カテゴリーアーカイブ:行政

官僚の象徴、スリッパで仕事

2013年8月24日   岡本全勝

8月23日の日経新聞連載「迫真、取引所大競争。スリッパ禁止令」から。
・・「官僚よりも官僚的だ」。東証の職員はこれまで、霞が関の役人からも、こう冷やかされてきた。国内では断トツの市場である東証は、黙っていても企業や投資家が集まる殿様商売の時代が長かった。市場の運営という公的な役割を担うこともあり、お役所体質が染みついた。その象徴が、職場でスリッパを履いて働く人の多さだった。自ら外には出ない、待ちの姿勢だ・・
う~ん。スリッパが官僚の象徴ですか。世間では、そう思われているのですね。これについては、『明るい係長講座』でも、挿絵入りで批判しました。
また、待ちの姿勢については、新入生の時に、先輩から「お客さんが来ているうちは、商売ではない。客が来なくなってからどうするか。それが商売や」と言われたことを、思い出しました。その頃は、民間の商店のことを思い浮かべましたが、役所にも拡大できますね。

階段で荷物運びを助ける

2013年8月20日   岡本全勝

朝日新聞8月19日夕刊に、「ベビーカーおろすんジャー現る」という記事が載っていました。
東京の地下鉄丸ノ内線の方南町駅(我が家の近くです)に、戦隊ヒーローの格好をした男性が現れ、ベビーカーを抱えて、階段を下ろすのを手伝ってくれるのです。
エレベーターやエスカレーターのない駅で、ベビーカーや荷物を持った人が困っていることが多いです。このヒーローは、顔を見られるのが恥ずかしいので、ヒーローの仮面をかぶっています。最初は、不審がられたそうです。
かつてこのホームページでも紹介しましたが、日本は荷物を持った弱い人に対し、冷たいようです。私は、最近は恥ずかしくなくなったので、見かけたときにはお手伝いしています。もっとも、それくらいでは、我が子の子育てを手伝わなかった(そもそも、手伝いという表現が、間違っています。正確には、責任を果たさなかった)罪は償えません。「今日のささやかな善行」(2010年12月18日)、「読者からの反応」(2010年12月6日)。

政府と国会の関係

2013年8月18日   岡本全勝

日経新聞経済教室7月30日、野中尚人・学習院大学教授の「国会至上主義、政府を阻害。ねじれ解消後も深刻、決める仕組みが曖昧」から。
・・私は、欧州の主要国と比較した場合、日本の国会はいわば「3周遅れ」の状態にあると考えている。1周目は二院間の関係の未整備で、ねじれの問題でもあるが、参議院での問責決議の扱い、全く機能しない両院協議会など、とにかく、おかしなことだらけである。参議院が「熟慮の府」というのは全くの誤認で、政府・衆議院多数派の意思決定や行動をストップさせる権能を持っていることについて、制度としての根本的な再検討が不可欠である。
2周目の問題は、国会と政府との関係が極端なアンバランスになっていることだ。日本では、国権の最高機関たる国会の自律性は何物にも侵されるべきではないとされている。戦前の反動といってよい。しかしその結果、国会の内部における政府の地位や権限は極端なまでに排除されているのである。
議院内閣制においては、主要な法案の大多数は内閣が提出し、議会内部のプロセスで与党との一定の調整・修正を行いながら立法を進めるのが普通である。そしてその過程では、法案審議の日程設定、修正の扱い、議決の方式などについて政府がはっきりと主導権を握る形となっている。英国とフランスが典型だが、ドイツでも多数派に一定の主導権が確保されており、結果として、政府の推進する法案が優先的に審議され、大半が一定の時間の中で成立する。
ところが日本では、政府には何の権限もなく、従って何もコントロールできない。与野党間の国対政治と与党による法案事前審査は、そのために不可欠になっていたのである。しかも、その国対政治の基本ルールは与野党間での合意であり、野党は相当な影響力を行使できる。首相をはじめ閣僚が極めて頻繁かつ長時間にわたって国会審議に拘束されることは、実は他の先進国には見られない日本政治の特徴だが、これはこうした制度と力学の産物なのである。こうした「国会の暴走」は即刻やめねばならない。
3周目の問題は、国会内部の形骸化であり、合理化や多機能化といった取り組みが極端に遅れていることである。欧州の主要国では、審議日程の年間計画・月間計画をはじめとした、緻密なスケジュール化、審議時間配分や優先順位決定の合理化、予算・決算プロセスへの実効性のある取り組みの強化、政府監視や調査のための仕組みの充実など、様々な改革が進んでいる。限られた時間の中で審議の充実と多機能化が真剣に進められていると言ってよい。
翻って日本の国会は、依然として会期不継続の原則(審議未了の議案は原則として廃案になる)と審議拒否戦術を背景とした日程闘争の国対政治に明け暮れている。そして、審議の形骸化と討論の希薄化がますます進んでいる。例えば、2012年には衆院本会議の開催時間は合計60時間で、およそ1100時間の英国やフランスと比べて何と約18分の1である。確かに国会議員は超多忙であるが、本務である国会での仕事の土俵を合理化し、機能を強化する努力はほとんどされて来なかったというべきであろう・・
つまり、ねじれが解消されてもなお、日本の統治システムは多くの深刻な課題を抱えたままである。まともに機能しない形骸化した国会が、政府の正常な作動を阻害し、政治行政を麻痺させかねない構図が続いている。いわば「ゆがんだ国会至上主義」が依然として重大な重しとして残っているのである・・

