カテゴリーアーカイブ:社会の見方

ローマ帝国末期、コンスタンチノープルの建設

2020年9月30日   岡本全勝

田中創著『ローマ史再考 なぜ首都コンスタンチノープルは生まれたのか』(2010年、NHKブックス)を(だいぶ前に)読みました。
本の帯にあるように、古典古代でも、ビザンツでもないローマ世界です。副題にあるように、コンスタンチノープルの誕生からローマ帝国の首都になる過程を描いています。元祖首都であるローマに、取って代わるのです。どのようにして、それが実現するのか。

古代ローマ史といえば、私などはやはり、首都ローマで考えてしまいます。この本は、西ローマ帝国でなく、東と西に分裂する過程、そして東が優位に立つ過程です。
ビザンツ帝国になる前の歴史で、なるほどそうだったんだと、納得しました。
コンスタンチノープルを中心に、そしてそこを首都に仕立て上げた皇帝たちが中心に描かれます。皇帝も絶対君主でなく、推戴されないといけません。その際には、有力者たちの争いに巻き込まれます。皇帝一族に産まれると、幸せになれる場合と、とんでもない運命になる場合があります。

ジョエル・シュミット著『ローマ帝国の衰退』 (2020年、文庫クセジュ)が、書評欄で、訳者の解説が面白いと書いてあったので、読みました。その通り表題に偽りありで、物足りなかったのです。

中央政治の歴史です。人民(と呼べばよいでしょうか)や経済、社会は出てきません。もちろん1000年以上も前のことですから、資料が残っていないという制約もあるのでしょう。歴史学が、政治史から社会史や文化史に範囲を広げているので、そのような分野も期待したいです。

真実を見たくない国民の自意識

2020年9月24日   岡本全勝

9月15日の朝日新聞オピニオン欄、宮台真司・都立大教授の「国民の自意識、痛みを粉飾」が、現在の日本の状況を鋭く分析していました。

「見たいものだけを見る」ということです。
経済について言えば、アベノミクスによって、株価上昇と低水準の失業率が語られます。ところが、先進国の中で日本だけが1997年から実質賃金が低下を続け、1人あたり国内総生産は2018年に韓国とイタリアに抜かれました。
社会指標も、若年層の自尊心や家族への信頼度も極めて低く、子どもの幸福度は先進国で最低水準です。

宮台さんの見立ててでは、国民の自意識が鍵だと言うことです。
本当は経済的に苦しいのに、自意識のレベルではそうではないことにする。「見たいものだけを見る」のです。格差や分断による痛みは、他人と共有して初めて政治的な討議の課題になるのですが、その手前で自意識の問題に「回収」されてしまいます。
「若年層の政治的関心が低いのも、自分が置かれた状況の真実に向き合うのがつらいからです」と指摘されます。

納得です。それを政治課題にしない、政治、マスメディア、有識者の責任でしょう。

ゴミ袋有料化の効果

2020年9月21日   岡本全勝

9月13日の朝日新聞オピニオン欄「レジ袋有料化から考える」によると。

・・・適切に処理されなかったプラスチックごみは、世界で年800万トンが海に流れ込んでいると推計されています。プラスチックは自然の中で分解されにくく、海の生き物が誤ってのみこむ、体に絡まるなど、生態系に悪影響を及ぼします。50年には海のプラスチックごみが魚の重量を上回るという試算もあります。
こうした課題について、多くの人に関心を持ってもらうため、白羽の矢が立ったのが、ほかの容器包装に比べて、マイバッグで代替がしやすいレジ袋でした。
国内のプラスチックごみに占めるレジ袋の割合は数%に過ぎません。しかし、そのほかのプラスチック製品も無駄に使い捨てていないか、見直すきっかけにしてもらうのが狙いです・・・

・・・レジ袋有料化は、西友やイオンといった大手スーパーでは2012年ごろから本格的に導入してきました。
一方のコンビニは「ふらっと立ち寄ってもらうのに、マイバッグはそぐわない」といった理由で無料配布を続けてきましたが、大手3社を含む多くのチェーンは、国によって義務化された7月1日から、有料に切り替えました。値段はセブン―イレブンは税抜き3~5円、ファミリーマートとローソンは税込み3円です。

その結果、辞退する客の割合は一気に増えました。有料化前のコンビニ業界は30%に満たない状態でしたが、有料化後はセブンで75%、ファミマで77%、ローソンで75%。おおよそ4人に3人は、レジ袋を買っていません・・・この水準が続けば、ファミマだけで年に23億枚ほどの削減効果があるそうです。
辞退率が上がっている傾向は、新たに有料にしたスーパーや百貨店でも同様のようです。首都圏や関西圏にあるスーパー、ライフの辞退率は48%から76%に急伸。そごう・西武でも飛躍的に伸び、85%に達しています。

