カテゴリーアーカイブ:社会の見方

消費税増税1年

2020年10月7日   岡本全勝

先日、訪ねてきた新聞記者と、次のようなやりとりをしました。

全:10月1日で、消費税が10%に引き上げられてから、1年が経つけど、記事になったかな?
記者:そう言われれば、そうですね。すっかり忘れていました。
全:報道の悪い癖やね。毎日のニュースは、つまらないことでも載せる。政府や会社の発表なら、その広報組織と化して、宣伝に努める。でも、それがどのような結果になったか、どのような成果を生んだかは、検証しないよね。
消費税増税の際には、あれだけ大騒ぎをしたのに、1年経ったら忘れている。安倍総理が、2度も消費税増税を延期したけど、このような状態がわかっていたら、延期しなくてもよかったね。

いくつかの新聞記事はありますが、各紙とも熱心ではないようです。10月5日読売新聞「消費税増税1年 軽減税率定着」。

デジタル化、日本企業の失敗

2020年10月3日   岡本全勝

10月1日の日経新聞経済教室、一條和生・一橋大学教授の「新たな知の探求を目指せ DX実現の課題」から

・・・しかしDXは単なるデジタル技術の活用ではない。究極的には従来の業務、ビジネスモデル、組織、人間、企業文化の変革まで求めるものであり、一朝一夕に実現はしない。スイスのビジネススクールIMDの調査によれば、年々DXのインパクトの大きさに対する認識が深まっているのに、積極的に対応できている企業が3割にすぎないのも、DXに伴う変革が容易ではないからである。

IMDの19年世界デジタル競争力ランキングでは、「企業の俊敏さ」で日本企業は世界最下位の63位である。日本が世界最下位になっている項目は他にもあり、人材の「国際経験」もそうだ。なぜ、人材の国際経験がDXに関連するのか。世界の経営者は「経営の定点観測点」を持っており、それは世界的な経営者の集まりであったり、自分が卒業したビジネススクールの卒業生のイベントやネットワークであったりする。そういう世界的な経営の定点観測点では、いま何が最重要経営アジェンダ(経営課題)なのかを、速やかに知ることができる。

DXが最重要課題だとわかれば、変化への対応は速い。しかし考えてみれば、日本企業における意思決定の遅さや人材の国際経験の不足は今に始まった話ではない。日本でDXの推進が加速されない一因は、実は以前から日本企業の問題として指摘されていたことが、未解決のままで放置されていたことにもある。

平成の時代、日本企業の多くが低迷した「失敗の本質」に学び、長年の日本企業の未解決の問題にメスを入れなくして、DXでの成功はあり得ないと認識すべきである。この30年、ビジネスの世界で日本は負け組であった。世界的な企業ランキングである「フォーチュン500」で、1995年にはトップ50社中21社を占めていた日本企業は、20年はわずか3社だ。以前からランクインしていた企業の競争力の衰退と、新興企業がランクインしないという企業界の新陳代謝の悪さが目立つ。

アフリカなどの新興市場での事業拡大といった、新しい事業機会を育むことができなかったし、製造業におけるモジュラー化の進展など、従来の日本企業の強みを発揮しにくい変化も起こった。特定の戦略原理に徹底的に適応しすぎて学習棄却ができず、自己革新能力を失ってしまったかつての日本軍と同じような状況に日本企業は陥った。

テレワークの推進にしても、ジョブ型雇用への移行、それに伴う新卒一括採用の廃止という人事制度の大変革まで覚悟して踏み切っている企業が、どれだけあるのか。組織活動の鍵は様々な仕組み、制度、組織が連動する(オーケストレーション)することにあり、その下でDX推進のために経営、事業部門、IT(情報技術)部門が一体とならなければ実行は難しい。

出島的に「デジタル戦略部門」を設ける企業も多いが、それが孤立して、他の組織のメンバーがDXを「自分ごと」にできなければ、組織の変革は実現しない。このままではDXは流行に終わり、そうなったならば、日本企業界が本当に破壊されてしまう・・・

 

ローマ帝国末期、コンスタンチノープルの建設

2020年9月30日   岡本全勝

田中創著『ローマ史再考 なぜ首都コンスタンチノープルは生まれたのか』(2010年、NHKブックス)を(だいぶ前に)読みました。
本の帯にあるように、古典古代でも、ビザンツでもないローマ世界です。副題にあるように、コンスタンチノープルの誕生からローマ帝国の首都になる過程を描いています。元祖首都であるローマに、取って代わるのです。どのようにして、それが実現するのか。

