「社会の見方」カテゴリーアーカイブ

なくなる郵便ポスト

7月28日の朝日新聞に「欧州、消えゆく郵便ポスト デンマーク、手紙の配達量9割減り全て撤去へ」が載っていました。

・・・6月中旬、北欧デンマークの首都コペンハーゲン。ドイツ人の女性が中央駅の赤い郵便ポストに絵はがきを入れた。1日平均11万人が使う駅。だが、日中の3時間でポストを利用したのは、この女性だけだった。
このポストも含め、デンマークに1500あるポストはすべて、今年中に撤去される。デンマークとスウェーデンが共有する政府系郵便会社「ポストノルド」がデンマークで400年の歴史がある手紙の配達をやめ、民間企業に委ねることを決めたからだ。
女性は「残念で、びっくりです。旅先から家族にはがきを送ることが好きなので」と言う。ただ、ポストノルドの手紙の配達量は、2000年の14億5千万通から24年は1億1千万通に。9割以上も減り、採算がとれなくなった・・・
・・・一方、デンマークでは「デジタルポスト」の活用が進んでいる。
週刊紙記者、マレーネ・ジェンセンさん(28)は最後にポストを利用したのがいつか、「もはや覚えていない」。自宅の引っ越し後の半年で受け取った郵便物は家賃や光熱費の初期通知など5通だけだ・・・
・・・国民はすでに政府や自治体からの重要な情報を「デジタルポスト」で受け取っている。原則として15歳以上の全員と全ての企業が利用している。ジェンセンさんは「正直、ポストがなくても困ることはない」と話す。
来年から全国で手紙の配達を担うのは、民間の配達会社「デオ」だけになる。デオでは手紙を23デンマーククローネ(約510円)で送れる。ポストはないが、全国に1500の「ショップ」があり、そこに持っていけば、配達してもらえる・・・

・・・民主主義の発展に寄与してきた郵便制度は、国内であればどこでも公平にサービスを受けられることを法律で保障する「ユニバーサルサービス義務(USO)」に支えられてきた。だが、国連の調査で「最もデジタル化が進んでいる政府」とされているデンマーク政府は、2024年に改正郵便法を施行。USOに終止符を打ち、それが今年の手紙配達の終了へとつながった。デジタル社会への移行が進んでいることもあり、国民から強い反発の声はあがらなかった。
USOは欧州各国で岐路を迎えている。多くの国で以前よりも配達期限を延ばしたり、配達の頻度を減らしたりするなどサービスの水準を見直す動きが広がっているほか、配達料の値上げに踏み切る動きも出ている・・・

各国の事情も載っています。
英国 旧政府系企業の親会社をチェコの実業家が買収。一部の土曜配達を廃止し、平日配達は隔日に
フランス 利用の少ない郵便ポストを撤去。一部の土曜配達廃止を議論
ドイツ 旧政府系企業の親会社が過去20年間で最大となる8千人の人員削減を発表
オランダ 配達時間の目安を「24時間以内」から「48時間以内」に変更。将来的には「72時間以内」に

日本人は座りすぎ

7月26日の日経新聞に「日本人は座りすぎ がんや認知症のリスク増大」が載っていました。

・・・あなたは1日何時間座っているだろうか。運動不足は気にしても、自分の座位時間を意識する人は多くない。座位時間の長さは様々な病気や不調のリスクをもたらす。座りすぎの健康への影響と改善策を紹介する。
スポーツ庁の調査によると、運動不足を感じている人は約78%に及ぶ。「健康のためには運動」と考える人は多いが、実は「座位行動」も健康を大きく左右する。座位行動とは、覚醒時に座ったり寝転んだりしているときのエネルギー消費量が1.5METs(メッツ、運動強度の国際指標)以下の行動を指す。
日本人は世界と比べ総座位時間が長い。2013年の国民健康・栄養調査によると、男性の38%、女性の33%が1日8時間以上座っていた・・・

ついている図では、1日当たり座っている時間は、日本とサウジアラビアは400分を超えます。スウェーデンやカナダは300分、アメリカやインドは200分くらいです。アメリカの倍ですね。
という私も、仕事は椅子に座ってパソコンを使っていることが多いので、日中はほとんど座りっぱなしです。

・・・座位と健康はどのように関係するのか。早稲田大学スポーツ科学学術院の岡浩一朗教授は「様々なメタ解析で、座位行動により心血管疾患やうつ病、2型糖尿病、がん、認知症などのリスクが高まると報告されている」と指摘する。
座位リスクを下げるには、フィットネスクラブなどで運動するとよいと考えがちだが、そうでもないようだ。一般に運動はやや早歩きや軽い筋トレなど、3METs以上の中高強度の身体活動を指す。一方「1日の覚醒時間の行動割合をみた研究によると、中高強度の身体活動は3〜8%に過ぎず、大半は座位行動と3METs未満の低強度の身体活動の時間だとわかった」と東京医科大学公衆衛生学分野の井上茂主任教授は説明する・・・

