カテゴリーアーカイブ:社会

閉鎖的な学校を変える

2021年5月25日   岡本全勝

5月18日の朝日新聞オピニオン欄「学校と親との距離」
・・・学校と保護者の関係が揺れている。保護者がPTA活動の負担を訴える一方、長時間労働で疲弊する学校では保護者の声に対応する余裕が奪われている。どうすればいいのか・・・

西郷孝彦・東京都世田谷区立桜丘中学前校長の発言「閉鎖性を変えるのは校長」から。
・・・いまの学校の多くには、閉鎖的な風土があります。悪い評判を立てられたくない。生徒の問題行動を見られたくない。その内向きさが保護者との距離を遠ざけています。
新しい挑戦をしようとすると「みんなと違うことをするな」と、教育委員会や近隣の学校、ときには保護者から問われ、責められる。結局は前例を踏襲し、右にならい、情報も出さないことが正解になってしまう。ただでさえ仕事量が多いなかで保護者への対応が負担になれば、精神的に追い詰められてしまいます。
そうした教員を取りまく環境の問題が根幹にはありますが、私は、まず校長が自ら保護者と接することで閉鎖性を和らげられると思います。私は直接会う機会をつくり、メールアドレスも保護者に公開しました。情報を共有しあえる関係づくりが大切です・・・

奥井智之著『宗教社会学』

2021年5月24日   岡本全勝

奥井智之著『宗教社会学  神、それは社会である』(2021年、東京大学出版会)を紹介します。
目次を見てもらうとわかるように、信仰、教団、儀礼といった、宗教になじみのある項目のほかに、経済、学問、芸術、スポーツ、性別といった、なじみの薄い項目が並んでいます。この本は、宗教学ではなく、宗教を素材にした「社会学」です。宗教を分析するのではなく、宗教を使って社会を分析するのです。

宗教は、近代社会では非合理的なものとして、影響力が低下しました。他方で、私たちの生活や社会がすべて合理的に説明できるものでもなく、説明されても納得できないこともあります。そこに、人は、神あるいは人知を越えたものを信じます。
現在の学問では、人と人のつながりを、政治(権力的関係)、経済(取引による関係)、互恵(助け合い、コミュニティ)の3つで説明します。宗教という「非合理的な関係」は、この3つの外です。しかし、芸術、スポーツなども、3つでは説明できません。
この本は、先に挙げたさまざまな項目で、私たちの生活に神が残っていることを説明します。

社会、私たちの生活の多様な面を、宗教を鍵に説明します。読んでいて途中から、「次の項目(例えばスポーツ)について、著者は、どのように議論を展開するか」を想像しながら読みました。読んで納得しつつ、「私なら、このように書くなあ」とも考えました。
「わからないことは、学問の対象としない」ことになっている現在の学問の世界で、著者の試みは、どこまで理解されるでしょうか。
読みやすく、わかりやすいです。社会学入門書にも、なっています。他方で、先生の実体験も織り込まれていて、話が身近になり、理解しやすいです。お勧めです。

インターネットとの付き合い方

2021年5月22日   岡本全勝

5月14日の朝日新聞オピニオン欄、ドミニク・チェン早稲田大学准教授の「わかりあえなさと共に」から。
――コロナ禍で人に会う機会が減り、ネットに1人で向きあう時間が増えました。コミュニケーションの研究者として、この1年あまり、なにを感じてきましたか。
「大学の現場では試行錯誤が続くなか、講義を映像でいつでも見返せるようになるなど、合理的な変化も起きました。オンラインでも、学生たちと一緒に学んだり、現状に対して批評的に考えたりすることはできると感じています」
「ただ、会って話すときのコミュニケーションの豊かさは、簡単には置き換えられません。人は本筋とは関係ないノイズ、つまり雑音のような情報の海の中を漂いながら、コミュニケーションを成立させるための信号を発したり受け取ったりしています。しぐさ、表情、あいづち……。この研究室の書棚の本の背表紙や置物、窓の外の風景も、理解を深める大事な情報です」
「それが、オンラインでは顔と声を除く膨大な量の情報がそぎ落とされてしまう。相手が置かれている環境や言葉の裏の感情を読み取ることは難しい。自分の話し方も、つたなくなっていく」

