先日、クリーニング屋に、冬物を出しに行きました。寒さが戻ったりするので、小分けにしてです。
お店には1人ずつしか入れないので、数人の客が店の外で待っています。
私の番が来て、「結構、はやっていますね」と聞いたら、「いえ、ダメなのです」と。在宅勤務が続くので、ワイシャツやスーツが持ち込まれないのだそうです。
「コートは着るでしょう」と聞くと、「いえ、コートもきっちりしたものは出てきません。ふだん着るようなものばかりです」との返事でした。
新型コロナウイルス感染症は、こんな影響もあるのですね。
カテゴリーアーカイブ:社会
ドイツの学校にはなぜ「部活」がないのか
高松平蔵著「ドイツの学校にはなぜ『部活』がないのかー非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間 」(2020年、晃洋書房)が、勉強になりました。
欧米のスポーツクラブが、地域の人たちによって支えられ、社交の場であることは有名です。この本はドイツの町を例に、スポーツクラブが地域の人たちに支えられ、地域の人たちの自慢であることを紹介しています。
学校のクラブ活動がないことは、分かりやすい象徴です。それは広い社会的背景に支えられているので、そこだけを切り取って輸入するわけにはいきません。
明治以来の学校体育、そして競技体育が、日本にスポーツを輸入し、根づかせました。プロスポーツも、広がりました。これもまた、発展途上国に効率的な、体育や競技の普及方法だったのです。しかし、それは学校内に閉じたスポーツでした。地域の人が参加するスポーツとは違います。クラブハウスが、あちらでは地域の人が集まる社交場なのに対し、日本のゴルフハウスは同好の士だけの、場合によっては接待の場です。
プロサッカー(Jリーグ)が、地域に根ざした競技団体を目指しています。イギリスやドイツのように、100年かけて地域の団体(NPO)を作ってきた社会とは、背景が違います。
住民が参加する地域の非営利団体(NPO)は、日本が輸入しなかった、また輸入できない活動かもしれません。連載「公共を創る」で、地域での住民のつながり、居場所作りを考えているので、勉強になりました。
この項続く。
うつ病患者の増加
奥田祥子著「社会的うつ―うつ病休職者はなぜ増加しているのか」(2020年、晃洋書房)が、勉強になりました。
職場では、うつ病が増えています。報道でも伝えられ、厚生労働省もストレスチェックを義務づけるなど、対策も取られています。一方で、うつ病の診断が以前より広くなされるようになったとか、病気まではいかない人が申し出るなどの指摘もあります。
「明るい公務員講座」や連載「公共を創る」の項目としても、関心を持っているのですが、なかなか簡潔に説明した書物を見つけることができません。この本は、去年、本屋で見つけて買ってありました。
新聞記者の経験がある研究者(現在は大学教授)が、患者や専門医の協力を得て、うつ病休職者の急増を分析した本です。
うつ病で休職したことがある50人にインタビューして、その詳細な自覚症状を国際的診断基準に照らし合わせると、43人(86%)が該当しません。
さらに、うつ病休職者の10例を取り上げ、6人の専門家に「うつ病」と診断するか再診断してもらうのです。すると、6人全員がうつ病と診断する1例を除いて、残り9例については、6人の医者が「うつ病と診断しない」としたのが平均7.5事例、診断しない率は83%でした。
詳しくは本を読んでいただくとして。著者は、医者が(国際基準に該当しないと思われる患者を)うつ病だと診断するかの理由を、次のようにまとめています。
1 患者の要望。うつ病と診断してもらって、休職したい。職場から離れたい。
2 企業内制度。うつ病診断によって休職しやすい企業内制度が整っている。
3 主治医の意図。患者の要望を診断に反映させたい。抗うつ剤による治療を行いたい。
デマが広がる要素と検証の必要性
朝日新聞ウエッブ論座、野口邦和・元日本大学准教授・元福島大学客員教授の「福島からは「逃げる勇気」が必要だったか『美味しんぼ』「福島の真実」編に見るデマ・偏見・差別」(3月9日掲載)を紹介します。原文をお読みください。
