カテゴリーアーカイブ:社会の見方

SNS、共感と分断

2020年8月5日   岡本全勝

7月31日の日経新聞経済教室「SNSと現代社会」、前嶋和弘・上智大学教授の「共感と分断を同時に加速」から。
・・・SNS(交流サイト)が米国政治を大きく変貌させている。ツイッター、フェイスブックなどの各種プラットフォームが普及し出してから10年強にすぎないと考えると、変化の大きさには改めて驚く。これは、ちょうど米国政治の中で保守とリベラルが大きく分かれていく「政治的分極化(両極化)」が進展した時代とも重なっている。
トランプ大統領はSNSを巧みに操り、党派性を徹底的にあおりながら自分の主張を展開し、支持固めに直結させている。同氏のツイッターのアカウントは2020年7月下旬現在、8371万人超のフォロワー(登録者)を持つ・・・
・・・ただ、内容は極めて特異だ。「敵と味方」をしゅん別し、敵を徹底的に否定し、味方をほめちぎるのが基本姿勢だ。この姿勢は16年の大統領選挙のころから全く変わっていない。そう考えると、トランプ政権はSNSが生み、育てている初めての政権と言ってもいいのかもしれない・・・

・・・ここで、SNSというメディアの特徴について立ち戻ってみたい。論点は3つある。
まず第1に、SNSは基本的に共感を呼ぶメディアである。米国で一気に拡散した人種差別反対運動については、残忍な白人警官のやり方に対して、写真や映像とともに憤りの言葉がSNS上に拡散し、参加の渦が広がっていった。運動のピークとみられる6月半ばに2600万人もの人々が参加する、過去最大といわれる社会運動に広がっていく(数字はカイザー家族財団の推計、6月8日から14日調査)。

第2の性質は、自分と違う立場の意見とは没交渉になる点だ。SNSや検索サイトでは、アルゴリズムで利用者の関心が高いとみられる情報が優先表示される。見えないフィルターがかかり、まるで泡の中にいるように自分と反対の立場や不都合な情報が見えなくなってしまう。共感できるものと共感できないものが分かれ、見えない壁ができる「フィルターバブル」現象が目立っていく。そのため、SNSは社会の分断をさらに加速化させている、という見方も少なくない・・・

3番目は、技術的な脆弱性である。7月15日には、11月の次期大統領選で民主党の指名獲得を確実にしたバイデン前副大統領や、オバマ前大統領などの複数のツイッターアカウントが何者かに一時的に乗っ取られた。被害はなかったというが、トランプ大統領のアカウントも当然、狙われていたと推測される・・・

人をつなぐ施設が分断する

2020年8月5日   岡本全勝

先日、新宿駅に行ってきました。東西自由通路ができたのを確認するためです。
これまで構内の通路だったのが、改札が取り払われ、自由に通ることができるようになりました。これは便利です。
かつては、西口から東口に行くには、地下鉄丸ノ内線の上の地下通路を通る必要があったのです。そのためには、1階下へ降りる必要があります。ところが、近くにエスカレーターやエレベーターがないのです。
この不便さは、依然として解消されていません。地下鉄とJRのそれぞれの駅の中にはありますが。「新宿駅にはエレベーターとエスカレーターがない

多くの駅で、東西自由通路がなく、あっても不便なことがあります。福島駅もそうです。身体の不自由な人、大きな荷物を持った人、ベビーカーを押している人には、冷たい施設です。鉄道は、遠くとはつながるのですが、足下では分断を生みます。
それは、新幹線や高速道路も同じです。遠くには早く行けるのですが、近くに行く普通列車は少なく、高速道路は降り口まで降りることはできません。
なかなか難しいです。

近年進んだ欧州の女性役員比率

2020年8月4日   岡本全勝

7月29日の日経新聞経済教室「女性活躍どこまで進んだ」は、谷口真美・早稲田大学教授の「企業は「なぜ必要か」自問を」でした。
そこに、ヨーロッパ各国の企業の女性役員比率が、2006年、2014年、2019年と比較されています。2019年では各国とも45%~30%ですが、2006年ではノルウェー35%、スウェーデン24%のほかは、4%から12%です。この20年ほどの間に、急速に上昇したのですね。イタリアは、3.6%から36.1%へです。

