カテゴリーアーカイブ:社会の見方

ラジオ放送100年

2024年9月14日   岡本全勝

8月11日の日経新聞別刷りNIKKEI The STYLE「文化時評」に「ラジオ放送100年 試練を受けた先端メディアの盛衰」が載っていました。

・・・来年は、日本でラジオ放送が始まってから1世紀の節目である。「まだ?」と思われるか、「そんなものか」と感じるか。人により、受け止めは、さまざまだろう。少し早いが、これを機に、新しいメディアの誕生や、その役割の変化について考えを巡らせてみたい・・・

1925年3月22日に、日本放送協会の前身である東京放送局が初めてのラジオ放送を開始したのだそうです。世界初のアメリカに遅れること4年です。
1933年に政権を握ったドイツのヒットラーがラジオを活用し、対するアメリカのルーズベルト大統領も「炉辺談話」で有名です。

でも、まだ100年なのですね。私は1955年生まれで来年で70歳。ラジオは30歳しか年上ではありません。私の父は1921年、母は1926年生まれですから、同世代なのですね。
日本でのテレビ放送開始は1953年。私と同世代でした。インターネットが普及したのは2000年以降です。私の子ども(より下)の世代です。

記事では、この間のラジオの盛衰と、社会での役割変化を考察しています。お読みください。

経済停滞30年の原因私見3

2024年9月13日   岡本全勝

経済停滞30年の原因私見2」の続きです。
この間に、政府は需要拡大のため、毎年のように巨額の財政出動をしました。しかし、日本の経営者が戦っているのは、従来型の公共事業などではなく、新しい産業です。各国が、新しい産業育成のために、なりふり構わず補助金を出したり、規制改革をしたのに対し、日本は出遅れたようです。

もう一つ問題だと思うことを挙げておきます。それは、公務員の削減と給与の据え置き、最低賃金を引き上げなかったことです。
この30年間にわたって公務員数を削減し、給与を引き上げませんでした。小さな政府を目指す方向は正しいのですが、これが長期間続くと日本社会と経済に悪影響を及ぼしました。
景気回復を目指しつつ、給与を引き上げないのです。給与が上がらないと、消費は伸びません。デフレ政策を続けたのです。国家公務員と地方公務員の総数は300万人あまりですが、その家族だけでなく、公務員給与を指標に使っている企業や民間組織もあります。その影響は大きいのです。
これにあわせ、正規職員を非正規職員に置き換えることも進めました。日本の雇用全体では、非正規労働者は全体の4割近くになっていますが、役所にあっても同様の傾向にあります。非正規職員は正規職員より給与は低く処遇も悪く、そして身分が不安定です。政府が先頭に立って、労働者の給与を引き下げ、生活を不安にしたのです。
このように、公務員とその家族、さらには国民の生活を不安にしておいて、景気拡大を唱えても、効果はなかったのでしょう。私も、行政改革の旗を振った一人として、反省しています。

また、最低賃金を引き上げなかったことも問題です。インフレ率を2%にする目標も立て、日本銀行を使って、「異次元」という金融緩和を行いました。なのに、同時に労働者の賃金を下げていたのです。これでは、消費は増えません。必要なのは供給拡大施策とともに、需要拡大施策だったのです。

給与上がらず、看護師不足

2024年9月13日   岡本全勝

8月26日の朝日新聞に「給与上がらず、看護師不足が深刻 歴30年でも手取り32万円」が載っていました。

・・・東海地方の病院に勤める看護師の女性(58)は週に一度、眠れない夜を過ごす。17時間を超える夜勤に入るためだ。
夜勤は午後4時15分~翌日午前9時30分。その間に1時間の休憩が2回ある。休憩室にはソファがあるが、横にはならない。「寝てしまうのが怖いんです」
深夜は看護師2人だけで患者24人をみる。そのため、自分が休憩中でも、複数のナースコールが鳴れば病室に走らないといけない。
1時間おきに病室を見てまわり、たんが詰まりそうな患者がいればこまめにチェックする。「もし何かあったら……」。朝になって命をあずかる緊張感から解放されると、心も体もへろへろだ。夜勤明けと翌日の休みで疲れをとる。
夜勤のほかに三つの勤務時間があり、シフトは毎週違う。4週間で8日の休みはあっても、生活は不規則になる・・・

・・・日本医療労働組合連合会が今春、全国の125施設を対象に実施した調査によると、4月の募集人員に対して「充足していない」と答えた施設は67%にのぼる。
さらに「充足していない」と回答した施設に影響を尋ねると、51%が「患者サービスの低下」を選んだ。仕方なくおむつ交換や入浴回数を減らす病院もあるという。
今後は高齢化で看護の需要は高まる一方、少子化により働き手は減る。人材確保のためにも、処遇改善が必要になる。