――グーグルやアップル、フェイスブックなど「GAFA」と呼ばれる巨大IT産業が、こうした情報を差配しているとして、批判も強まっています。
「米国の西海岸に特有の、技術が進化すれば人類の悩みは解決するという、テクノロジー信仰と自由放任的な資本主義があいまって、フィルターバブルやSNS上の分断を加速させた、ということは言えるでしょう」
「収益を最大限にするため、利用者の自社アプリに対する中毒状態をいかにつくるか――。米国から中国まで数学や心理学の博士号を持つ世界の天才たちが、そんな仕事をしている。スマホのアプリは、利用者の特定の情報に対する飢餓感を誘発するように設計されている。反倫理ではないが、非倫理。悪意はないが、倫理の要素が抜け落ちていた。選挙の操作や若者たちへの精神的な影響などが指摘され、規制や再考を促す議論が始まっているところです」

――著書「未来をつくる言葉」を書くきっかけにもなった娘さんは9歳。デジタルとはどう付き合っていますか。
「注意を収奪されるものは使わせないようにしています。たとえば、ユーチューブは自動再生機能があるので、自分で選択したのではない情報に満足する状態に慣れてしまう。大人も中毒になりかねないものを無自覚に子どもに与えるのは、危険だと思います」
「ネット中毒とは、自らの意思とは関係なく時間を奪われてしまうことです。リテラシー(見極める力)を高めるためには、日本でも広くプログラミングを教育に取り込むべきです。そうすれば、子どもはプログラムの設定を少し変えるだけで情報の出方が違うことを体感できる。自分が企業の設計しだいで操作されてしまう世界で暮らしていることもわかります」

日本企業の国際化、タケダ薬品

2021年5月18日   岡本全勝

5月13日の日経新聞「多様人材探るONEタケダ 経営陣7割が外国人、摩擦も成長の糧に」が、武田薬品工業の国際化について分析しています。

社長が外国人、経営陣19人のうち日本人は5人です。海外企業を買収し、海外売上比率は8割、4万7千人の従業員の9割が海外にいます。
本社は東京日本橋にありますが、アメリカの拠点に情報とともに経営の主導権が集まりつつあるようです。

生え抜きから幹部まで上り詰める社員は少なく、経営陣で新卒から武田に勤務する日本人は3人だそうです。幹部クラスの入れ替わりも激しく、上司が替わると方針が変わることもあって、戸惑う社員もいるようです。
しかし、このような摩擦が生まれても、グローバル化は止めません。そうしないと、世界で生き残れないからです。

買って捨てる、ごみ事情

2021年5月12日   岡本全勝

杉並区の広報誌4月15日号「特集 すぎなみビト 芸人・ごみ清掃員 滝沢秀一」から。
・・・目標はただ一つ。日本のごみ削減! お笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一さんは芸人として活躍する一方で、9年前から民間のごみ清掃会社で仕事を始めました。収集現場の日常を発信したSNSが話題となり、現在は芸人と清掃員、二つの仕事をしながら、執筆や講演を通してごみについて考える大切さを伝えています。今号ではごみ清掃の仕事とごみの削減にかける思いをお聞きしました・・・

─ ほかにもごみ清掃員を始めて驚いたことはありますか?
なぜこんなものが出るのだろう? と驚くような、謎めいたごみはたくさんあります。
例えばバナナの皮はなくて中身だけとか、同じものだけが45ℓのごみ袋いっぱいに詰め込まれているとか。刃がむき出しの包丁がごみ袋に入っていたり、みそ汁がそのままごみ袋に捨てられていたりすることもあります。
水分は結構厄介で、ごみは圧縮しながら清掃車に収めるので飛び散るんですよね。僕らはこれを「ごみ汁」と呼ぶのですが、浴びると本当に臭いがとれません。また、水分は焼却時に余計なエネルギーを使うのでコストが増します。もちろんそのコストは税金から賄われます。
こういったことはあまり知られていないのではないでしょうか。生ごみは水分を多く含んでいるため、一回でもぎゅっと絞って出すことをおすすめします。

─ コロナ禍でごみそのものにも変化はありましたか?
家で過ごす時間が増えたことが影響しているのでしょう、とにかく収集してもしきれないほどごみの量が増えました。大掃除や模様替えをする人も多いようで、洋服や100円均一で買えるような収納用品が大量に出ている印象です。安く買った分、捨てることがあまり惜しくないのかもしれません。ご
みと日々向き合っていると、「安く買ってすぐに捨てる」というサイクルが私たちの社会では当たり前になっているのかな? という気がします。