・・・面白いデータもある。帝京大学大学院公衆衛生学研究科の天笠志保さんの研究によると「地域や年代にかかわらず、女性は低強度の身体活動が多く、その結果1日に占める座位行動の時間が男性より1割も少なかった」。井上さんは「女性の方が家事などでこまめに動く機会が多いためではないか」と推察する・・・
・・・在宅ワークの普及も、座位時間が増える要因だ。「通勤や通学では意識せずに低強度身体活動を増やす効用がある」(岡さん)。通勤中は立つ、買い物は車を使わず歩く、食後はすぐに後片付けに立つなど、日常生活で立ったり歩いたりのルーティンを組み込むことが大切だという・・・

経済対策と産業政策の違い2

経済対策と産業政策の違い」の続きです。
バブル経済崩壊後、度重なる経済対策にかかわらず、景気は良くなりませんでした。巨額の不良債権の処理、過剰な設備などの解消を行い、規制改革、市場開放などの供給拡大策も取られました。しかし、2010年代以降も、日本の経済は復活しませんでした。

これら以外の要因があったのです。一つは、国際競争です。日本が生産し輸出していた製品、代表は電気製品です。まず、工場が海外に移転し、国内産業が空洞化しました。次に、アジア各国の追い上げで、市場を奪われました。それは海外輸出だけでなく、国内市場でも負けました。いくつかの家電企業が倒産したり、外資に買われました。

アメリカはそのような経験(日本がアメリカの電器や自動車産業を負かした)をしたのですが、新しい分野で発展を続けました。情報通信、バイオ、映像などです。韓国や中国も、それらと競争するように、新しい分野でも力をつけました。日本は、世界の先頭を走っていた半導体産業でも、負けるようになりました。
日本も挑戦はしたのですが、アメリカに追いつけず、いくつかの分野では韓国、中国、台湾にも置いて行かれるようになりました。
この状態を作ったのは、日本の産業界です。世界第二位の経済大国になって、「経済一流、政治は二流」と豪語していたのに、その後の凋落ぶりは悲しいものがあります。

政策論に戻りましょう。
ケインズ経済学は需要に着目した景気対策であって、供給側(産業や国際競争)の視点が欠けています。供給側も入れた経済学・経済政策が必要なのです。その点では、日本は規制改革、市場開放などの供給拡大策は取ったのですが、産業政策だったのです。
日本がこの間に産業政策に消極的だったのは、新自由主義的改革思想にも原因があります。経済成長に成功し、従来の産業保護振興政策は終わったとの認識がありました。政府の市場への介入はなるべく減らすべきだという主張です。
それ自体は間違っていなかったのですが、産業界が「認識不足」「力不足」の場合は、政府が介入すべきだったのでしょう。課題はその手法です。産業が幼稚な時代(明治時代など)は、政府による技術導入や支援、国営企業の払い下げ、資金支援、関税による保護などが行われました。現在では、どのような産業にどのような手法を使えば良いのでしょうか。
現在、半導体産業をてこ入れしようとしています。ただし、政府や官僚に、どこまで産業の未来を見抜く能力があるかは、未知数です。
日本経済低下の責任

「的」と「の」、日本語と中国語での使い方

日経新聞土曜日連載、阿辻哲次さんの「漢字そぞろ歩き」、7月26日は「中国語に交じる平仮名「の」の謎」でした。

・・・1990年代半ば、とある業務で何人かと中国へ出かけ、最初の用務先である河南省の省都鄭州についた時のことである。
夕方ホテルにつき、荷物を置いて、夕食にいい店を物色しながら大きな通りを歩いていると、同行の一人が大声で叫んだ。
「ほら、あそこ! 『大阪の夜』って書いてある!」
彼が指さす方を眺めると、大きな看板に金文字の行書体で「大阪の夜」と書かれていた。
鄭州でなぜ「大阪」なのかも不思議だったが、もっと驚いたのは、その看板にひらがなの「の」が書かれていたことである・・・

現在の中国、香港、台湾では、街中の看板やポスターにひらがなの「の」が氾濫しているそうです。
なぜ「の」が使われるか。日本語が格好良いと思われていること、「的」より書きやすいようです。発音は「的」を使うとのこと。

もう一つ勉強になったのは、日本語での「的」、現実的とか社会的の「的」です。
これは、英語のromanticなどにある-ticを音訳したのだそうで、中国にはない使い方とのこと。へえ。

朝日新聞土曜夕刊廃止

8月2日の夕刊から、朝日新聞の土曜日夕刊が廃止されました。
時代の流れでしょうね。地方紙では、夕刊そのものがなくなっています。
現在の新聞は、速報性(ニュース)では、インターネットにかないません。それより、より詳しい内容や解説に意義があります。すると、朝夕二回配達する必要はないでしょう。各紙とも、夕刊は文化などに重点が移っています。

いずれ、夕刊自体がなくなるのでしょう。
従業員のことを考えると、朝刊を廃止して夕刊だけにする方が良いのでしょうが。読者は、やはり朝一番に新聞を読みたいでしょう。