カテゴリーアーカイブ:私の読んだ本

本を増やさない

2021年7月12日   岡本全勝

「本が増えて困っています」と、何度かこのホームページに書きました。これも、このホームページ定番のぼやきです。進歩がないですね。というか、本を貯める人の多くは、それを楽しんでいます。

現役時代は、「公務員を退職したら、読まないであろう本を整理しよう」と思っていたのですが。なかなかその気になりません。
最近は、読んだ本で二度と読まないであろう本、本棚を見てもう読まないであろう本を、知人に持って行って処分してもらっています。持ち込まれた方は、迷惑でしょうが。自分では捨てられないので、その人に処分を委託しているようなものです。古本屋に持って行けばよいと思うのですが。

最近、心を入れ替えました。このままでは、状況は改善しません。
まずは、新しく増やさないことです。ということで、本屋に行く回数を減らしました。次に、本屋に行っても、ほしいと思った本を買わない。これはつらいことです。本に手を出した岡本全勝Aの後ろから、岡本全勝Bが「これを買って、すぐに読むか?」と質問するのです。

新しく買わない代わりに、積んである本の山から、読む本を発掘しています。それぞれに興味を持ったから買ったので、思い入れはあります。もっとも、「こんな本も買ったんだ」と疑問に思う本もあります。同じ本が2冊出てきたり、同じような本が出てくると、落ち込みます。

キョーコさんが、しょっちゅう部屋の中を掃除してくれます。本の山の間にほこりが溜まっているとのことで、山を動かして掃除してくれます。その際に、山が崩れたりして、背表紙が見えなかった本が発見されるのです。布団に入る前に、それらの中から気分に合った本を選んで読んでいます。
残念ながら、この程度の努力では、本の山は減りません。

映画「ブックセラーズ」

2021年5月15日   岡本全勝

映画「ブックセラーズ」を見てきました。アメリカ・ニューヨークを中心とした、古本業界と古書収集家の話です。(ウィキペディア宣伝動画
知らない世界を見ることは、楽しいですね。扱っている古書は稀覯本なので、単なる本好きの私とは違う世界ですが。本好きの方には、お勧めです。

ずらりと並んだ革張りの古書、いかにも古そうな本。よくここまで集めたなあという、書棚や書庫。この後、それらの本をどのように片付けるのか、心配になります。それについての、本人たちの言及もあります。
一風変わった人たち(失礼)が、たくさん登場します。世の中には、本好きがたくさんいます。
アメリカでも、本離れ、インターネットによる販売、電子書籍の普及が、古書店の経営を脅かしています。ニューヨークでも、たくさんの本屋が廃業しています。高年齢の関係者は先行きに悲観的ですが、若い人は楽観的です。期待したいです。

私は映画は見ないのですが、新聞の紹介で、面白そうなので行きました。東京はコロナ対策で連休中は映画館が閉館し、再開したので見ることができました。

本を読む人と読まない人の分化

2020年12月23日   岡本全勝

12月12日の朝日新聞オピニオン欄「読書離れと言うけれど」、井上慎平さん(NewsPicksパブリッシング編集長)の発言から。

・・・いま30~40代のビジネスパーソンでは、「本を読む人」と「読まない人」との分化が進んでいます。ビジネス競争の激しさのなかで、「論理的思考」を少し学んだところで出世なんてできないし、そもそも変化が早すぎて何が正解か分からない。シンプルなスキルを扱ったビジネス本は売れづらくなったと感じます。
象徴的なのは、外資系金融のトレーダー。国際政治に精通している方も多かったのですが、コンピューターによる自動的な取引が主流になると実務の上で教養の重要性が下がった。経済的なステータスと教養的なステータスが乖離してしまったと感じます。

かつては、無条件に「教養はいいものだ」という思想がありました。立派なビジネスパーソンなら古代中国の歴史ぐらい知っていないと恥ずかしい、という空気感です。それが「何の役にも立たないものを読むのは、むしろ頭が悪い」というような、実用主義ともいえる風潮に変わった。
勝間和代さんの「年収10倍アップ勉強法」がヒットした十数年前が実用主義ブームのピークだったでしょうか。ただ、スキルを磨く努力をすればキャリアアップできる「希望ある時代」の終焉と共に、ブームも落ち着きました。

そして、いま。読む人と読まない人の分化が進む中、例えばユヴァル・ノア・ハラリ氏の「サピエンス全史」といった骨太な書籍は好調です。未来が見えなくなるほど大局観を求め、歴史や人文知へのニーズが高まる。読者は断定的な正解を求めるより「どんな経済や社会が良いのか」という価値観のレベルまで踏み込んで考え始めています・・・

内海健くん、大佛次郎賞受賞

2020年12月15日   岡本全勝

12月15日の朝日新聞が、内海健著『金閣を焼かなければならぬ 林養賢と三島由紀夫』(河出書房新社)が第47回大佛次郎賞に決まったことを、大きく伝えていました。この本は、このホームページでも紹介しました。うれしいですね、友人が大きな賞をもらうのは。

・・・数学の得意な理系少年だった。高校時代は奈良市に暮らしたが、入学してほどなく生徒会が職員室を占拠、ストに入ったという。まだ政治の季節だった。三島が楯(たて)の会を率いて陸上自衛隊の市ケ谷駐屯地に立てこもったのは、その年の11月である。「時代錯誤的だという感覚は持ったと思いますが、馬鹿げたことだという風に受け取ることはできませんでした」・・・

そうなんです。奈良女子大学附属高校は、そんなところでした。内海くんはバレーボール部、私はサッカー部と生徒会活動でした。彼は医者なので、時々わからないことがあると聞きますが、まだ彼の患者にはなったことがありません。

池内紀さんの本の世界

2020年11月7日   岡本全勝

朝日新聞ウエッブサイト「論座」に、松本裕喜さんの「「歩き」「読み」「書いた」人――池内紀さんの本の世界」(10月12日配信)が載っていました。読み応えがあります。読書家には、お勧めです。
私も池内さんの愛好家の一人です。もっとも、そんなにたくさん読んだわけではありませんが。このホームページでは、『消えた国 追われた人々―東プロシアの旅』や『ヒトラーの時代 ドイツ国民はなぜ独裁者に熱狂したのか』を紹介しました。
ドイツを中心とした紀行文も、いろいろと読みました。先の2冊は内容の重い本ですが、紀行は寝ながら気楽に読める本です。先生の軽妙な文体と、最後にオチがある文章は、私は好きです。まだ、これから先に読もうと、いくつか本棚に取ってあります。

松本さんの記事に触発されて、『ゲーテさんこんばんは』と『カント先生の散歩』を買って読みました。出版されたときに、本屋で手に取ったのですが、興味がわかなくて、買いませんでした。
「池内さんは、「書きながら何度となく呟いた――こんなに楽しく、おかしな人が、どうして文豪ゲーテなどと、重々しいだけの人物にされてしまったのだろう?」(あとがき)という」「好奇心旺盛で、話好き、人間的魅力に富んだ人としてカントを描く。カントは東プロシアのケーニヒスベルクで生まれ、一生そこに住んだ。主著『純粋理性批判』はイギリス商人グリーンとの対話を通じて生まれたという。この貿易商の客間で、「思索が大好きな二人が、形而上的言葉をチェスの駒のように配置して知的ゲームに熱中した」。おおかたの哲学書はそのようにして生まれたと池内さんは指摘する」

ゲーテもカントも取っつきにくい人だと思っていましたが、その人間性がよくわかりました。ファウストは学生時代に読んだのですが、あらすじを追うのが精一杯でした。余裕ができたら、池内訳で挑戦しましょう。