古代ローマ史といえば、私などはやはり、首都ローマで考えてしまいます。この本は、西ローマ帝国でなく、東と西に分裂する過程、そして東が優位に立つ過程です。
ビザンツ帝国になる前の歴史で、なるほどそうだったんだと、納得しました。
コンスタンチノープルを中心に、そしてそこを首都に仕立て上げた皇帝たちが中心に描かれます。皇帝も絶対君主でなく、推戴されないといけません。その際には、有力者たちの争いに巻き込まれます。皇帝一族に産まれると、幸せになれる場合と、とんでもない運命になる場合があります。

ジョエル・シュミット著『ローマ帝国の衰退』 (2020年、文庫クセジュ)が、書評欄で、訳者の解説が面白いと書いてあったので、読みました。その通り表題に偽りありで、物足りなかったのです。

中央政治の歴史です。人民(と呼べばよいでしょうか)や経済、社会は出てきません。もちろん1000年以上も前のことですから、資料が残っていないという制約もあるのでしょう。歴史学が、政治史から社会史や文化史に範囲を広げているので、そのような分野も期待したいです。

真実を見たくない国民の自意識

2020年9月24日   岡本全勝

9月15日の朝日新聞オピニオン欄、宮台真司・都立大教授の「国民の自意識、痛みを粉飾」が、現在の日本の状況を鋭く分析していました。

「見たいものだけを見る」ということです。
経済について言えば、アベノミクスによって、株価上昇と低水準の失業率が語られます。ところが、先進国の中で日本だけが1997年から実質賃金が低下を続け、1人あたり国内総生産は2018年に韓国とイタリアに抜かれました。
社会指標も、若年層の自尊心や家族への信頼度も極めて低く、子どもの幸福度は先進国で最低水準です。

宮台さんの見立ててでは、国民の自意識が鍵だと言うことです。
本当は経済的に苦しいのに、自意識のレベルではそうではないことにする。「見たいものだけを見る」のです。格差や分断による痛みは、他人と共有して初めて政治的な討議の課題になるのですが、その手前で自意識の問題に「回収」されてしまいます。
「若年層の政治的関心が低いのも、自分が置かれた状況の真実に向き合うのがつらいからです」と指摘されます。

納得です。それを政治課題にしない、政治、マスメディア、有識者の責任でしょう。

ゴミ袋有料化の効果

2020年9月21日   岡本全勝

9月13日の朝日新聞オピニオン欄「レジ袋有料化から考える」によると。

・・・適切に処理されなかったプラスチックごみは、世界で年800万トンが海に流れ込んでいると推計されています。プラスチックは自然の中で分解されにくく、海の生き物が誤ってのみこむ、体に絡まるなど、生態系に悪影響を及ぼします。50年には海のプラスチックごみが魚の重量を上回るという試算もあります。
こうした課題について、多くの人に関心を持ってもらうため、白羽の矢が立ったのが、ほかの容器包装に比べて、マイバッグで代替がしやすいレジ袋でした。
国内のプラスチックごみに占めるレジ袋の割合は数%に過ぎません。しかし、そのほかのプラスチック製品も無駄に使い捨てていないか、見直すきっかけにしてもらうのが狙いです・・・

・・・レジ袋有料化は、西友やイオンといった大手スーパーでは2012年ごろから本格的に導入してきました。
一方のコンビニは「ふらっと立ち寄ってもらうのに、マイバッグはそぐわない」といった理由で無料配布を続けてきましたが、大手3社を含む多くのチェーンは、国によって義務化された7月1日から、有料に切り替えました。値段はセブン―イレブンは税抜き3~5円、ファミリーマートとローソンは税込み3円です。

その結果、辞退する客の割合は一気に増えました。有料化前のコンビニ業界は30%に満たない状態でしたが、有料化後はセブンで75%、ファミマで77%、ローソンで75%。おおよそ4人に3人は、レジ袋を買っていません・・・この水準が続けば、ファミマだけで年に23億枚ほどの削減効果があるそうです。
辞退率が上がっている傾向は、新たに有料にしたスーパーや百貨店でも同様のようです。首都圏や関西圏にあるスーパー、ライフの辞退率は48%から76%に急伸。そごう・西武でも飛躍的に伸び、85%に達しています。

性別や年齢別では、どうでしょうか。
レジ情報を分析しているマーケティング会社「トゥルーデータ」が約5千万人の購買データをもとにドラッグストアの7月上旬から中旬にかけての状況を調べたところ、男性より女性の方が、若者よりお年寄りの方が辞退する割合が高い傾向が出ました。男性67%に対し、女性は80%。20代が68%に対し、80代では82%に上りました・・・