ほど、現地の軍と警察が17万人ほど、現地の民間人が33万人ほど、敵軍が26万人ほどです。
また、これまでアメリカが支出した金額が、5.4兆円と出ています。

政治家とは、正直でも嘘つきでもなく・・・

2020年3月6日   岡本全勝

3月1日の朝日新聞「日曜に想う」、福島申二・編集委員の「お友達より、持つべきは敵」から。

・・・評論家の故加藤周一さんが20年前、本紙連載の「夕陽妄語(せきようもうご)」でユーモアまじりにこう書いていた。〈庭の桜の木を切った少年が、親に叱られるのを怖れて、切ったのは自分でないと言えば、嘘である。切ったのは自分だと言えば、それがほんとうで、少年は正直である〉
そして、〈そのときもし少年が「切ったという記憶はない」とか、「そういう質問に答える義務はない」とか、「誰が切ったかは後世の歴史家が決定する問題である」などと言えば、それはごまかしで、少年には将来政治家になる資質が備わっているということになろう〉・・・

心を病む官僚たち

2020年3月3日   岡本全勝

NHKウエッブニュース「心身病む官僚たち」を紹介します。残念ながら、昔も今も、心の病を発する公務員が、ある程度います。近年は、かつてより増えているようです。
拙著『明るい公務員講座』でも、私の経験を元に、それを防ぐ方法を書きました。一人で悩まずに、誰かに相談すること。周囲の人が、早く気づいて相談に乗ることです。

北村亘・大阪大学教授が、次のように指摘しておられます。
「この2~3年での仕事の変化を尋ねたところ、『業務量が増えている』『複雑化、高度化している』という回答が全体の7割に上りました。確かに補正予算を組む回数も増えているし、社会課題も複雑化しています。また、大規模な災害も多くなっているのに、職員は減っているという事実があります。状況は厳しくなっていますね」
「さらに調査で注目すべきは、『社会のために犠牲を払う覚悟がある』と答える人が7割以上に上る一方で、『官僚の威信は低下している』という回答は全体の9割に上る点です。公共への奉仕に燃える職員は必死なのに報われず、社会的にも評価が低いと感じる官僚が多いのではないでしょうか」

この指摘には、私も納得します。調査結果によるグラフもついています。ご覧ください。

対立する立場の調整、トリチウム水の処理、2

2020年2月26日   岡本全勝

対立する立場の調整、トリチウム水の処理」の続きです。
利害が対立する課題を、どのように決着をつけるか。安東さんは、避難指示が出た区域での、避難指示解除の事例を紹介します。田村市都路地区です。

まず、政府職員が、現地で暮らした場合の放射線量を測ります。個人線量計を住民にも貸し出し、測ってもらいます。そこで、放射線量が高くないことが確認されます。

避難指示解除決定の直前に、住民への説明会が開かれます。そこでは、解除を求める住民と反対する住民がいて、意見は平行線をたどります。議論が膠着したときに、区長の一人が「そもそもは政府が決めた避難指示だ。解除も政府が決めてくれ」と述べ、政府職員がそれを受けて「解除を決定する」と引き取ります。

・・・そもそも、利害が異なる中で、すべての人間が満足し、納得する判断を行うのは不可能であろう。重要であったのは、ある時点での賛成・反対の結論を一致させることではなく、一定の方向性を模索しながら、最大公約数として、それでよかったと思えるように努力していくことではないだろうか。「それでも、振りかえってみれば悪い選択ではなかったのかもしれない」と思える状況を作り上げていくことが、結果としての利害調整を可能としたように思える・・・

自然科学の世界と違い、世間の問題では唯一の正解があるとは限りません。人によって、考え方が異なるからです。どこかで結論を出して、妥協するしかありません。
その際の「正しい方法」は、十分な手順を踏むこと(手順)と、将来振り返ったときによかったと言えるかどうか(内容)だと、私は考えています。
この項続く