議会と政府の関係について、憲法や政治学の教科書では、定められた制度についての解説や諸外国との比較はありますが、運営の実際にまで踏み込んだ分析は少ないようです。機能の実態を分析するためには、「仕組み」と「運営の実態」の両方が必要です。そして、先進国との比較は、有用です。
他方で、なぜ「決められない国会」が続いていたか。それで、なぜ支障がなかったか。日本が成長と平等を謳歌していた時代、そして「一国繁栄主義」で内にこもっていた時代には、これでもよかったのでしょう。

中国、地方自治体の借り入れ

2013年8月15日   岡本全勝

朝日新聞8月2日オピニオン欄、陳志武・エール大学教授の発言「中国と影の銀行」から。
・・真の問題は借り手にあります。地方政府が資金調達のために設立した会社が、『影』を利用してお金を引き出し、むだな開発を続けていることです。地方に財源が足りないうえ、成長が評価の基準だし自らの懐も潤うので、造成した工業団地に無理をして企業を誘致している・・
最大の問題は、地方政府を監督し規制する政治の仕組みが事実上ないことです。これは金融を超えて、統治システムの問題です・・
採算がとれない事業が相次いで地方政府が銀行に返済できなくなれば、中国の金融システムを大きく揺るがしかねない。こうした借金は2008年の米金融危機後の景気対策をきっかけに増えたものです。担当者は変わっていないし、へたをすると偉くなっているから、手がつけられない。中国で金融危機が起きる可能性は次第に大きくなっています・・
土地の使用権を売って得た収入を財源にしている地方政府は多いのです。歳入の7~8割が土地収入という都市もある・・
2010年秋に、中国政府の地方財政担当者と、議論する機会がありました。そこで出た課題が、地方融資平台です。最初、担当者が「プラットフォーム」とおっしゃるので、理解できませんでした。議論していくうちに、日本での第3セクター、土地開発公社のようなものだと理解できました。
中国では、最近まで自治体が地方債を発行できなかったので、地域開発の際に別法人を作って借金をしたのです。このあたりは、日本の人口急増期の都市施設建設、その後の観光開発の経験と似ています。違うのは、中国では土地が国有なので、それを売る(正確には使用権を売る)ことで、容易に巨額の資金を得ることができるのです。また、地域開発は、うまく行っているものばかりではないようです。別の記事によれば(時事解析)、1万社、債務残高は11兆元、約180兆円に上ります。
日本でのそれら借金の処理の経験を、お話ししてきました。しかし、問題は日本の経験より深刻だと感じました。

思い込み、男女の区別

2013年8月10日   岡本全勝

日経新聞連載「Wの未来、男も動く」8月8日の記事から。
・・「皆様、離陸いたします」。全日本空輸の客室乗務員、二川恒平(27)が着席すると、近くの男性乗客が舌打ちした。「女性の客室乗務員と話すのを楽しみにしていたのに」。つぶやきが聞こえたように思えた。全日空の客室乗務員約5700人中、男性は7人・・
浜松市職員の保育士、藤田耕介(28)が2007年に新人配属された郊外の公立保育所は、職員約20人のうち男性は藤田のみ。男性用の更衣室もトイレもない。女性同士の話題に加われない。物珍しさから、近所の住民が次々のぞきに来る・・厚生労働省の調査では、保育士のうち男性は3%弱・・
ありそうなことだと、思います。私たちの思い込みが、いかに強いかの例です