カテゴリーアーカイブ:社会

日本人の真ん中は50歳

2026年8月23日   岡本全勝

8月5日の日経新聞オピニオン欄に、辻本浩子・論説委員の「「50歳真ん中社会」の設計図は 少子化対策こそ成長戦略」が載っていました。
・・・店のスタッフが足りない、介護の担い手がいない、バスが運休する。少子化と人口減は、私たちの暮らしに直結している。
少子化は社会の姿も変えた。50年前、日本の人口の「真ん中」の年齢は、およそ30歳だったが、今や50歳だ。
なのに、社会の仕組みには30歳時代のものが色濃く残る。ここが変わらなければ少子化はさらに進み、社会の活力に影を落としかねない・・・

赤ちゃんからお年寄りまで人口を年齢順に並べたとき、ちょうど真ん中に来る年齢を「中位数年齢」というのだそうです。
1950年は22.3歳、1975年は30.6歳でした。50歳が真ん中とは、あらためて驚きます。会社だと、部長に上り詰め、先が見えてくるころです。
平均寿命が伸びたこと、少子化が進んだことによるのでしょう。
アメリカは39.1歳、イギリスは40.7歳、フランスは42.5歳です。
30歳が「社会の中堅」という社会と、50歳が中堅の社会では、社会の仕組みも個人の人生(労働)も、変わらざるを得ません。

実年齢より若く感じる高齢者

2026年8月19日   岡本全勝

8月1日の日経新聞に「シニアの「気の若さ」マイナス7〜8歳 加齢に前向きで4年長生き」が載っていました。

・・・自分は実年齢より若いと感じる傾向を「若年視」と呼ぶ。60代以上では実年齢との差が7〜8歳に広がるという調査がある。気の若さが健康に与えるプラスの影響も分かってきた。

自分をどの程度若い、あるいは老いたと感じるかを主観年齢という。早稲田大学文学学術院心理学コース助手の澤田奈々実さんらは、東京都在住の4500人を対象に、主観年齢の世代変化を調べた。
20代では主観年齢が実年齢を0.2〜1.7歳上回った。30代以降は逆転し、30代で約2歳、40代で約4歳、50代では5〜6歳若く認識。60代以降ではマイナス幅が7〜8歳近くまで広がった。

なぜ年を重ねるごとに、若い方向にギャップが広がるのか。澤田さんによると、背景には心の防衛戦略がある。老いは喪失や衰退など負のイメージと結びつけられやすい。「自分は違う」と心理的に距離を置き、それが実年齢より若い主観年齢として表れるのだという。
男性は50代から60代以降にかけて若年視がマイナス5.1歳から同7.8歳へと一気に進み、その変化幅は女性より大きい。澤田さんは「働き方の違いが影響している可能性がある」と分析する。「50代以降は定年退職が視野に入り老いを意識する。『自分はまだ現役で能力もある』と考え、アイデンティティーを保つのではないか」

こうした心理は以前から知られており、実年齢と主観年齢の差は先行研究と大きく変わらないという。一方で、現在の高齢者は昔より若返っているという指摘もある。
日本老年学会と日本老年医学会は2017年、現在は65歳以上を高齢者としている区分について、加齢による身体機能の低下が10〜20年前よりも5〜10年程度遅くなっていると指摘。65〜74歳を「准高齢者」、75〜89歳を「高齢者」、90歳以上を「超高齢者」とする新たな区分を提言した。国立長寿医療研究センターの研究によれば、認知機能が良好な高齢者も増えている。

意識も変化してきた。「『老人』『お年寄り』は何歳から?」。博報堂生活総合研究所は1986年から10年おきに60〜74歳に同質問を尋ねてきた。86年時点で「老人」は71.5歳からだったが、2026年には75.9歳に上昇。「お年寄り」も72.8歳から75.8歳まで高まった。
上席研究員の高橋真さんは「今の60〜74歳は、自分たちは老人でもお年寄りでもないと思っている」と解説する・・・

私の子どものころは、60歳を超えると老人でした。平均寿命は男性64歳、女性68歳(1955年)でしたから。71歳は、かなりの老人でした。でも、今の私は、孫から「じっちゃん」と呼ばれても、自分のことを老人とは思っていません。若いときのように、動けず体力はありませんが。

日本社会の平等を支えたもの3

2026年8月17日   岡本全勝

「日本社会の平等を支えたもの2」の続きです。
平等と言っても、政治的平等、経済的平等、社会的平等、さらには家庭内での平等などがあります。
政治的平等は、憲法で確保されました。もっとも、男女格差による不平等は、政治の面でも続いていました。政治家に女性が少ないのです。
経済的平等は、経済成長によって、かなり達成されました。しかしここでも、男女格差は続いています。女性幹部は少なく、非正規雇用は女性が多いのです。そして、非正規雇用の拡大で、格差が広がっています。
社会的平等も、形式的には憲法で達成されました。残っていた実質的な格差は、経済成長などで減りました。が、男女の不平等は戦後半世紀も放置されました。政府によって男女共同参画が進められ、解消に向かっています。教育での男女格差も続いていました。大学進学率に男女差があったのです。近年は解消しました。家庭での男女の役割分担は、まだ続いているようです。障害者への差別も残っているでしょう。
「ムラの外の人」への差別も続いています。外国人などがそれにあたるでしょう。
ここで私が述べた「戦後達成した平等」は「昭和の平等」と言えるでしょう。

