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社会

「何もしないは得か?」

12月27日の朝日新聞オピニオン欄「「何もしない」は得なの?」、太田肇・同志社大学教授の「組織が個人生かす社会に」から。詳しくは原文をお読みください。

・・・皮肉を込めていえば、いまの世の中、何もしない方が得です。無理をして価値を生み出そうとするより、まわりと調和しながら波風をたてない方がいい。これは個人が組織に適応するための冷静な計算に基づく合理的な行動であり、だからこそ厄介なのです。

典型的なのが古い日本企業でしょう。高度成長期は組織も拡大し、社員の関心も外に向かいましたが、低成長時代に入ると、限られた給与の原資や、役職ポストの配分に明け暮れ、社内で牽制(けんせい)しあうようになる。足の引っ張り合いで、内向きになっています。
長く同じ組織で生きていくのに、へたに突出すれば「出る杭は打たれ」てしまう。失敗は許されず、成功しても大きな報酬が得られるわけでもない。だとすれば、熱心に働くふりをしながら上司の意向を忖度するのが「正解」でしょう。
元来、日本企業のトップは真の実力者ばかりではありません。減点主義の組織をうまく渡った人も多く、その組織でしか通用しない「偉さ」の序列を守ろうとします。時代の変化に対応できず、不祥事の隠れみのにもなりやすい。もはや限界に来ているのです・・・

5人に1人が「ひとり死」

NHKニュースウェブには「「絶対に“無縁仏”にしてはいけない」その時、友人たちは…」(2023年12月21日)が載っています。
12月25日の日経新聞「1億人の未来図」に「5人に1人が「ひとり死」後顧の憂い、なくせる社会に」が載っていました。新しい社会の課題です。

・・・未婚率が上昇し、2050年には30万人を超す人が生涯結婚しないまま亡くなる見通しだ。ほぼ5人に1人が「ひとり死」を迎えることになる。後顧の憂いをなくそうと、血縁によらない埋葬や、第三者に遺品処理を委ねるケースが増える。誰しも同じ状況に置かれる可能性はあり、社会が向き合う必要がある・・・
・・・みずほリサーチ&テクノロジーズの試算では、未婚で亡くなる65歳以上の人は50年で約32万人となる。20年に比べ4.1倍に増える。高齢者の総死亡数に占める割合は18.1%と3倍弱の水準となる。
背景には未婚率の上昇がある。国立社会保障・人口問題研究所によると、50歳時点での男女の未婚率は1990年で4〜5%台。20年には男性で28.3%、女性で17.8%に高まった。経済力や子育てへの不安、女性の社会進出、生活の利便性向上など様々な要因から「結婚して当然」の意識が薄れた。
5人に1人が「ひとり死」に至れば、社会や慣習への影響は小さくない。
身寄りなく暮らす人の異変をどう察知するか。孤立は認知症や孤独死のリスクを高める。
同研究所の22年の調査では、一人暮らしの高齢男性の15%は2週間内の会話が1回以下にとどまった。女性の3倍、高齢夫婦世帯の5倍。みずほリサーチ&テクノロジーズの藤森克彦主席研究員は「男性は地域との接触が少ない」とみる・・・

技術革新、集団の同質性と多様性

「日経ビジネス」2023年12月8日の「シリコンバレーはなぜ技術クラスターとして成功したのか」が興味深かったです。詳しくは、原文を読んでいただくとして。

米国のIT技術集積地といえば、西海岸のシリコンバレーが浮かびますが、戦後間もないころは東海岸マサチューセッツ州の128号線沿い地域の方がイノベーションでは注目されていました。なぜシリコンバレーはテクノロジークラスターとして成長したのに、東海岸は衰退したのか。その比較が表になって載っています。

東海岸の特徴は、各企業内部が強い絆で結ばれていることです。また、規模が大きい企業が多く、組織構造はヒエラルキーで官僚的なので、情報の流れは垂直になります。企業内では情報交換がありますが、企業間の情報交換は少ないのです。企業内では忠誠心が重んじられ、企業間の人の移動は少なく、労働市場の流動性は低い。服装も背広・フォーマルといった厳しいドレスコードが保たれています。

これに対し西海岸の特徴は、企業間の壁が薄くて開放的なネットワークであることです。企業内は強い絆で結ばれているが、企業間は弱い絆で結ばれていて、企業の壁を乗り越えて水平な情報交換ができます。シリコンバレーは起業家が新しいベンチャーを立ち上げやすい環境で、スタートアップ企業の生態系(エコシステム)として知られています。老舗企業もありますが、大企業を象徴するヒエラルキーや官僚主義を極端に嫌うカルチャーでもあります。服装はカジュアルで背広は敬遠されます。企業間の情報交換も盛んなことから、企業間の人の移動も激しく、労働市場の流動性は高いのです。

同質性の強みと弱みは、第二次世界大戦での日本軍とアメリカ軍との違いでも指摘されています。「社会学者が斬る「失敗の本質」日本はなぜ戦争に負けたのか」(日経ビジネス12月15日)

スマートフォンの多様な副作用

40肩顛末記」の続きです。
40肩にしろぎっくり腰にしろ、運動不足と同じ姿勢を長時間続けることが原因の一つだと言われています。電車の中で、スマートフォンに熱中している人がいます。猫背になって、目を近づけ、その姿勢を長く保っています。この人たちも、40肩やぎっくり腰の予備軍ですね。

私はスマホを「猫背・近眼製造器」「脳力低下装置」「時間泥棒」「周りが見えない人製造器」「気配り破壊器」と呼んでいますが、「将来のぎっくり腰・40肩製造機」も付け加えましょう。

スマートフォンは、子どもたちにとって有害であることが報告されています。分別ある大人への悪影響とは違い、笑い話ではないので、ここには含めないでおきましょう。

若い女性の地方からの流出

12月14日の日経新聞夕刊に「ジェンダー平等へ動く地方 若い女性の流出に危機感強く」が載っていました。
・・・若い女性の流出をどうすれば止められるのか―。地方がその解決の糸口としてジェンダーギャップ解消に乗り出している。伝統的な価値観が色濃く残り、女性に魅力的な仕事の少ないところもある。ただ現状に甘んじていては男女の人口比は崩れて未婚率が高まり、人口減は加速する。地元企業や地域住民を巻き込んだ試行錯誤が始まった・・・
詳しくは記事を読んでください。

地方から東京への人口移動が止まりません。大きな原因は、大学に進学したり就職したりした若者が戻ってこないことです。特に女性が戻ってこないのです。
10年近く前に地方の方と話していて、消防団員の減少が話題になりました。私が「この時代、男性だけでなく、女性にも声をかけないといけませんよ。どの程度、女性団員がいますか」と聞いたら、あきれられました。「岡本さん、若い女性は戻ってこないので、声をかけようにも地域には一人もいないのです」とのことでした。

男性に比べて女性の若手流失率が多い都道府県の数値が載っています。北陸、北海道、北関東などが、女性の流出が多いようです。
住みやすさ指標で高い順位の県で、なぜ女性の流出が多いか。この問題に詳しい天野馨南子さんに聞いたら、「そこに住むのがいやな人が出ていき、住みたい人が残っているので、住んでいる人を調査すると「住みたい人」が高くなる」という趣旨のことを教えてもらいました。納得。
この件については、また日を改めて議論しましょう。