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地方行財政
三位一体改革の基本解説2
三位一体改革の基本解説
三位一体改革までの地方財政改革(平成14年春以前)については、拙著「地方財政改革論議」をご覧ください。
また、「三位一体改革についての座談会」神野直彦東大教授や柏木孝大阪市財政局長らとの座談会(月刊『地方財務』(ぎょうせい)2003年7・8月合併号や、「第11回地方財政学会の基調講演と概要」月刊『地方財務』(ぎょうせい)2003年9月号もあります。
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三位一体改革・交付税改革へ1 三位一体改革って何(概要)
①国庫補助負担金の廃止削減(→詳しくは基本解説2)
②国から地方への税源移譲(→詳しくは基本解説4)
③地方交付税の見直し(主に総額削減)
の3つの改革を一緒に行うことから、「三位一体の改革」と呼ばれています。
平成14年6月「骨太の方針2002」でこの方針が決められ、名前が付けられました(キリスト教の教義とは、関係ありません。念のため)。
2 何のためにやるの(目的)
2つの目的があります。
1つは、「地方分権」のためです。①と②がこれに当たります。
もう1つは、「財政再建」のためです。③がこれに当たります。
この2つは、まったく違う目的です(①と②はセットですが)。
それを政治的に、「三位一体改革」と名付けたのです。目的の違う2つを一緒にやろうとしているので、わかりにくいです。
3 なぜ一緒にやるの(意図)
3つの改革がそれぞれに難しく、進みにくいので、「この際一緒にやってしまおう」という、政治的意図からです。
①は、各省とそれを応援する国会議員が反対します。また、財務省も積極的ではありません。権限が縮小する、仕事がなくなる(失業する)からです。
②は、財務省が反対します。国税が減るのですから。
③は、地方団体が反対します。総務省も、「理屈のない削減」には反対です。
それぞれ反対が強く、「三すくみ」と言う人もいます。そこで、一緒にやることで「三方一両損」を狙っている、ともいえます。
4 どうしてなかなか進まないの(困難さ)
3に書いたように、それぞれに(特に①②に)抵抗が強いからです。国庫補助金は、官僚の重要な権力の源泉、中央集権の手段であるといわれています。また、補助金がなくなると、多くの官僚が「失業」します。関係する国会議員も、「口利き」「補助金の地元への誘導」がなくなり、「寂しくなる」といわれています。
補助金を廃止し中央集権をやめることは、これまでの「日本の政治構造」を転換することなのです。
そして、官僚と国会議員は、現在の日本の「政治決定権」を握っています。その人たちにこのような改革を求めることが、無理な話ともいえます。「補助金廃止・税源移譲」は、本来、政権交代がなければできないほどのことなのです。
5 なぜ少しずつ進んでいるの(進展している理由)
(1)時代の要請
1つには、時代の要請があります。中央集権システムは、日本が発展途上にあるときには、効率的でした。しかし先進国になり、社会が成熟したときには、相応しくないシステムです。国民の多くが、地方分権が必要であると考えています。マスコミや論壇の主張も、分権を後押ししてくれます。
(2)小泉内閣
小泉総理は、「自民党をぶっこわせ」をスローガンにしておられます。そして、三位一体改革は、内閣の重要テーマになりました。16年秋に、これがもっとも大きな政治争点になり、連日新聞をにぎわしたことは、みなさん覚えておられるでしょう。
また、総理と麻生総務大臣が、補助金配分に深く関与した政治家なら、補助金廃止には手をつけられなかったと思います。さらに、麻生大臣という実力者が、担当大臣であることも大きいでしょう。
(3)仕掛けと場
しかし、総理のかけ声だけでは改革は、進みません。官僚がサボタージュするからです。進めるためには、それなりの「仕掛け」が必要です。
①諮問会議
まず、経済財政諮問会議という「場」が、重要です。ここが、改革の司令塔になります。そしてこの会議は、会議概要が公表されます。政治家は責任ある発言をしなければなりませんし、うやむやにすることもできません。