性別や年齢別では、どうでしょうか。
レジ情報を分析しているマーケティング会社「トゥルーデータ」が約5千万人の購買データをもとにドラッグストアの7月上旬から中旬にかけての状況を調べたところ、男性より女性の方が、若者よりお年寄りの方が辞退する割合が高い傾向が出ました。男性67%に対し、女性は80%。20代が68%に対し、80代では82%に上りました・・・

空飛ぶ車は東京の空を飛ぶか

2020年9月20日   岡本全勝

空飛ぶ車の開発に、企業がしのぎを削っています。ニュースでも、しばしば取り上げられます。
私は、空飛ぶ車が空を飛ぶことについて、懐疑的です。技術的には、いずれ課題は解決され、実用化されるでしょう。しかし、それが日本の空、東京の空を飛ぶこととは別です。

何が障害になるか。
・少人数で空を移動する手段なら、ヘリコプターがあります。空飛ぶ車と、何が違うか。空飛ぶ車が簡単に操縦できるなら、ヘリコプターもそうなるでしょう。あるいは、ドローン型のヘリコプターができるでしょう。
・ヘリコプターをご存じの方は、あの騒音を知っておられるでしょう。回転翼ドローンも大型になると、うるさいです。私の家の上を飛ぶのはやめて欲しいです。
・自動車が道路を走っても、交通事故が起きます。空の上でどのように衝突を防ぐのか。飛行機の場合は、航空路線が決まっていて、あるいは届け出て許可を得ます。それを考えると、空飛ぶ車も自由勝手に飛ぶことはできないでしょう。衝突回避は技術的にできるでしょうが、通る空路を限定しないと、危ないし、うるさいです。
・自動車も、たまに故障して立ち止まります。空で故障すると、墜落するのでしょう。その安全をどう確保するか。これも、私の家の上空を通ることを拒否する理由です。
・空を飛ぶことに特化しているヘリコプターと、道路を走り空も飛ぶ車と比較すれば、ヘリコプターと自動車を別々に利用する方が、燃料効率は良いでしょう。

どこか広大な砂漠の上を飛ぶ分には、自由に飛んでもらって問題はないでしょう。しかし、町の上、東京の空を飛ぶには、航空道路法規とも言うべき、利用に際する問題解決の決まりを明確にしないとなりません。技術開発とともに、使う決まりを解決しなければなりません。

帝国以後のアメリカのあり方

2020年9月20日   岡本全勝

9月13日の読売新聞、ティモシー・スナイダー、エール大学教授の「帝国以後のアメリカ 「再び偉大な国」幻想と弊害」から。

・・・トランプ氏は4年前の大統領選で「米国を再び偉大な国にする」と公約して当選しました。
私見では、虚構の国民国家への回帰をめざす無理な試みです。
国民国家は「一つの国民」の意識を共有する民族を主体とする統一国家です。米国は18世紀の建国時から「国家に帰属する白人」と「白人の所有する黒人奴隷」という大別して2種類の人間がいた。国民国家とはいえない。トランプ氏の「偉大な国」は白人・キリスト教徒だけで米国が構成された架空の時代を指しているようです。先住民を虐殺した史実も、奴隷を酷使した史実も忘れている。

米国史は帝国史です。北米大陸の東海岸、次に中西部、さらに西海岸へとフロンティアを征服して領土を広げる。帝国の拡張はアラスカとハワイを州として編入する20世紀半ばまで続きます。
米国はその後、東西冷戦で西側・自由主義陣営の盟主として世界秩序を担う。世界の帝国です。

ただトランプ氏が米国第一を唱えて国民国家への移行を試みたことには理由がある。米国は「帝国以後」の段階に入ったからです。
フロンティアを失い、連戦連勝の戦史も今は昔。冷戦後、世界の力関係は変わり、米国は帝国としての使命を見失います。白人らは世界に対する優越感を失い、感情を乱し、戸惑っている。
21世紀の米国の最大の課題は「帝国以後」の国造りなのです。
トランプ氏は白人らの感情の乱れに道筋をつけ、新しい国造りの力に変えることはしなかった。白人がルールを決める偉大な国家という神話を掲げ、結果として国内の有色人種や移民らに対抗させ、国の分断を加速してしまった。
コロナ禍に四苦八苦する米国を見ると、「帝国以後」の針路の過ちを思わざるを得ません・・・