そして、割当制(クオータ)でなくても、企業統治方針などの自主規制でも効果があるのだそうです。
ちなみに日本は、2006年では1.2%、2019年では5.2%です。記事を読んでください。

李登輝元総統

2020年8月3日   岡本全勝

台湾の李登輝元総統が7月30日に、亡くなりました。
中国文化に詳しい肝冷斎は、30日の記事(終わりの方)を李登煇さんに捧げ、「小さな島国とはいえ、ゴルバチョフと周恩来と池田勇人を一人でやったような人ではないかと思います」と評価しています。

日本統治下や、大陸から来た国民党の支配下では耐えて頭角を現し、総統となっても弱い権力基盤や支持から、徐々に権力を固めました。
大陸中国という大きな敵から牽制されながら、民主化と自由化、選挙による総統選出、平和的政権交代、そして経済成長を成し遂げました。暴動や内乱なしにです。それが起きたら、中国から介入されたでしょう。
世界の歴史に名を残す政治家の一人だと思います。
ご本人の著作も多いですが、いずれ日本でも、評伝が出版されるでしょう。

コロナ経済危機、雇用調整助成金と失業保険

2020年7月30日   岡本全勝

7月22日の日経新聞経済教室、八代尚宏・昭和女子大学副学長の「休業手当より失業給付重視を あるべき雇用政策」から。

・・・今回のコロナ危機では、2008年のリーマン・ショック時と比べ、失業者の増加が著しく抑制されていることが特徴だ。政府の自粛要請に基づくサービス業主体の中小企業の休業増加に対応して、従業員への休業手当を補助し、解雇を防ぐ雇用調整助成金が大幅に拡充された要因が大きい。
具体的には対象事業主の拡大や受給要件の緩和と、中小企業への休業手当の助成率を100%近くまで引き上げたことなどだ。この結果、コロナ不況の影響が最初に表れた20年4月の失業率は前年同月比0.2ポイントの上昇にとどまった。
代わりに休業者数が前年比420万人も増えるという異常な状況が生じた(図参照)。仮に19年平均を上回る休業者の増加数がすべて失業者になっていれば、失業率(図の修正失業率)は9%台に達していた・・・

・・・もっとも、これは雇用調整助成金内での整合性にすぎず、肝心の職を失った労働者が直接申請する失業給付との間には大きな不均衡がある。現行の失業給付は、低賃金労働者を除けば、ほぼ賃金の5割で日額8330円(月額18万円)が上限と、休業者への直接給付の半分程度だ。
つまり類似の生活保障給付なのに、政府の自粛要請で休業中の従業員と、企業の倒産・廃業で失業した従業員との間には、2倍もの格差がある。もともと雇用調整助成金による休業手当と失業給付の上限額は同じだったが、失業率に影響しない休業者の増加を優先するという政治判断によって新たな不均衡が生じた。
また企業に代わり、その従業員が政府に休業手当を申請できることは、事業主にとって、休業手当を支払わなくてもよいというモラルハザード(倫理の欠如)を誘発する・・・

・・・今回、雇用調整助成金の対象範囲を拡大し、本来の雇用保険の被保険者でない短時間労働者の休業も対象にしたことは注目される。これは現行の雇用保険の枠組みを用いて、より多くの非正規労働者を救済し、その費用は国庫から補填するという現実的な工夫だ。
もっとも、外的な経済ショックに現行の雇用保険だけで対応するには限界がある。コロナ危機で所得水準が前年より大きく落ち込んだ個人を対象とした当初の30万円の給付金は、補完的な所得補償を目的としたものだった。だが全国民を対象とした一律10万円の定額給付金に置き換えられたため、膨大な財政コストと不毛な行政事務を招いた。
こうした財政の浪費を繰り返さないためにも、欧州の動向に倣い、フリーランスや学生アルバイトなどにも幅広く失業給付の対象を拡大することで、より普遍的な雇用維持策の機能拡大を図る必要がある。
コロナ危機は継続する可能性が高い。一方で、企業に依存しない働き方の多様化も広がっている。今後は「企業が雇用を守り、その企業を政府が守る」という労働者保護と企業保護が混在した雇用調整助成金の政策目的を、本来の労働者保護に徹底させるべきだ・・・

詳しくは原文をお読みください。