1 このように見ると、これまでの憲法学や経済学、政治学での「平等」は一面的でした。
平等や自由という概念は、絶対的に定まるものではなく、その時代時代に求められる、あるいは達成したものを指しているようです。そして一定のものを達成すると、次に欠けているものが見えてくるのです。
2 「ムラ型社会」「横並び志向」が支えた日本の平等は、農村や会社内では平等を支えました。また経済成長期には、各家庭の経済的平等、学歴の平等を支えました。しかしそれは他方で、男女格差を隠していました。また、才能や努力による競争を認めない方向での力が働きました。極端な場合は「悪平等」です。
3 この記事の表題は「日本の平等を支えたもの」です。経済成長期に強化され、それに適合した「ムラ型社会」「横並び志向」は、現在の社会と適合しなくなっています。すでに「昭和の平等」は崩れつつあります。さて、これからはどのようになるのでしょうか。

電柱王国日本

2026年8月17日   岡本全勝

8月10日の朝日新聞小学生ニュース欄に「無電柱化で通学路を安全に」が載っていました。ウェブ紙面では、読むことができないようです。
無電柱化とは、電線や通信線を地中に入れて、電柱をなくすことです。電柱は道路を狭くし、台風などでは倒壊の恐れがあり、さらに景観を損ないます。近くの高円寺商店街も、きれいな街灯を並べているのですが、その前をたくさんの電線が邪魔をしていて醜いです。
欧米に行くと、街並みがきれいですが、理由の一つはこの電線がないことです。もう一つは看板の有無。

記事には、いくつかの都市の無電柱化率が載っています。ロンドン、パリが100%です。
そして、香港、シンガポールが100%、台北が96%、ソウルが50%です。
対して、東京23区は8%。アジアの中でも、遅れています。
「輸出額、韓国と台湾に抜かれる」

人工知能で浮いた時間は仕事に

2026年8月16日   岡本全勝

8月2日の日経新聞別刷り「文化時評」に、「怠け心が育むフランスのイノベーション 効率が生む余暇、創造の源に」が載っていました。「日本人はハイテク好きで、新しいもの好きの国民といわれる。だが、フランス人も負けず劣らず技術革新を受け入れる。ただ、その動機には少なからず違いがあるようだ」が主旨なのですが、ここでは、次の部分を紹介します。

・・・仏タイヤ大手ミシュランで研究開発を率い、日本法人トップなどを経て、日産自動車の筆頭独立社外取締役を務めるベルナール・デルマス氏は「フランス人はややこしいことを嫌う」と話す。イノベーションを「物事を簡単にし、自由な時間を得るための手段」と考える。
生まれた時間は自分のために使う。それは余暇となり、趣味や文化的な活動を楽しむ時間となる。では、日本はどうか。デルマス氏の目には「仕事の生産性と質を高めることに目的が絞られがち」と映る。勤勉さが尊ばれ、怠け者と思われたくないという意識もある。

人工知能(AI)の急速な普及も、本来は煩雑な仕事から人々を解放し、自分のために使える時間を増やすはずだった。だが現実は、必ずしもそうなっていない。
調査会社マクロミルの「生成AIの活用実態調査」の結果は興味深い。生成AIを導入した現場では、1日平均75分の業務削減効果が生まれている。ところがその時間の使い道を尋ねると、最も多かった回答は「以前は手が回らなかった別の業務・雑務」だった。「創造性や感性を伴う業務」は3割に満たず、「特に何もしていない」は1割程度にとどまる。忙しさは必ずしも軽減されていない実態が浮かび上がる。
「仕事からの切り替え困難に対する心理的支援」の著書である国学院大学の内村慶士助教は「日本人は時間があると仕事で埋めようとする傾向が強い」と指摘する。特に20〜40代は経済的な不安から「自由な時間より働いて収入を増やす」考え方が強いという・・・

余暇や自分のために働くフランス人と、時間があれば仕事で埋める日本人との違いが指摘されています。フランスに見習うべきとは言いません。それが日本人の勤勉性の基礎にあるのでしょう。しかし日本人は、昔から仕事人間だったわけではないようです。貧しい時代でも、農民も農閑期には遊んでいます。戦前の労働者も、真面目人間ばかりではなかったようです。仕事人間は、経済成長期につくられたのでしょう。
私も、余暇を楽しめない一人です。抱えている連載がすべて完結したら、余暇ができるかな。

追記
肝冷斎は、人工知能で浮いた時間はまずは居眠りすることに充てるそうです。