カテゴリーアーカイブ:社会の見方

戦後の戦争研究

2020年8月31日   岡本全勝

8月22日の読売新聞解説欄、吉田裕・元一橋大学教授へのインタビュー「不条理伝える静かな怒り」の続きです。「太平洋戦争の戦没者

・・・戦後の日本社会は軍と戦争を強く忌避します。歴史学界の場合、戦争体験を持つ若い世代は軍事史研究に携わることは戦争に再び加担することになると敬遠した。こうした風潮は戦争の現実から目をそらす傾向も生みました。
東京裁判も影響したのではないか・・・
・・・死刑になった指導者は、広田弘毅元首相を除くと皆、陸軍軍人でした。
東京裁判は米国主導です。ただ天皇の戦争責任は問わず、責任は主に陸軍に負わせることで日米が水面下で協力した側面もありました。
51年調印のサンフランシスコ講和条約は「東京裁判判決を受諾」と言及しただけで、日本の戦争責任を曖昧にしました。東西冷戦の深刻化と前年に勃発した朝鮮戦争を受けて、米国が日本をアジアの同盟国として重視した結果です。

日本が戦争責任を突きつけられるのは80年代、歴史教科書問題や中曽根康弘首相の靖国神社公式参拝を巡って中韓両国が猛反発したことが発端です。
政府は90年代、村山首相談話などで侵略の歴史を巡る反省と謝罪を表明しました。安倍政権も村山談話を継承するとしている。
しかし、「反省と謝罪」が国内で広く合意を得ているとは思えません・・・

バチが当たる、その2

2020年8月29日   岡本全勝

先日書いた「バチが当たる」。読者から、お便りをいただいたので、紹介します。ご意見の通りですね。
「今どきの子どもは・・・」と嘆く前に、私たち先輩が子どもたちに教えていないのです。文面は、少し改変してあります。

・・・近所の図書館の軒先に、毎年ツバメがたくさん巣を作り子育てをします。
夏休みのある日、子供たちが集まってなにやらワイワイ。一人の子供が長い棒を持ってきてどうやらツバメの巣に悪戯しようとしています。
っとその時、そばにいた別の子が「そんなんしたら、バチが当たるって、おじいちゃんが言うとったぞ!」と言って、悪戯はせずに別の場所に遊びに行ったようです。

そうだ。「バチが当たる」っていうのは、我々おじいちゃん世代が子供に言い聞かせ、賢い子供はそれを理解し、他の子供に伝えるという好循環が生まれる。
大げさに言えば、良い伝統が語り継がれるってことかな。我々おじいちゃん世代はもっと子供たちに「バチが当たるぞ!」と言い聞かせなければと思いました。・・・

太平洋戦争の戦没者

2020年8月28日   岡本全勝

8月22日の読売新聞解説欄、吉田裕・元一橋大学教授へのインタビュー「不条理伝える静かな怒り」から。

・・・アジア太平洋戦争の日本の戦没者は政府の推計で、軍人軍属約230万人、民間人約80万人です。
戦没者を網羅した公文書も死因を巡る公式統計もありません。1945年夏の敗戦時、軍も官も大量の公文書を焼却しました。
戦場の実相が本格的に解明されるのは90年代以降。歴史家らが戦記や部隊史、将兵の回想などを渉猟し、研究を重ねた成果です。

その特徴の第一は餓死の異様な多さです。
私の恩師藤原彰先生は亡くなる2年前、2001年刊行の「餓死した英霊たち」で、軍人軍属の戦没者の61%、約140万人が餓死、あるいは栄養失調に起因する病死、つまり広義の餓死と説きました。歴史家の秦郁彦氏は藤原説を過大としつつ、餓死率を37%と推定。「それにしても、内外の戦史に類を見ない異常な高率」と論じています。

第二は戦没の9割が日本の敗戦が決定的になる1944年以降に集中していること。その夏のマリアナ沖海戦で海軍機動部隊が壊滅し、サイパン島の守備隊が全滅。日本は制海権・制空権を失い、米軍は日本本土のほぼ全域を空爆の射程に捉えます。以後の日本の戦いは絶望的抗戦でした。
第三は海没死の多さ。艦船の沈没で約36万人の軍人軍属が溺死しました。日露戦争の日本軍の戦死者(約9万人)の4倍です。
第四は自殺と「処置」の多さ。過酷な行軍や激戦の末、あるいは飢餓と疫病の流行する退却の末に、自殺と処置が頻発した。処置とは自力で動けなくなった傷病兵を衛生兵らが殺すことです。「生きて虜囚の辱めを受けず」と諭す「戦陣訓」の帰結といえます。
戦場の現実は凄惨の極みでした・・・
この項続く

