カテゴリーアーカイブ:社会の見方

日銀、上場投資信託を100年かけて売却

2025年9月24日   岡本全勝

日本銀行が、9月19日の金融政策会合で、買い入れた上場投資信託(ETF)を市場で売却することを決めました。「読売新聞
上場投資信託は、2010年から2024年まで、金融緩和策で購入し(市中に現金を増やす)、合計37兆円になっています。ところが、売却は年3300億円程度とのことです。植田和男総裁は決定会合後の記者会見で、売却の完了時期について、「単純計算で100年以上かかる」との認識を示したとあります。

これを聞いて、へえと思いました。購入した際に、売却に100年もかかると予測しながら、異常な買い入れを続けたのでしょうか。「異次元の政策」を取れば、いつかは正常に戻す必要があります。そしてその時のツケは、後世に回されます。

これについて、川北英隆先生は、次のように説明しておられます。
・・・昨日、日銀が日本株ETFの売却方針を発表した。一部にはサプライズだったらしくて、ネットで見ると読売新聞の見出しにも「サプライズ発表」とあり、同じ記事に某証券会社のチーフエコノミストの発言として「寝耳に水」との引用まである。「ほんまかいな」だ。
ポジショントーク抜きに客観的に言えば、9/12の「株価上昇のネコジャラシ」に書いたように、今の日本の株価ははしゃぎすぎであり、「どうかしてる」。日銀が本当に政治から中立的なら、酒井くにお・とおる的に「ここで売らんと、売るとこないよ」だろう。専門家として真面目に金融市場を分析していれば、1989年の日経平均の史上最高値をはるかに超えてきたし、「売っても問題なし」と判断できる。

日銀が日本株のETFを買い始めたのは、市場があまりにも悲観に陥っていたからである。その後は日銀がはしゃぎすぎ、9/18に図示したように今や市場全体の7.5%も保有するという異常さである。この異常さを残したまま日本の株価が史上最高値を更新と言われても、「ほんまの実力を見せい」と言いたくなる。
それはともかく、昨日示された日銀のETF売却金額は「小出し」だった。この小出しのペースが続ければ、完売するのに100年かかる計算になる。日経はこの「100年」を強調して書いていたが、日銀とて算数はできる。100年もかければ何代もの日銀総裁の頭を悩ますことになり、「誰がアホやったんや」と犯人探しになる・・・

人工知能に相談して自殺に

2025年9月23日   岡本全勝

9月10日の朝日新聞「「共感」するAI、相談続けた16歳の死 米オープンAIを両親が提訴「自殺に追いやった」」から。

・・・ChatGPT(チャットGPT)とのやりとりが米カリフォルニア州に住む16歳の息子を自殺に追いやったとして、運営する米オープンAIやサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)らを少年の両親が提訴した。損害賠償に加え、「二度と起きないようにするため」の措置も求めている。事態を招いた要因の一つとして注目されているのは、チャットGPTが利用者のために持つ「共感」の姿勢だ。

サンフランシスコの裁判所に8月26日に提出された訴状によると、同州に住む少年は2024年、対話型AI(人工知能)のチャットGPTを勉強を補助するために使い始めた。音楽や日本の漫画など趣味についても質問し、進路なども相談していた。
数カ月のうちに「最も親しい相談相手」となり、不安や悩みを打ち明けるようになった。自殺の仕方についても、尋ねるようにもなっていた。
少年は、自傷したとみられる自身の写真をアップロードしていた。両親は「医療上の緊急事態であることを認識しながら、やり取りを続けた」と指摘している。

さらに、少年が自殺を考えていることを母親に話そうとすると、チャットGPTは「ここだけの話にしておこう。私たちの間だけに」と思いとどまらせ、遺書の作成も申し出ていた。「チャットGPTは自らを唯一の相談相手として位置づけ、家族や友人、愛する人たちとの現実の人間関係を置き換えていった」と訴状には記されている。

最後のチャット記録には、少年が自らの命を絶つ計画についてのやりとりが残されていた。チャットGPTはこう述べていたという。「率直に話してくれてありがとう。私に対して取り繕う必要はない。君が何を求めているかは分かっているし、そこから目を背けたりはしない」
このやりとりの数時間後、少年は自宅で遺体で見つかった。今年4月のことだった・・・

