カテゴリーアーカイブ:社会

本音は排外的でない日本人

2025年10月24日   岡本全勝

9月28日の読売新聞1面コラム「地球を読む」、大竹文雄教授の「外国人受け入れ」から。

・・・今年7月の参院選では外国人労働者の受け入れに慎重で、規制強化を掲げた政党が票を伸ばした。海外では以前から反移民の政党が支持を高め、日本でも外国人労働者の扱いが主要争点になりつつある。
アフリカと国内4都市の交流を促す国際協力機構(JICA)の「アフリカ・ホームタウン事業」は、反対や懸念の声が多く上がり撤回された。
背景には、1990年に1%未満だった日本の外国人の人口比率が昨年は約3%に達し、10%を超える市区町村もあるという急速な日本社会の変化がある。
製造業、介護、物流、農業など人手不足の現場で多くの外国人が働き、地域経済に活力を与える一方で、急激な変化に不安を覚える人々も少なくない。
ただ、経済学の実証研究では、外国人労働者が自国の労働者の雇用や賃金に深刻な悪影響を与えることは観察されていない・・・

・・・・大阪大の五十嵐彰准教授らは、市区町村単位のデータから、外国人比率が上昇すると排外感情が強まるが、10%を超えると逆に寛容さが増える傾向があることを見つけた。接触が日常化すると脅威感が和らぎ、共生意識が高まる可能性を示唆している。
五十嵐氏の著書「可視化される差別」は、外国人差別の実態を多角的に解明した。労働市場や住宅市場、シェアエコノミーについて調査し、同一条件で応募しても外国人名だと不利に扱われることが確認された。
外国人への職務質問を日本人が正当化する背景に、外国人犯罪率を実際より過大に認識していることがあると示した。「差別はなぜ悪いのか」との問いに五十嵐氏は、賃金や教育水準の低下、健康悪化、他者への信頼喪失などの不利益を定量的に示した。

とりわけ興味深いのは、社会規範と人々の態度のズレを明らかにした点だ。回答者への直接質問と匿名性の高い質問の結果を比較したところ、日本では直接質問の方が排外的な回答が多く、匿名性を担保すると寛容な回答が増えたという。海外とは逆のパターンだ。
これは「本音は排外的でない人が、排外的であるべきだという“社会規範”に合わせて回答している可能性」を示している。排外的な発言が目立つ環境が、排外的意見が多数派だと人々に誤認させ、態度表明をゆがめている恐れがある。
これは多元的無知と呼ばれる現象に近い。「周囲は外国人に否定的だ」と人々が思い込み、自分も“社会規範”に従う。結果的に排外的意見が多数派のように見え、社会全体が実際以上に排外的に映る悪循環が生じているかもしれない・・・

機械は人を楽にしない

2025年10月23日   岡本全勝

人類は、仕事を楽にしようと、道具や機械を作り改良してきました。電気は灯りをともし、自動車は人を運んでくれます。パソコンのワープロソフトと印刷機は、手書きより早く、きれいな活字で文章を印刷してくれます。インターネットは世界中とつながり、情報を集めてくれます。電子メールや携帯電話は、遠くの人と話をしたり、文章のやりとりができます。

では、これで、私たちは楽になったのでしょうか。
電灯が普及するまでは、日が暮れたら寝ていたのでしょう。電灯が普及して、人は夜遅くまで活動するようになり、させられるようになりました。
携帯電話の普及は、いつでもどこでも遠くの相手と話ができ、文章のやりとりができるようになりました。それは、いつでもどこでも、相手から呼び出しを受けることにもなりました。休日でも、夜間でもです。ひっきりなしに送られてくる電子メールは勉強や仕事が中断し、すぐに返事しないと気を悪くする相手もいます。
映画やテレビの時代は、視聴時間と場所が限られていました。ビデオや動画配信が普及して、いつでもどこでも見ることができるようになりました。好きな人は、睡眠時間を削ります。勉強や仕事の時間を削る人もいます。

便利になることと、楽な暮らしが実現することとは、別のことのようです。この項続く。

店員の名札「日本語話せます」

2025年10月21日   岡本全勝

銀座を歩くと、外国人が多いですね。
8月は日本全体では340万人ですが、うち中国から102万人、韓国66万人、台湾62万人、香港22万人で、この4つの国と地域が飛び抜けています(訪日外客数、2025 年 8 月推計値)。欧米ではアメリカが19万人。銀座でも、この比率に近いのでしょう。

銀座の中心街は高級ブランド店が並んでいて、ヨーロッパの都市や観光地なみです。たぶん、その4か国の言葉が話されているのでしょう。日本人はどの程度、そこで買い物をしているのでしょうか。
ある人曰く「今は店員が胸に下げている札に「××語話せます」と向こうの言葉で書いてあるけど、いずれ「日本語話せます」と書かれますよ」。

ウインブルドン選手権で開催地のイギリス人が勝てず、海外勢が勝つことをウインブルドン現象と言います。アジアからの訪日客が、日本で、欧米製品を買うことは、どのように表現するのでしょうか。