②目標の閣議決定
次に、三位一体改革は、「目標を決めること」によって、進んでいます。それも、「尺取り虫」のようにして、進んでいます。
方針を決めたのが、平成14年6月「骨太の方針2002」です。しかし、それではほとんど進まなかったので、翌年「骨太の方針2003」では、補助金廃止目標金額4兆円と期間(平成18年度まで)を決めました。
それでも16年度予算では、総理の指示がないと、1兆円の補助金改革も困難でした。そして、税源移譲は4千億円だけでした。そこで、「骨太の方針2004」では、税源移譲目標金額3兆円を決めました。
③地方団体に案を作ってもらう
さらに、ここでの重要な仕掛けは、「地方団体に補助金廃止案を考えてもらうこと」でした。
こうして、1つ仕掛けをしては少し進み、そして進まないことが見え、また次の仕掛けをして・・、と進めてきたのです
年表は「地方財政改革の経緯」「三位一体改革の経緯(簡略版)」
目標と達成の表は「三位一体改革の目標と実績」
これまでの動きと評価は「進む三位一体改革ーその評価と課題」
地方団体の主張などは三位一体改革推進ネット
新聞記事などはヤフーニュース三位一体改革、財政学のアンテナを利用ください。
地方行財政刊行物案内
誌名 | 編集・刊行等 | 発行頻度 |
「ガバナンス」 | ぎょうせい | 毎月一回1日発行 |
「市政」 | 全国市長会 | 毎月一回1日発行 |
「自治研究」 | 第一法規 | 毎月一回10日発行 |
「自治総研」 | 地方自治総合研究所 | 毎月一回発行 |
「住民行政の窓」 | 日本加除出版 | 毎月一回5日発行 |
「住民と自治」 | 自治体問題研究所 | 毎月一回1日発行 |
「地域政策研究」 | 財団法人地方自治研究機構 | 毎月一回1日発行 |
「地方議会人」 | 中央文化社 | 毎月一回1日発行 |
「地方行政」 | 時事通信社 | 毎週二回月曜日、木曜日発行 |
「地方自治」 | 地方自治制度研究会編・ぎょうせい刊 | 毎月一回5日発行 |
「地方自治情報」 | 財団法人地方行政総合研究センター | 毎月一回発行 |
「町村週報」 | 全国町村会 | 毎週月曜日発行 |
「都道府県展望」 | 全国知事会財団法人都道府県会館 | 毎月一回発行 |
「日経グローカル」 | 日経産業消費研究所 | 毎月二回第1、第3月曜日発行 |
「日本行政」 | 日本行政書士会連合会 | 毎月一回25日発行 |
「LASDEC」 | 財団法人地方自治情報センター | 毎月一回1日発行 |
誌名 | 編集・刊行等 | 発行頻度 |
「公営企業」 | 財団法人地方財務協会 | 毎月一回20日発行 |
「税」 | ぎょうせい | 毎月一回1日発行 |
「税経通信」 | 税務経理協会 | 毎月一回1日発行 |
「税研」 | 財団法人日本税務研究センター | 毎月一回20日発行 |
「税務弘報」 | 中央経済社 | 毎月一回1日発行 |
「税理」 | ぎょうせい | 毎月一回1日発行 |
「租税研究」 | 社団法人日本租税研究協会 | 毎月一回10日発行 |
「地方行財政旬報」 | 財団法人地方財務協会 | 毎月二回第1、第3水曜日発行 |
「地方債月報」 | 地方債協会 | 毎月一回15日発行 |
「地方財政」 | 財団法人地方財務協会 | 毎月一回1日発行 |
「地方財務」 | ぎょうせい | 毎月一回5日発行 |
「地方税」 | 財団法人地方財務協会 | 毎月一回1日発行 |
誌名 | 編集・刊行等 | 発行頻度 |
「コミュニティ」 | 地域社会研究所 | 毎月一回15日発行 |
「自治体国際化フォーラム」 | 自治体国際化協会 | 毎月一回15日発行 |
「地域開発」 | 日本地域開発センター | 毎月一回発行 |
「地域創造」 | 財団法人地域創造 | 毎年二回発行 |
「地域づくり」 | 財団法人地域活性化センター | 毎月一回1日発行 |
「FURUSATOVitalization」 | 財団法人地域総合整備財団(ふるさと財団) | 毎月一回1日発行 |
誌名 | 編集・刊行等 | 発行頻度 |