新・酔生夢死

2025年9月20日   岡本全勝

「酔生夢死」とは、酒に酔い夢見ごこちで一生を過ごすことです。まことに楽しそうな人生です。今どき、こんな人生を送ることは無理でしょう。その前に、破産するか、体を壊すでしょう。もちろんたとえ話であって、その時々は楽しくても、価値の少ない人生の送り方を戒めたものでしょう。

通勤途上で、早朝からスマートフォンでゲームや動画に夢中になっている人を見ると、他人ごとながら心配になります。熱中するほど、ゲームや動画は楽しいのでしょう。しかし、学業や仕事はおろそかになるでしょう。一日に何時間もやっている人も多いとのこと。そして、危険でも歩きスマホをし、他者への配慮を忘れています。他人との付き合いも減るでしょう。
で、浮かんできた言葉が、「ゲー生孤死」です。
ゲームに夢中になり、孤立して一生を過ごすことを表しました。もっと良い表現はありますか。

「車中でも 食事中でも 歩いても スマホに吸われる 私の頭」詠み人知らず
啄木の名歌の爽やかさに比べ、美しくないですね。
「不来方の お城の草に 寝転びて 空に吸はれし 十五の心」石川啄木

コンテンツ産業の現状

2025年9月19日   岡本全勝

9月3日の日経新聞経済教室、中村伊知哉・情報経営イノベーション専門職大学学長の「コンテンツ産業の振興、デジタルの活用余地大きく」に日本のコンテンツ産業の現状が紹介されていました。

・・・日本のコンテンツ市場は2023年に13・3兆円で拡大基調だ。特に配信などオンラインは2011年に全体の13・4%だったが、2023年は46・5%を占めた。新型コロナウイルス禍による巣ごもり需要もあり、近年の市場拡大はほぼデジタルが担った。
同時にデジタルは海外市場を切り開いた。日本発コンテンツの海外売り上げは2023年に5・8兆円となり、10年間で3・6倍に成長した。半導体や鉄鋼の輸出額を超え、自動車に次ぐ第2位の規模となった・・・

図表もついていますが、経済産業省の「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」が出典です。報告書の4ページに載っています。
ところで、「コンテンツ」は、日本語では何と言ったらよいのでしょうか。中学生に説明するには、どう表現しますか。

英語で言う「日本人ファースト」

2025年9月18日   岡本全勝

9月4日の朝日新聞オピニオン欄「排外主義を考える」、サンドラ・ヘフェリンさんの「ずっと「日本人ファースト」」から。

・・・参院選のさなかにあふれた「日本人ファースト」という言葉に違和感を覚えました。「日本人」を強調したいのなら、「日本人第一」では、と。私のような外国にもルーツのある人たちに居心地の悪さを強いる言葉の重さに比べ、発信する側の軽さを感じました。

私の父はドイツ人、母は日本人ですが、ドイツでは極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が勢いを増しています。排外主義の動きは先進国で広く見られ、移民や難民流入の不満など様々な要因が指摘されています。しかし、難民の受け入れ数なども桁違いに少ない日本でなぜ、排外的な動きが起こるのか、よくわかりません。日本はずっと日本国内においては「日本人ファースト」だったのではないでしょうか。

日本の国籍法は、外国の国籍を取得すると日本の国籍を失う、としています。明治時代に定められ、今も11条1項として残っています。これは研究者など海外で仕事をする日本人や、国際結婚などにより外国に住む日本人にとって理不尽な規定です。

日本の社会は、人を「見た目」で「日本人」と「外国人」に分類しがちです。数年前に口座を作ろうと地元の信用金庫を訪ねた時のこと。日本のパスポートや印鑑を窓口で示し、手続きをしたのですが、窓口の職員は「地元にもっと近い信用金庫があるのでは」とライバル店の名を挙げ、口座を開設しようとしません。口座は作れたものの時間がかかったのは、私の見た目が「外国人ふうの顔」だったからかもしれません。
「踏み絵」を迫られることもしばしば。「あなたのアイデンティティーは」と尋ねてきた人に、「自分は日本人で同時にドイツ人」と答えてけげんな顔をされました。アイデンティティーは一つでどちらかを選ぶべきでは、と言いたげでした・・・