三位一体改革の基本解説2

【第2部:国庫補助金の廃止】
1 国庫補助負担金をなぜ廃止するの
(国庫補助金とは)
国庫補助金は、地方団体が仕事する際に、国(各省)が援助してくれるお金です。例えば、公立小学校の先生の給与の約半分は、文部科学省が県に支援してくれます。公立小学校の先生の給料は、県が払っているので、県は残りを自分の税金で賄います。県や市町村が、道路を作るとき、介護保健サービスをする時もです。大抵は、費用の半分を国が出してくれます。
このうち、法律で「国が負担する」と書いてあるのが国庫負担金です。国庫負担金は、国にも責任があるので「割り勘にします」というものです。一方、国庫補助金(狭義)は、国が地方団体への「呼び水」として出すものです。たいてい、二つまとめて「国庫補助金」と呼びます。
国が補助金を出さない事業もたくさんあります。公立高校の費用、多くの道路建設事業、国の基準を超えて小学校の先生を雇う場合、役場の事務費などです。国庫補助金をもらう事業を「補助事業」と、もらわずに行う事業を「単独事業」と言います。
(効果)
国庫補助金があったので、日本中に40人学級の義務教育が行き渡りました。介護保険もでき、道路も立派になりました。明治維新以来140年、戦後半世紀で、世界トップ水準の行政サービスを、全国同じ水準で整備できたのも、国庫補助金のおかげです。
国庫補助金制度の利点は、次のようなものです。
①地方団体は、お金が半分あればできる。
②日本中に、国が考えている同じサービスを行き渡らせることができる。
③地方団体は、何をどうつくるか悩まなくても良い。
(弊害)
しかし、「全国で同じものを」という目標をほぼ達成したことで、国庫補助制度の弊害がでてきました。それは、上に書いた利点の裏返しです。
①無駄な事業も行われる。
例えば、ある村が道路を作ろうとします。交通量も多くないので細い道路なら、6千万円でできるとしましょう。しかし、国庫補助事業なら、幅の広い道路が1億円でできるとします。普通なら、6千万円の道路を作るでしょう。でも、補助事業の方は、自前の負担は5千万円で済みます。「じゃあ、立派な道路を作った方が得だ」となってしまいます。
②同じサービスということは、「画一的」ということです。
上に述べたように、その町にあった仕事ができないのです。学校でも、難しいクラスは先生を増やすといったことも、できません。
③地方は自立しない。
国の言うことを聞いていると、地方は自分で考えません。何かあると、「国に頼んでみましょう」、「補助金がつかないので、できません」となります。
④時間と金のムダ。
国庫補助事業は、一つ一つ国(各省)に、お伺いを立て、許可を得て、仕事をします。また終了後は、国の検査があります。そのために、補助金を申請する地方団体も、許可をする省も、膨大な人と手間をかけています。
⑤国にはもっと重要な仕事がある。
国の各省には、もっと他に、しなければならない仕事があります。国際社会でどう付き合いをするのか、どのように貢献をするのか。学力の低下をどうするか、年金は破綻しないかとか。国のあり方を考えなければなりません。××村の道路や、○○町の教員の配置は、県や市町村に任せればいいのです。
(解決策)
国庫補助金を廃止して、それに見合うだけのお金を地方団体に渡して、自由にやってもらえばいいのです。すると、地方団体は住民の意見を聞いて、必要だと思うところにお金を使うでしょう。立派な道路を作る代わりに、細い道路で辛抱する。またそのお金を、教育に使うとか。