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社会

田村太郎さん、移民の受け入れ方

1月8日の朝日新聞オピニオン欄「移民の受け入れ方」に、田村太郎・ダイバーシティ研究所代表理事が出ておられます。
・・・日本はもはやアジアで唯一の経済大国ではなく、外国人からみれば自国の何倍もの賃金をもらえる国でもない。門戸を開けば、人がわっと押し寄せると心配されたのは、もう20年以上前の話です。生活支援政策を充実させなければ、だれも日本には来なくなります。
少子高齢化は中国や韓国でも進んでいます。日本人の介護福祉士が国外へ働きに行くかもしれません。すでにフィリピンにはカナダなどの国々が、専門学校を作ってケア人材の確保に動いています。国際的に人材の奪い合いが起きているなか、アジア全体の少子高齢化を見据えた議論を、日本が呼びかけるべきです・・・

・・・異なる人たちと接することに不安を抱くのは当然です。不安を減らすには、出会っていくしかありません。外国人に偏見があった人でも、○○さんと固有名詞でつながると意識が変わる例を、私は数多く見てきました。治安の悪化を懸念する声もありますが、外国人の犯罪検挙者数は減っています。
愛知県の県民意識調査では、はじめ外国人の存在を否定的に見る人が半数以上いたのが、生活支援や住民との交流を進めたところ、肯定的にとらえる人の方が多くなったという結果があります。
これまで外国人住民が増えても大きな問題が起きなかったのは、地域の人たちやNPO、自治体が熱心に共生に取り組んできたからです。こうした素地も生かしながら、「うちの街でチャンスをつかみたい人は、だれでも来てください」と自治体が競い合えば、地方創生にもつながります・・・

スリッパ

スリッパって、日本の発明品だと知っていましたか。私も西洋のものと思っていたのですが、外国のホテルでは置いてなく、日本産だと知りました。12月24日の日経新聞が、その生い立ちを詳しく紹介していました。
江戸末期に開国した日本。西洋人は人前で靴を脱ぐ習慣がなく、畳に靴を履いたまま上がろうとして混乱が起きました。そこで、靴の上から履く履き物を作ったのだそうです。1900年頃から日本人も使い始めますが、日本人は靴の上からでなく、素足に履いたのです。暮らしが洋風になり、板張りの部屋が増えたことも、スリッパが普及した要因でしょうね。

日本発祥のスリッパは、飛行機の機内サービスとして、世界各国の航空会社に取り入れられています。若い頃に国際線に乗ると、機内用に靴下が支給されて、「貧乏くさいなあ」と思っていました。よく考えれば、欧米にはスリッパがなかったからですね。
日本のホテルにはスリッパは行き渡ったようですが、世界のホテルにも普及しますかね。
西洋風に家の中でも靴というお家(東京)を知っていますが、「どこまで靴のママで行くのですか」とトンチンカンな質問をしたことがあります。「ベッドやお風呂の際には、どこで靴を脱ぐのですか」という質問です。もちろん、「そこまで靴」あるいは「靴を脱いで歩く」が答でした。

ホテルのベッドカバーの足の方に、目立つ色の帯の様なものがかかっています。あれも、長い間疑問でした。「なんのためにあるの。邪魔なだけや」と、取り外していました。あるとき、教えてもらいました。ベッドスローといって、靴を履いたままベッドに横になった際に、掛け布団が汚れないように敷いてあるのだそうです。
トイレの履き物も下駄からスリッパになり、病院などでもスリッパです。記事では、学校で履く「上履き」も紹介されています。この上履きは、病院や介護施設でも利用されているようです。

高齢者は75歳以上

日本老年学会は、「高齢者」の定義を、現在の65歳以上から75歳以上に引き上げるべきだという提言をまとめました。「NHKニュース」。
それによると、65歳以上の人を高齢者と位置づけたのは、昭和31年(私が生まれたのが30年です)。国連の報告書が、当時の欧米の平均寿命などをもとに、65歳以上を「高齢」と表現したことを受けたのだそうです。当時、日本人の平均寿命は、男性が64歳、女性が68歳。
たしかに、私の子どもの頃は、60歳と聞くと「お爺さんとおばあさん」でした。黒っぽい服装で、腰を曲げて歩いておられました。前にも書きましたが、漫画「サザエさん」の波平さんは確か54歳です。今なら、どう見ても60歳以上、65歳くらいに見えますよね。

その後、平均寿命は延び続け、男性が81歳、女性が87歳となっています。今、65歳の人に向かって「おじいさん」と言うと、機嫌を悪くされますよね。
この60年間に平均寿命が15歳以上伸びているのに、高齢者の定義(年齢)がそのままというのは、おかしいですね。もちろん、老化は個人差が大きいです。同じ60歳や65歳の人を見て、こんなに差があるのかと驚きます。
この提言では、65歳から74歳までの人たちは、「准高齢者」と位置づけます。これだと、私はまだ准高齢者にも入りません。

