カテゴリー別アーカイブ: 復興10年

東北のすごいいちご

NHKウエッブニュースに「東北のすごいいちご」(3月11日掲載)が載っています。
・・・真っ赤に熟れた大粒の甘いいちご。大好きなフルーツの1つです。「東北にすごい、いちご農家がいる」と聞き、現地に向かいました。どんないちごでしょう。
東京 新宿のデパート「伊勢丹」の“デパ地下”。
そのいちごは、和歌山産「まりひめ」や熊本産の「あその小雪」といった高級いちごとともに、フルーツ売り場の中央に構えていた。
形はきれいな逆三角すい。1粒1粒丁寧に包装されている。もっとも高いものは12個入りで税込み8640円・・・

・・・いちご栽培をはじめたきっかけは、東日本大震災だった。当時は33歳。東京でITベンチャーを経営していた。
岩佐さん
「10年前、変わり果てたふるさとの姿を見て、価値観が大きく変わりました。震災前から衰退が始まっていた故郷をもとに戻すだけの復興なら意味は無い。どうせやるなら、日本一、世界一を目指そうと考えた時、地元特産のいちごならできると思ったんです」・・・

取り上げられている社長の岩佐大輝さんは、先日「東北リーダーズ・カンファレンス2021に登壇しました」で司会をしてくれた人です。

被災3県住民の復興評価。岩手、宮城9割、福島5割

3月10日の朝日新聞に、3県住民の復興評価調査結果が載っていました。「(いま伝えたい「千人の声」2012→2021)アンケートから:上 東日本大震災

地元の復興が順調に進んでいるかを4段階で尋ねたところ、「進んでいる」「まあまあ進んでいる」の合計が3県全体では81%だった。県別では、岩手95%、宮城90%に対して、福島は50%にとどまった。
この質問は、2013年から毎年尋ねている。13年は岩手・宮城が20%超で、福島は11%。岩手・宮城と福島との差が年々開く傾向があった。被災前、福島県大熊町に住んでいたいわき市の女性(53)は「人が戻らない町。形を整えるのも大切だが、現実的でない環境。廃炉する場所、町に安心した生活はあるのか」と訴えた。

震災前と比べ、近所同士の交流が活発かどうかを尋ねると、「交流がなくなった」「交流が減った」の合計は、岩手65%、宮城63%、福島79%だった。福島県楢葉町から会津美里町に避難した女性(82)は「楢葉町から離れているので交流の機会はなくなった。婦人会で集まりがあるときは、できるだけ出かけていこうと思っている」と答えた。宮城県亘理町の男性(71)は「津波で空き地になった宅地が多いが、年2回、草刈りやごみ拾いを行っている」とした。

10年後の31年は「震災から20年」となる。その頃の地域の雰囲気や活力について、今と比べて「変わらない」とみる人が3県とも40〜50%台。「とても明るくなる」「やや明るくなる」の合計は、岩手、宮城が26%、福島が30%だった。

「心の復興」について、震災直後の最も悪い状態を1とし、震災直前に完全に戻った状態を10として10段階で尋ねたところ、3県全体の平均は6・4だった。2017年は6・1で、以降はほぼ横ばいだった。県別では、岩手7・0、宮城6・7に対し、福島は5・3で、心の復興でも差が出ている。
10に達しない理由を三つまで聞くと、「近所づきあいがなくなった」が最多の44%で、この質問を始めた17年より9ポイント増えた。「住宅」や「家族との別居」の悩みが減り、個々の生活基盤の改善がうかがえる一方で、「町の活気が戻らない」が大きく増え、近所づきあいがなくなったことと合わせて、地域のつながりの再生が難しい実態が浮かんだ。

震災後10年間で受けた行政からの支援や対策について、3県全体では「満足している」が11%、「どちらかといえば満足している」が53%、「どちらかといえば満足していない」が23%、「満足していない」が13%だった。
ただ、福島の満足度は低い。「満足している」「どちらかといえば満足している」の合計は、岩手81%、宮城60%に対して、福島では48%にとどまった。

国民の評価、復興の進捗7割

3月9日の読売新聞、「東日本大震災10年」に関する全国世論調査から。

・・・被災地の復興が「進んでいる」と思う人は、「非常に」4%と「多少は」66%の計70%に上った。震災から1年後の2012年調査(面接方式)で「進んでいる」は25%だったが、5年後の16年調査(郵送方式)で初めて5割を超え、今回調査で7割に達した。
復興のスピードについては、「想像していたより時間がかかっている」が59%を占めた。地域別では、北海道・東北と関東は6割台、他の地域は5割台と差がみられた・・・

原発被災地住民、復興施策評価5割

3月2日の福島民報に、復興に関する住民の評価調査が載っていました。「復興施策評価52.2% 評価できない39.4% 双葉郡8町村住民

・・・東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の発生から十年となるのを前に、福島民報社が実施した双葉郡八町村の住民に対する聞き取り方式の意識調査と双葉郡以外の県民への電話による調査では、国と県の復興に向けた取り組みへの評価を尋ねた。双葉郡八町村では、評価するとの回答が計52・2%で過半数を占めた。ただ、評価できないとの回答が計39・4%あった。
さらなる復興に向けて求めたい取り組みは「医療・福祉の充実」が42・0%と最多となった。社会基盤整備や除染などが進む一方、住民が安心して生活するための環境整備の強化を求めている実態が明らかになった・・・

・・・理由を自由回答で聞いたところ、「高く評価する」と回答した葛尾村の七十代男性は「除染をやってもらえたことが一番大きい。ただ、一部が除染されていないのは気掛かりだ」とした。「おおむね評価する」と答えた富岡町の六十代女性は「除染や建物の解体、地域の整備、災害公営住宅の完備などが少しずつ進んでいる」と理由を挙げた・・・

半数もの方が、評価してくださっています。もちろん、厳しい意見もありますが。

『総合検証 東日本大震災からの復興』

大震災から10年ということで、出版物も多いです。ひょうご震災記念21世紀研究機構編『総合検証 東日本大震災からの復興』(2021年、岩波書店)が、多方面から復興を検証しています。

五百旗頭真先生の「復興思想の変容」に始まり、次のような分類で、23の論文が並んでいます。
・巨大地震・津波の衝撃
・原子力災害と福島の復興
・地域のくらしと住宅の復興
・産業・雇用と教育の復興
・復興を支える仕組み
・記憶の伝承と教訓
最後は、飯尾潤先生の「東日本大震災の復興から得られた46の政策提言」と、御厨貴先生の「災後の時代とは何か」で締めくくられています。(インターネットで、目次を見ることができないのが残念です。)

このような多面的な角度から検証ができるのも、それだけさまざまな面から復興に取り組んだから、新しい政策に取り組んだからだと思います。