・・・2014年、漫画『美味しんぼ』「福島の真実」編で描写された鼻血は一過性で、他の出血症状や急性症状がない。『美味しんぼ』の原作者が福島県内で受けた被ばく線量は、出血症状が起こる線量より桁違いに低い。鼻血の原因が被ばくであるはずはないが、原作者はさも被ばくとの因果関係があるかのごとく執拗に描写する。福島県内で行われている除染を無駄で危険と強く否定し、危ないところから逃げる勇気を持てと全県民に呼びかけてもいた。福島第一原発事故から10年を経ようとする今、本稿を通して私は、「福島の真実」編にひそむデマ、偏見、差別の実態をあばこうと思う・・・
・・・7年前の2014年4~5月、大騒ぎになったのが週刊ビッグコミックスピリッツ掲載の漫画『美味しんぼ』「福島の真実」編の鼻血描写である。
福島第一原発の敷地内をバスで視察した主人公が福島から戻ってから突如鼻血が起こる。同行した他の登場人物も「僕も鼻血が止まらなくなった」「私も鼻血が出た」と合いの手を入れる。また、主人公は「福島に行くようになってからひどく疲れやすくなった」と話す。さらに、前双葉町長が実名で登場し、「私も鼻血が出ます」「福島では同じ症状の人が大勢いますよ。言わないだけです」などと、さも意味ありげに話す。
・・・これは福島県民を侮辱する以外の何物でもない。だからこそ漫画を読んだ多くの県民が批判や抗議を原作者やスピリッツ編集部に寄せたのである。
そもそも福島第一原発事故後、鼻血が増えたというデータはない・・・
・・・「福島の真実」編は鼻血描写だけが問題なのではない。数多くのデマに満ち溢れており、正直読むに堪えないと言ったら言い過ぎか。
例えば大阪で受け入れた震災がれきを処理する焼却場近くの住民を調査した結果として、1000人中800人が鼻血、眼、呼吸器系の症状が出ているとする描写がある。大阪で受け入れた震災がれきは岩手県宮古地区のものなのだが、なぜ県名を意図的に隠して福島県の震災がれきであるかのごとく読者を錯覚させ、「福島の真実」と称して描写するのだろうか・・・
・・・「福島の真実」編から2年後、避難者に対するいじめの問題が各地で話題になった。「ばいきんあつかいされて、ほうしゃのうだとおもっていつもつらかった。いままで何回も死のうとおもった」という小学生の手記も報道された(朝日新聞2016年11月16日付)。いじめは自主避難者にも強制避難者にも県内在住者にもある。こうしたいじめは福島に対する偏見や差別と表裏一体のものである。悲しい不幸な歴史を繰り返してはならない・・・
推奨されない検診
朝日新聞ウエッブ「論座」に、緑川早苗・宮城学院女子大学教授/POFF(ぽーぽいフレンズふくしま)共同代表の「現在の福島では甲状腺検査を継続することは正当化されない 見直しを行わない「不作為」がもたらすもの」が載っています(3月8日掲載)。
詳しくは原文を読んでいただくとして。
・・・甲状腺がんの超音波を用いた検診に対する世界の認識は、検査開始後に出されたものではあるが、2017年のUSPSTF(米国予防専門委員会)による「症状のない成人に対して超音波による甲状腺がんスクリーニングは行わないことが推奨される」という勧告に代表される。さらにそれは2018年には世界保健機関(WHO)の外部組織IARC(国際がん研究機関)から、原発事故後であっても推奨しないとする提言が出された・・・
・・・超音波を用いた甲状腺がんスクリーニングが推奨されない理由は過剰診断による不利益(害)が非常に大きいからである。それは現在では世界の科学者の間では共通認識であろう。過剰診断とは、一生症状は出ず、命にもかかわらない病気を検診によって診断してしまうことである。後述するが、がんはその種類によっては早期発見早期治療が必ずしも患者のメリットにつながらないことが分かっており、甲状腺がんは、そうしたがんの代表である。
にもかかわらず、福島では甲状腺検査という子どもや若年者を対象にした超音波による甲状腺がん検診が継続されている。しかも多くの住民はいまだ過剰診断の不利益を知らずに検査を受けている。平均して毎日、数百人の検査が行われており、一定の確率で甲状腺がんが発見され、それらは放射線の影響とは考えにくく、かなりの過剰診断が含まれることが報告されている。
なぜ推奨されない検査が、福島で継続されているのだろうか? 一度始めた検査が変えられないのはなぜか、震災後甲状腺検査の担当者として携わった一人の内分泌内科医としての反省から、また現場からの改善の提案が様々な「不作為」の壁に阻まれた経験から、本稿ではその「不作為」に焦点をあてて考えてみる。甲状腺検査の課題の全体像を詳しく知りたい方は、拙著「みちしるべ」ご覧いただければ幸いである・・・