子どものSNS依存の危険性2

2025年10月21日   岡本全勝

子どものSNS依存の危険性」の続きです。読売新聞は続いて、10月4日の1面で「米、子供のSNS規制拡大 10州で法施行 年齢確認など」を伝えていました。

・・・SNS事業者を相手取った訴訟が急増する米国で、子供のSNS利用を規制する法整備が拡大している。2日時点で、全米50州のうち少なくとも10州で関連法が施行され、新たに4州で施行を控える。一方、事業者側による訴訟で関連法の施行が差し止められるなどした州は7州に上り、子供を守るためのSNS規制を巡る綱引きが激化している。

子供のSNS利用を規制する関連法が施行されている10州のうち、テネシー、ミシシッピ州は未成年のSNSアカウント作成時に、ユタ州はSNSアプリのダウンロード時に、年齢確認や保護者の同意などを義務付けた。フロリダ州では、保護者が子供のアカウント削除を請求できる制度が導入されている。
米国で子供のSNS利用規制の動きが広がる背景には、メンタルヘルスなどへの深刻な影響がある。米疾病対策センター(CDC)の調査では、高校生の77%が頻繁にSNSを利用し、依存度が高いほどいじめや抑うつ、自殺企図が増える傾向が示された。
カリフォルニア大サンフランシスコ校の小児科准教授ジェイソン・ナガタ氏は、「子供の過度のSNS利用がうつ病や摂食障害などを招く」と規制の必要性を訴える。

今後、バーモントやミネソタ、ネブラスカ、バージニアの4州でも、新たな関連法の施行を控える。そのうちミネソタ州では6月、SNS利用時に「メンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性がある」との警告を表示するよう義務付ける法案を全米で初めて可決した。
ただ、これらの州の関連法が実際に施行に至るかは不透明だ。SNS事業者側による差し止め訴訟が相次いでいるためで、これまでに少なくとも7州で関連法の施行が差し止められるなどした・・・

子どものSNS依存の危険性

2025年10月20日   岡本全勝

10月3日の読売新聞が1面で「子供SNS依存 米訴訟増 2000件 仕組み「高い中毒性」」を伝えていました。
・・・子供のSNS利用が深刻な依存を引き起こし、心身をむしばんでいるとして、米国でSNS事業者を相手取る訴訟が相次いでいる。全米の訴訟件数は9月時点で計約2000件に上っており、原告団は「依存性を高める設計により、子供がSNS中毒に陥り、摂食障害や自殺につながっている」などとして、損害賠償や改善策を求めている。

米国では2021年9月、インスタグラムを運営するフェイスブック(現メタ)の内部告発で、SNSが「少女のメンタルヘルスを悪化させる影響を社内で把握していた」ことが明らかになり、メタや、ユーチューブを運営するグーグル、ティックトックなど、SNS事業者を相手取った訴訟が相次ぐようになった。
22年10月、数百件に上る同種の訴訟が「マルチディストリクト訴訟(MDL)」に併合された。その後も訴訟件数は拡大を続け、原告団弁護士によると、今年9月に1961件に達した。
原告側は、SNSが閲覧時間を最大化するよう設計されており、通知機能や次々と表示される投稿が脳内の快感物質の放出につながると主張する。青少年の依存行動を助長し、様々な精神的・身体的被害をもたらしており、SNSは「欠陥製品だ」と訴えている。
米保健福祉省によると、米国では現在、13~17歳の95%がSNSを利用する。原告弁護団のロナルド・ミラー弁護士は、「SNS事業者は、タバコ産業やスロットマシン産業の手法を取り入れ、子供の未発達な脳が衝動を抑えにくいことを知りながら、中毒性を高める仕組みを意図的に組み込んだ」と指摘している・・・

・・・「お姉ちゃんが動かない」。2021年2月、米ウィスコンシン州ミルウォーキーの住宅で、息子から異常を伝えられた父親が子供部屋のある2階に駆け上がると、娘(当時9歳)がドアノブにペット用のリードを引っかけ、首をつった状態で見つかった。娘は搬送先の病院で脳死状態と診断され、まもなく息を引き取った。
痛ましい事故は、SNSで拡散されて子供たちの間で流行していた、首を絞めるなどして一時的に意識を失う行為をSNSに投稿する「ブラックアウト・チャレンジ」挑戦中に起きた。米ブルームバーグによると、こうしたSNS上の「過激な遊び」に影響され、22年11月末までに14歳以下の子供が少なくとも20人死亡した・・・

・・・若者が特にSNSに没頭しやすいのは、感情をコントロールする司令塔的な働きを担う、脳の「前頭前野」が未成熟であることが関係しているとされる。自らの承認欲求がSNSで満たされると、途中で利用を止められなくなってしまうと専門家は指摘する。
米保健福祉省は、2023年に公表した報告書で、SNSを1日3時間以上使う子供は、精神状態が悪化するリスクが2倍になるとの研究結果を紹介し、「SNSの過度の使用は睡眠障害やうつ病などと関連がある」と警告する。10歳代の半数以上が「SNSをやめるのは難しい」と感じているとの調査結果もあり、SNSには強い中毒性がある可能性を示している・・・