カテゴリーアーカイブ:社会の見方

政府は投資ファンドを作るより、税制や規制緩和を通じ起業しやすい環境作りに徹するべき

2024年4月3日   岡本全勝

3月28日の日経新聞オピニオン欄、梶原誠・コメンテーターの「株高に潜む「父権主義」の罠」が載っていました。

・・・日経平均株価が1989年末の高値を超え、日本経済を苦しめた「34年の呪縛」は解けた。だが100年前からの呪縛はまだ続く。「父権主義」の罠だ。
父権主義は「パターナリズム」ともいい、権力者が保護を目的に弱者に干渉する。市場目線で言い換えると、政や官が企業の活動に介入する。企業の関心は顧客より「お上頼み」になり、独自の思考もなくなる。イノベーションを追う株式市場はこの風潮を嫌う・・・
・・・34年間を振り返ろう。まず比較対象として伸びた銘柄を見る。時価総額を飛躍的に増やしたのは独創性を発揮した企業だ・・・沈んだ銘柄はどうか。目立つのは、父権主義が色濃く残る規制業種だ。東証業種別株価指数の下落率を見ると、電気・ガスと証券・商品先物がそれぞれ70%前後、銀行は80%に及ぶ。横並び経営が目立つこれらの業種が株式市場で幅を利かせると、投資家の目利き力は生かしがいがなく衰える。
残念ながら「下落組」の存在感は大きい。34年前と時価総額を比較できる1189社中、増やした会社は3分の1の397社に過ぎず、減らした会社は2倍の792社だ。両銘柄群を株価指数化してみよう。父権主義に染まる多くの会社の株安を、独創的な一握りの企業が株価を4倍近くに高めて埋め合わせた実態がちらつく・・・

・・・日本も父権主義を葬るチャンスを迎えた。日銀は今月、人為的に金利を抑え、株価を底上げしてきた異次元緩和を終えた。
一方で、逆行する動きも静かに進む。レコフデータによると、コロナ禍が始まった20年から23年までの官製ファンドの投資額は2兆円弱と、19年までの4年間の3倍を超えた。既得権を守るためだろう。いったん始まった「大きな政府化」に歯止めが利きにくいことは、世界の歴史が示している。

参考になる会話がある。昨年死去したドイツの大物政治家、ウォルフガング・ショイブレ氏は2009年からの財務相時代、米投資会社KKRの共同創設者、ヘンリー・クラビス氏に意見を聞いた。「政府がベンチャー企業に投資するファンドを作りたい」
クラビス氏は反対した。「政府は税制や規制緩和を通じ、起業しやすい環境作りに徹するべきだ。良い会社があれば民間マネーが見つける。約束してもいい」
日本への問いが浮き上がる。政府は縁の下の力持ちに徹するか。成長する企業は生まれるか。投資家はそんな企業を探し出す目利き力を持つか――。世界は今後、これらの視点で日本経済を見つめるだろう。急ピッチで進んだ株高を維持する条件でもある・・・

ご請求金額

2024年3月30日   岡本全勝

東京ガスからお知らせが来ました。「ご請求料金確定のお知らせ」とあります。「ご利用金額」ならわかるのですが、「ご請求料金」はおかしいと思いませんか。相手の「利用金額」に「ご」をつけるのはよいですが、会社側からの「請求金額」に「ご」をつけるのは、私は違和感を感じました。そこで、国語の先生に聞きました。

私たちが学習したころは、敬語は三種類の分類でしたが、最近は五種類に分類しているようです。「御」(「お」「ご」)は美化語と言われているようです。
敬語は、誰を敬いたいか、「行為者」に対してなのか、「向かう先」なのか、「相手」なのか、で使い分けます。
「ご利用金額」と使う場合は、利用するのがお客様と考えて、利用する「行為者」を敬うはたらきと考えます。「(お客様が)ご利用なさった金額」で、尊敬語のような意図がある。
「ご請求金額」になると、請求するのが東京ガスで、請求することの「向かう先」を敬うはたらきと考えます。「(東京ガスがお客様に)請求いたします金額」で、謙譲語のような意図がある。視点の違いだから、どちらもありとのことです。

文化庁文化審議会答申「敬語の指針」が掲載されています。39ページの「自分側に「お・御」を付ける問題」に、次のように書いてあります。
・・・自分側の動作やものごとなどにも 「お」や「御」を付けることはある。自分の 動作やものごとでも,それが<向かう先>を立てる場合であれば,謙譲語Ⅰとして,「 (先生を)お待ちする。 」「( 山田さんに)御説明をしたい。 」など 「お」や「御」を 付けることには全く問題がない。また「私のお菓子」など,美化語として用いる場合もある。
「お」や「御」を自分のことに付けてはいけないのは,例えば 「私のお考え 」「私 の御旅行」など,自分側の動作やものごとを立ててしまう場合である。この場合は,結果として,自分側に尊敬語を用いてしまう誤用となる・・・

確かに、目上の人に説明する際に「ご説明させていただきます」とか、「お答えします」と、自分の説明行為に「御」をつけています。
そのうちに、他人にものを贈呈する際に「ご粗品ですが」というようなことになるのでしょうか。「お粗末さまでした」という言葉もあります。