課題は、75歳までの人たちに、活躍の場を提供することです。老化の個人差は、一つには健康状態ですが、もう一つに生きがいを持って活動しているかどうかがあると思います。「若さとは心の持ちようだ」と言いますが、活動の場がないとそれも難しいです。
現在は、定年後は「それぞれに活動の場を探せ」ということになっています。しかし、皆が皆、働く場や趣味の場を持てるわけではありません。特に都会のサラリーマンは、手入れをする庭もなく。しかし、定年を引き上げれば、現役諸君に迷惑がかかります。工夫が必要です。

西欧の移民労働者、日本の非正規労働者

古くなりましたが、12月22日の朝日新聞オピニオン欄の論壇時評、小熊英二さん「昭和の社会と訣別を」から。
・・・ポピュリズムの支持者は誰か。遠藤乾はEU離脱支持が多い英国の町を訪ねた。そこでは移民の急増で病院予約がとれず、公営住宅が不足し、学級崩壊も起きている。「英国のアイデンティティ」の危機を感じる人も多い。
だがこの論考で私の目を引いたのは、現地の女性が発したという以下の言葉だった。「彼ら移民は最低賃金の時給七ポンド弱(約九百六十円)で休日も働き残業もいとわない。英国人にはもうこんなことはできないでしょ?」
私はこれを読んで、こう思った。それなら、日本に移民は必要ないだろう。最低賃金以下で休日出勤も残業もいとわない本国人が、大勢いるのだから。
西欧で移民が働いている職場は、飲食や建設などだ。これらは日本では、(外国人や女性を含む)非正規労働者が多い職場である。西欧では移民が担っている低賃金の職を、日本では非正規や中小企業の労働者が担っているのだ・・・

次のような指摘もあります。
・・・それでは、英国でEU離脱を支持した層は、日本ならどの層だろうか。日本の「非正規」が英国の移民にあたるなら、それは「非正規」ではないはずだ。先月も言及したが、大阪市長だった橋下徹の支持者は、むしろ管理職や正社員が多い。低所得の非正規労働者に橋下支持が多いというのは俗説にすぎない。
米大統領選でも、トランプ票は中以上の所得層に多い。つまり低所得層(米国ならマイノリティー、西欧なら移民、日本なら「非正規」が多い部分)は右派ポピュリズムの攻撃対象であって、支持者は少ない。支持者は、低所得層の増大に危機感を抱く中間層に多いのだ。
では、何が中間層を右派ポピュリズムに走らせるのか。それは、旧来の生活様式を維持できなくなる恐怖である。それが「昔ながらの自国のアイデンティティー」を防衛する志向をもたらすのだ。
ファリード・ザカリアは、EU離脱やトランプを支持した有権者の動機は「経済的理由ではなく文化要因」だったと指摘する。移民増加や中絶容認などを嫌い、英国や米国のアイデンティティーの危機を感じたことが動機だというのだ。確かにその背景は、雇用の悪化で生活の変化を強いられたことではある。だがそれは、「古き良き生活」と観念的に結びついた国家アイデンティティーの防衛という文化的な形で表出するのだ・・・

知らぬ間の情報発信

12月15日日経新聞夕刊「あすへの話題」は、城郭考古学者の千田嘉博さんの「知らぬ間の情報発信」でした。
・・・さて幸せなことに、私は各地で講演させていただけるようになった。城の魅力をみなさんと共有したいと願い、できる限り承っている。その際には図や表を用いて複雑な歴史や城の構造を、わかりやすく伝えるように心がけている。
入念に準備し、場合によっては10年以上もかけてたどり着いた研究成果をお話しする訳だが、しばしば私に成り代わって、講演内容をブログで世界に公表して下さる方がいる。しかも会場でご覧に入れたスライドをもれなく撮影して、文字通り全公開して下さったりもする。
ご自身のオリジナルな研究であれば、それをどのように公表しても構わないが、他者の研究を許諾なしに公開するのはいかがなものか・・・

困ったものですね。私も、何度かそれに似た体験をしました。主催者が「録音録画禁止」にしたシンポジウムの発言内容が、インターネットに載ったこともありました。
さらに、先生の話には、次のようなオチまでついています。
・・・先日おこなった講演の感想を、たまたまネットで目にした。千田の説明は、ある芸能人がテレビで話したのと同じと記していた。新たな解釈も意義づけも、もとになる研究があるからなのに、いくらなんでも評価の順序が逆ではないか、と落ち込んだ・・・