インターネットでの不適切広告削除

2020年8月27日   岡本全勝

NHKウエッブニュースが「ヤフー 掲載認めない広告件数 初公表 昨年度は2億件超」(8月24日掲載)を伝えていました。「ヤフーの公表

・・・IT大手のヤフーは広告の表現や画像が不適切だとしてサイトへの掲載を認めなかった数を初めて公表し、昨年度1年間で2億3000万件余りに上ったことを明らかにしました。
ヤフーは運営するさまざまなサイトで広告を掲載していますが、内容が不適切な場合は掲載を認めず、24時間態勢で審査しています。

社内の基準に沿って掲載を認めなかった表現や画像などの数をこのほど初めて公表し、昨年度1年間で2億3000万件余りに上りました。
このうち、肌の露出が多い画像など利用者に不快感を与えるとされた事例が17%を占め、次いで明確な根拠がないまま「世界初」や「No.1」などとうたい、誇大表示とされた事例が14%となっています。
また、医療機関の広告で、所在地が海外だったり連絡先などがなかったりした事例も5%ありました・・・

大変な労力がかかっているでしょう。でも、これも、インターネットサービス提供事業者の責務でしょうね。

変貌する国際秩序

2020年8月25日   岡本全勝

8月16日の読売新聞言論欄、大塚隆一・編集委員の「国際秩序 行方を握る経済」が勉強になります。小さな本が必要なくらいな内容を、1ページにまとめてあります。政治学、特に国際政治を学んだ人にはわかる内容ですが、そうでない人には、よい入門になったと思います。
・・・第2次大戦の終結から75年。この間の世界は、総じて言えば、米国が主導する平和と繁栄の時代だった。日本もその恩恵を享受してきた。だが、異質の大国・中国の台頭や新たな課題の出現で国際秩序は揺らいでいる。今後はどうなるのか。戦後100年までを見すえて考えてみた・・・

・・・まず図をご覧になってほしい。
戦後75年間の秩序の変遷を時代と分野ごとに切り分けたものだ。
参考にしたのは、国際政治学者の高坂正堯氏(1934~96年)が唱えた「三つの体系」という考え方である。今も古さを感じさせない1966年の著書「国際政治」(中公新書)からポイントになる部分を引用してみる。
「各国家は力の体系であり、利益の体系であり、そして価値の体系である。したがって、国家間の関係はこの三つのレベルの関係がからみあった複雑な関係である」
私なりに要約すれば、「力の体系」は「軍事」、「利益の体系」は「経済」、「価値の体系」は「正義」に対応する。ここで言う「正義」は、国民が共有する理念や価値観、善悪の考え方を指す。
そして国家は、安全を守る「軍事」、生活を支える「経済」、社会のあるべき姿を示す「正義」で成り立つ。国家間の競争では「軍事」「経済」「正義」という「三つの力」が複雑に絡み合う。
こうした視点で世界の動きや大国の攻防を見直すと、どんな構図が浮かび上がってくるだろうか・・・

・・・戦後秩序の歩みを図にすると、改めて気づくことが二つある。
第一に、現代の世界の様々な仕組みやルール、理念や原則は、その多くが1945年に生まれた。つまり、私たちは今も「45年体制」の下で生きている。
第二に、「45年体制」のほとんどは米国の主導で作られた。他を圧倒する国力があったからだ・・・

・・・21世紀に入ると様相が変わる。
重要なのは三つの動きだ。
第一に、米国が次第に指導力を発揮しなくなった。「45年体制」の生みの親で、「軍事」「経済」「正義」すべての秩序の担い手でもあったのに内向きになった。さらに自国第一の姿勢を強めた。
第二に、台頭する中国が挑戦的になった。自由や人権、法の支配などの「正義」の秩序に公然と歯向かうケースが増えた。象徴的なのは南シナ海や香港の状況だ。
「経済」では「一帯一路」構想などで影響力を拡大させ、米国のドル覇権も崩そうとしている。
一方、安保理における特権や自由貿易の原則など、都合がよい秩序は守ろうとしている。
第三として、新しい秩序づくりが必要なグローバルな問題が出てきた。最大の焦点は、米中の覇権争いの主戦場にもなりつつあるデジタル革命への対応だろう。
国際秩序との関連で重要なのはデジタル革命が「三つの力」すべてに深く関わっている点だ・・・

原文をお読みください。