「アカデミア」 | 市町村アカデミー | 毎月一回1日発行 |
「国際文化研修」 | 全国市町村国際文化研修所 | 毎月一回15日発行 |
「自治実務セミナー」 | 第一法規 | 毎月一回10日発行 |
「自治フォーラム」 | 自治研修協会 | 毎月一回10日発行 |
「地方自治職員研修」 | 公職研 | 毎月一回15日発行 |
誌名 | 編集・刊行等 | 発行頻度 |
「災害補償」 | 地方公務員災害補償基金 | 毎月一回10日発行 |
「選挙」 | 都道府県選挙管理委員会連合会 | 毎月一回1日発行 |
「選挙時報」 | 全国市区選挙管理委員会連合会 | 毎月一回25日発行 |
「全国自治体病院協議会雑誌」 | 全国自治体病院協議会 | 毎月一回1日発行 |
「総務省」 | 総務省 | 毎月一回1日発行 |
「地方公務員時報」 | 総務省自治行政局公務員課 | 毎月一回10日発行 |
「デルクイ(富山県職員政策情報誌)」 | 富山県総合政策課 | 季刊 |
「都市問題」 | 東京市政調査会 | 毎月一回1日発行 |
「都市とガバナンス」 | 日本都市センター | 毎年一回発行 |
「都市問題研究」 | 都市問題研究会 | 毎月一回20日発行 |
「判例地方自治」 | ぎょうせい | 毎月一回1日発行 |
「Local Government Review inJapan」 | Japan Center for Local Autonomy(財団法人自治総合センター) |
地方財政制度を統治の観点から考える
小西砂千夫先生が『統治と自治の政治経済学』(2014年、関西学院大学出版会)を出版されました。
・・筆者はこれまで、地方財政や地方自治の研究を行うなかで、制度を設計し、運営する側の立場にたって目の前の事実を補足しようと心掛けてきた。毎年度、地方財政に関する予算折衝が、旧自治省と旧大蔵省との間で展開されるが、それは戦争にも例えることができる・・そこにみえてくるのは、予算折衝におけるパワーバランスである。旧大蔵省と旧自治省だけがプレーヤーではない。官邸、閣僚、与党、野党、地方6団体などの様々なプレーヤーが登場する・・
・・財政学研究は官房学を起源とする伝統的な財政学に、近代経済学のめざましい発展の要素を取り入れることによって、学問的なコンテンツを充実させてきた。それ自体は、けっして悪いことではない。しかし、財政学が対象とする政策課題がそれですべて解けるわけではない。ましてや、財政学は応用経済学の一分野などではない。公共経済学の発展は喜ぶべきことだが、それが財政学に代わって。財政問題をアプローチする学問となることはできない・・(序章)
地方財政制度や毎年度の地方財政対策は、経済的機能とともに、政策意図や政治によって決まるという要素を持っています。
私はかつて『地方交付税・仕組と機能』(1995年、大蔵省印刷局)を書いた時に、仕組みの解説とともにそれが果たしてきた機能についても解説しました。その後、さらに視野を広げて、「財政調整制度の機能と思想」を書こうと考えていました。「今後書こうと思っている論文」に「地方交付税制度がどのような思想に支えられて、50年機能したか。また変化してきたかを、大きな観点から考えてみたいと思っています」と書いたのですが。
しかし、その後、交付税の仕事から離れたことと私の関心が他に移ったので、とうとう書くことができませんでした(それどころか、『地方交付税』の改訂もしないまま、もう20年も経ちました。すみません。後輩に期待します)。私の意図とは必ずしも一致しませんが、小西先生の著作は重なるところが多いです。
制度にあっては、制度設計者の意図と、それが果たしてきた機能が重要です。『新地方自治入門』では、地方交付税制度が戦後の日本の発展(地域のナショナルミニマム整備)に大きな貢献をし、日本社会を安定させたことを書きました。
官僚が、制度や法律の解説を書くことがあります。私は、それに携わった官僚の務めだと思っています。その際に、仕組みの解説だけでなく、どのような意図で作ったか、また一定期間後には、どのような成果を上げたかどのような機能を果たしたかも、書くべきだと思っています。そうでないと、価値がないですよね。