教員の長時間労働

2024年3月29日   岡本全勝

3月11日の朝日新聞オピニオン欄「記者解説」、「先生を、教育の質を守る 給与や長時間労働、予算かけ抜本策を」が、教員の長時間労働や精神疾患を取り上げています。詳しくは記事を読んでいただくとして。そこに、各国の中学教員の1週間あたりの労働時間が図になって載っています。

経済協力開発機構(OECD)の「国際教員指導環境調査2018」によると、中学校教員の1週間の仕事時間は、OECD加盟国のうち調査に参加した31カ国の平均が38・8時間だったのに対し、日本は56・0時間。アメリカが46・2時間、韓国は34時間です。
書類作成などの「事務仕事」は、参加国で最長の週5・6時間だそうです。

なぜ、こんなことが長年にわたって放置されているのでしょう。先進諸国を手本に発展を遂げた日本が、いつの頃からか、独自路線を歩んでいます。それがよい結果をもたらしているならよいのですが、これはひどいですよね。教育分野でも成功を収めた日本が、慢心したのでしょう。
予算がないというなら、文科省と財務省の責任は重いです。与党はどうしたのでしょう。年金や公共事業費も重要でしょうが、未来の日本人をつくることがより重要だと思うのですが。

中高生の児童館

2024年3月28日   岡本全勝

3月13日の読売新聞東京版に「中高生の児童館 存在感 調布市「キャプス」 音楽、運動、学習…自由に」が載っていました。第三の居場所は、重要です。こども家庭庁も乗り出しているようです。

・・・全国的にも珍しい中学・高校生世代に特化した児童館「調布市青少年ステーションCAPS(キャプス)」(調布市上石原)が、注目を集めている。国が、子どもが自宅や学校以外に安心して過ごせる「第3の居場所」作りに力を入れていることもあり、全国からの視察も相次ぐ。キャプスの関係者は「常に安心安全で過ごせ、社会とつながれる施設であり続けたい」と話している。

京王線西調布駅から徒歩5分、甲州街道沿いに立つビルの3、4階にキャプスはある。中に入ると、照明は薄暗く、一般的な児童館と違って大人っぽい雰囲気が漂う。そこでの過ごし方は十人十色。ギターを鳴らしながら歌う女子生徒もいれば、ダンスの練習に汗を流す4人組もいる。学習スペースで自習する生徒、スポーツエリアで卓球に熱中する男子生徒の姿も。それぞれが自由な時間を過ごせるのが、キャプス最大の特徴だ。
「家や学校でできない体験ができるのがここの魅力」と話すのは、高校2年の真船蘭童さん(17)。キャプスには中学1年の時から通い、今は趣味のラップの腕前を磨くため、ロビーで練習に励む。施設のスタッフと相談し、今年2月には即興でラップを競う「MCバトル」の大会をキャプスで開催した・・・

・・・一方、キャプスの利用者の中には、家庭や学校生活に問題を抱える子もおり、スタッフが虐待や学校・SNSでのいじめなどの相談を受けることもある。キャプスでは事態を把握すると、学校や行政など関係機関と連携し、解決方法を模索する・・・

スイス、傭兵と中立

2024年3月25日   岡本全勝

本の山から発掘され、気が向いたので、森田安一 著『「ハイジ」が見たヨーロッパ 』(2019年、河出書房新社)を読みました。

「アルプスの少女ハイジ」は、原作は読んでいなくても、テレビ漫画を見た人も多いのではありませんか。正しい発音は、ハイジでなく、ハイディだそうです。
宣伝文には、次のように書かれています。
「おんじはスイス傭兵だった――。白パンと黒パン、干し草のベッド、チーズ料理、フランクフルトへの旅、クララの病――子供の頃に夢中になったアルプスの物語には、意外な真実が隠されていた。原作に潜む19世紀ヨーロッパの光と影を読み解く」
このように、この童話を通して、19世紀のスイス社会を解説しています。原作は1880年、まだ100年あまり前のことですが、社会が大きく変わったことがわかります。日本も同じですが。

第2章は「おじいさんの履歴――スイス傭兵制」で、スイスの傭兵の歴史が書かれています。中世から、スイスはヨーロッパ各国への傭兵の供給源でした。たぶん山岳で働く場所が少なかったことが特殊な出稼ぎに向かわせ、山岳育ちで屈強だったことが各国に重宝されたのでしょう。戦前の日本軍でも、田舎の出身の兵隊が強かったとのことです。

そこに、スイスの中立国の成り立ちが説明されています。簡単に言うと、傭兵を要求する各国からの要望に応えるのですが、新教と旧教双方から味方につくようにとの要請を受けて困ります。そこで提案したのが、「スイス国内でそれぞれが傭兵募集をすることは妨げない。しかし国(当時はまだ邦の連合)としては、どちらにも味方しない中立を取りたい」です。各国がこの条件をのんだことから、スイスが中立国になります。なるほど、そのような経緯があったのですね。