17日の日経新聞「けいざい解説」で、大林尚編集委員が「天下り改革、二兎を追え」を書いておられました。中央省庁に勤める課長職以上の800人弱が国家公務員人材バンクに登録されていること、それによる第二の職場への紹介実績が6年間で1人だけであることを紹介しておられます。2005年4月時点で、3,400の公益法人に在職する元国家公務員は2万人を超えるそうです。2004年8月から1年間に退職し再就職した課長職以上の者1,200人のうち、4割弱が公益法人に再就職しています。早期退職慣行が生み出す問題です
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行政-官僚論
官僚の専門技能
5日の朝日新聞「私の視点」は、山本清教授の「公務員制度、政治と離れ専門性向上を」でした。日本において、「政治家が政策決定をし、官僚が執行する」原則が守られず、政治(内閣・与党)と官僚が一体化した行政運営であること。そして、官僚の政治的交渉技能は高度化したのに、政策決定の基礎となる政策分析能力などの育成はなおざりになっていると、指摘しておられます。
そうなんです。日本の官僚は、政策課題の分析と対処方針の決定などについて、ある分野の政策の専門家になっていないのです。今、どれだけの官僚が、自分の技能を売ることができるでしょうか。現実は、ジェネラリストという美名ものと、1~2年で移動を繰り返し、専門性のない管理職になっています。それが証拠に、自らの経験と技能を元に転職する官僚って、ほとんどいません。スカウトされたという話も、あまり聞きません。国家公務員人材バンクがありますが、実績が出ていないようです。
もちろん、その多くが法学部出身であることも、その背景にあります。管理職のプロという人もいますが、それだけでは、売り物になりません。また、管理職といっても、部下の給料やボーナスを査定できない管理職って、管理職とは言えません。今の官僚が磨いているのは、上手な交渉能力かもしれません。
新しい仕事4
経済財政諮問会議が動き出した上に、再チャレンジ室長の仕事もいただいたので、えらく忙しくなりました。記者さんの取材も増えたのですが、まだ十分な説明をできません。なにせ、週末に担当室の改装をしてもらい、机とパソコンが入ったのが、16日の月曜日です。今、職員と、課題と対策の分類・優先順位付け・問題点の洗い出しをしているところです。
こられる記者さんには、この事情を説明すると同時に、「良い知恵を貸してください」とお願いし、「お宅の会社は、フリーターを途中採用していますか」と質問をしています。論点が整理できたら、このHPをご覧の方にも、うまくいっている事例や、解決策のお知恵を借りたいと思います。ただし、焦点を絞らないと、漠然と聞いても効果がないと思います。再チャレンジといっても、フリーター対策と団塊世代の第二の人生活用とは、緊急度や対処方法は別ですよね。これらを整理できるまで、もう少しお待ちください。
国家公務員の配置転換2
12日の日経新聞は「公務員配転、実行段階に。縦割りの壁なお厚く」を伝えていました。「相対的に役割の低下した職員を需要の高まる職場に移す配置転換は、民間では当たり前の取り組み。しかし、縦割り意識の強い官庁の壁を越えた官のリストラはとんとん拍子にはすすまないようだ・・・配転になっても国家公務員の身分が失われるわけではない。だが、省庁ごとの採用・人事管理が根付いている公務員の世界では「配置転換は転職」との意識が強い」
国家公務員の配置転換
政府は27日、国家公務員の人件費抑制の全体計画と、政府系金融機関改革の制度設計を決めました。このうち国家公務員削減は、5年で約1万9千人、5.7%を純減します。これまでは削減といっても片道(一方で増員あり)だったので、純減としてはその規模も大きく、また一律でなく部門別重点削減ということも、これまでにないことです。
しかし、もっとも大きな方向転換は、配置転換です。これまでは退職不補充の範囲で削減をしていたので、職員の配置転換がありませんでした。簡単に言うと、省庁を越えた大幅な職員移動はありませんでした。それが今回初めて実現するのです。
民間の方や地方公務員にとっては、配置転換など当たり前のことです。「今まで何をしていたの」と不思議に思うでしょう。しかし、いつも私が主張するように、日本国には各省公務員はいても、国家公務員はいないのです。国家公務員は、各省に採用され、政府には採用されていないのです。霞ヶ関には人事課長が13人います。実質的には100人くらいいると私は見ています。それごとに、人事は管理されています。
こんなことが今まで続いてこれたのは、右肩上がりだったからでしょう。これまでに大規模な配置転換は、国鉄分割民営化の時に行いました。国鉄職員を各省で受け入れたのです。もっとも、これは省庁間は移転ではありません。
さらに問題は、この多くの職員が地方出先機関の職員であるということです。生活の場が地方にあり、県を越えた転勤を想定していない職員が大半だと思います。もちろん、これまでと違った業務を覚えなければならないという課題もあります。これからも、解決しなければならない問題はたくさんあります。