看護師不足の要因のひとつとして指摘されるのが、キャリアを重ねても上がりにくい給与だ。離職を招く一因となっている。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、20~24歳の看護師の平均給与は29万6千円。55~59歳は39万5千円で、上げ幅は約10万円、3割ほどにとどまる。一方、全産業の大卒者の平均では26万円から52万2千円と、2倍になる。30~34歳で看護師を上回る。
看護師の賃金が上がりにくい原因として、管理職のポストが少なく昇給の機会が乏しいことや、歴史的な男女の賃金格差が残っていることなどが指摘される。看護師の9割は女性だ・・・

経済停滞30年の原因私見2

2024年9月11日   岡本全勝

経済停滞30年の原因私見1」の続きです。
金利を下げて、企業の投資を促しましたが、雇用、設備、債務の3つの過剰を処理した後も、企業はそれに反応しませんでした。それは、企業経営者が挑戦を避けたからです。
「選択と集中」「リストラ」という言葉が流行り、企業はもっぱら縮み思考に入りました。国内で販売と営業をしている限りでは、それでも規模は維持できました。
大企業もリスクを避け、守りの経営になったのではないでしょうか。戦後の成長期とは異なり、名門大学出身のスマートな社員が、社内で出世します。「優秀な若者は有名大学に行き、大企業に就職することがよい職業人生だ」という通念が社会に広がりました。
挑戦しようとする社員がいても、安全を重視する幹部が「もう少し慎重に検討しよう」と言って、先送りします。これは役所では定番の風習ですが、大企業にもあるようです。先送りは、結局はしないことです。

ところが、挑戦を先送りしているうちに、アジア各国は追い上げてきて、さらには追い抜いてしまいました。新しい産業への転換が遅れ、世界での競争にも負けた、ということでしょう。
この状態で金利を下げても、消費も投資も拡大しません。日銀に経済成長、産業転換を求めても、無理でしょう。政府と産業界がするべきことは、ほかにあったのではないでしょうか。

「安全志向」「先送りの思考」「縮みの思考」「諦めの思考」が、長きにわたり、企業、役所を含め日本社会を覆いました。これを脱却することが、長期不況からの脱出の鍵だと思います。経済学の分析手法である需要と供給ではなく、企業経営者、政治家と官僚、そして国民の意識が日本の発展を阻害しているのです。
30年間経済成長がなかった日本に対し、ドイツは2倍に、アメリカは3倍になりました。「1991年から30年間の経済成長外国比較」。ちなみに1.02の30乗は1.8、1.03の30乗は2.4です。
経済停滞30年の原因私見3」に続く。「日本企業と韓国企業の勢いの違い」「「仕方ない」が生む日本の低迷

薄給の保育士

2024年9月9日   岡本全勝

8月25日の朝日新聞東京版「薄給の保育士 国の基準で、できっこない」、認可保育園を運営する元帝京大教授(保育学)の村山祐一さんの発言から。

――保育士の処遇改善がなかなか進みません。

国が「保育に必要な額」として算出した公定価格が、認可保育園の運営費です。人件費もここに含まれますが、あくまでも国の配置基準の人数分。ただ、「配置基準では足りない」というのが保育界の常識です。
例えば、3歳児15人を1人で8時間保育できますか。食事や昼寝などいろんな時間がある中で、子どもたちの様子をつぶさに見ながら対応し、記録をつけ、保護者と連携して子どもの育ちを支える。国の配置基準では、できっこないです。
実際、多くの現場では配置基準の1・6~2倍ほどの職員を置いています。配置基準に応じて支給される運営費を、倍近い人数に分配しているのです。

国が想定している保育士の給与額は、国家公務員給与法を参考にしていますが、国家公務員は勤務年数に応じて格付けが上がり、昇給するのに対し、保育士は経験が反映されません。
公費である委託費を全国一律に計算するため、1年目の人も10年目の人も同額で計算される。想定する給与額に経験年数による加配がないため、初任給を高くすれば経験者の給料が低く抑えられる状況です。

――なぜ抜本的な改善にならないのですか。

保育士の仕事が軽視されているとしか考えられません。子どものことを本気で考えていない。どれだけ人手がかかり、子どもの思いを受け止めるのはどれだけ大変なのか。専門性が認められていません。
背景には、政治家の中に「子育ては家庭で」という価値観が根深くあると思わざるを得ません。現場の状況と、国が示す職員の配置基準や公定価格が、とにかく合っていないのです。

――今後、どのようなことが懸念されますか。

なり手は既に減っています。一部の養成校では「定員に満たない」とも聞きます。
心配なのは、子どもの育ちが保障されなくなること。待機児童問題が、これまでと別の形で出てくると思います。預けたい子どもはいても、職員がおらず、園の定員を縮小せざるを得ない。だから預けられない、という問題です。十分な保育士を確保できるだけの給与と配置基準にしないといけません。