カテゴリーアーカイブ:行政

生活保護窓口、職員入れ替え

2026年10月25日   岡本全勝

10月15日の朝日新聞「生活保護「半減」3年、窓口の変化は 職員入れ替え、利用者「人として扱われた」」から。

・・・2023年度までの約10年間で生活保護利用者が半減した群馬県桐生市。職員による「申請権の侵害」を市長も認め、再発防止のため市は生活保護行政の抜本的な見直しに取り組んできた。問題が明らかになって来月で3年になる。窓口は変わったのか。

「(以前は)窓口に行けば犬みたいになるしかなかった。人権なんてありませんでした。今、人として扱われているだけ幸せです」
7月、生活保護行政の改善状況を第三者がチェックする市の検証委員会。全利用世帯(710世帯)を対象にした初のアンケート結果が公表された。自由回答には、窓口対応の変化を示す証言が複数あった。
福祉事務所の対応について聞いた質問では、「分からない」が42・4%でもっとも多かったものの、「とても良くなった・良くなった」が35・0%、「変わらない」が18・5%、「悪くなった・非常に悪くなった」が4・1%。改善傾向が確認された。

利用者に罵声を浴びせ、「くず」と言ってはばからない。以前は、そんな市職員もいたという証言もあった福祉事務所。市によると、2025年度から、課長をはじめ担当者はほぼ「総入れ替え」となった。問題が発覚した23年度、市のケースワーカー6人のうち女性ワーカーはゼロだった。現在は10人に増員され、うち4人が女性ワーカーだという。
再発防止策の目玉は、窓口での相談や電話応対の会話録音の実施だ。利用者の了承を得たうえで25年6月から続けている。市地域福祉課の高橋伸幸課長は「私と担当係長の2人が、毎月2件ずつ無作為抽出して聞き、チェックしている」と話す・・・

・・・ 市の生活保護利用世帯数は11年度には約900世帯だったが、23年度には474世帯にまで減少した。問題発覚後の24年度から増加に転じ、26年8月末時点で716世帯にまで増えている。市地域福祉課の高橋課長は「物価高騰の影響もあるだろうが、以前は市の窓口は相談しづらく、利用が抑制されていたと考えざるをえない」と話す・・・

・・・<群馬県桐生市の生活保護問題>
最初に発覚したのは生活保護費を1日1千円に分割支給したうえに、その月に本来支給されるべき満額を支給していない問題だった。その後、市の生活保護利用者数が約10年間で半減していたことが判明した。市が設置した専門家による第三者委員会は25年3月に報告書をまとめ、行政の「生活保護法違反」「組織的不正」などを指摘した。荒木恵司市長は、市職員による申請権の侵害を認め、利用者らに謝罪した・・・

子ども食堂を被災者支援拠点に

2026年10月24日   岡本全勝

10月17日の読売新聞「子ども食堂 被災者支援拠点に…炊き出し、孤立防ぐ交流も」から。

・・・子ども食堂を災害時に被災者を支える防災拠点とする動きが広がっています。大量に調理できる利点を生かして炊き出しを行ったり、被災者が孤立しないよう交流の場を作ったりできるからです。地域に根付いた活動だからこそ、きめ細かな支援ができると期待されています。

「防災食を配っています。いかがですか」
9月19日昼頃、浜松市の市防災学習センター入り口で、市内で活動する子ども食堂のスタッフが声を張り上げた。認定NPO法人「全国こども食堂支援センター・むすびえ」(東京)などが企画した炊き出し訓練だ。市内2か所の子ども食堂のスタッフ12人が参加し、缶詰など長期保存できる食材だけを使って弁当とスープを200食分作った。アレルギーを持つ人も安心して食べられるよう、缶詰や調味料のパッケージを並べて原材料を確認できるようにした。

子ども食堂は、子どもたちに無料や低価格で食事を提供する。多くは地域のボランティアが公民館や自宅、寺などで運営する。子どもの支援だけでなく、住民同士の交流の場としても機能している。むすびえによると、全国に1万2602か所(昨年度)ある。
むすびえは2019年から、各地の子ども食堂に防災拠点になってもらおうと呼びかけている。平時から地域に根ざして活動しているため、自治体や社会福祉協議会などと連携を取りやすく、被災者のニーズに応じた支援を行えるからだ。被災直後の炊き出しだけでなく、支援物資や復興ボランティアを取りまとめたり、被災者同士の交流の場を提供したりすることも想定されるという。
災害時に支援を行うには、普段からの備えが必要になる。
むすびえは20年に防災マニュアルを作成し、全国の子ども食堂に、懐中電灯や救急箱など備品の確認や避難訓練の実施を呼びかけた。40都道府県で研修も行い、自治体職員らと協力して被災者への支援策を考えてもらった。研修を担当する防災士の森谷哲さん(50)は「関係団体と顔見知りの関係を築けるようサポートしたい」と話す。

自治体が子ども食堂と協定を結び、災害時の支援を要請するケースも増えている。
愛媛県宇和島市は昨年2月、市内22か所の子ども食堂で作る連絡協議会と協定を結んだ。市の要請に基づき、避難所での炊き出しや、子どもたちの居場所づくりをする。食材費などは市が負担する。協議会の窓口を担うNPO法人「ユーグランマジャパン」の松島陽子・代表理事(61)は「平時から危機意識を共有することで、いざという時も連携しやすい」と語る。
福井県敦賀市やさいたま市も、地元の子ども食堂のネットワークと同様の協定を結んでいる・・・

改革は勢いでなされる

2026年10月21日   岡本全勝

「改革は勢いでなされる」と思うことがあります。これには二つの意味があります。

一つは、改革が必要とされ、ある程度の改革案もできているのですが、先送りされていたものが、あるきっかけで動くことです。戦後改革の一つである農地解放は、戦前から企画されていたのですが、実行は難しかったのです。敗戦と占領軍による民主化の中で実現しました。
2000年の地方分権改革も、長年指摘されながら、なかなか動きませんでした。バブル崩壊後の日本の低迷、それまでの仕組みを変えようとした諸改革の一つとして動き出し、実現しました。時代の雰囲気と言ったらよいのでしょうか。令和8年の現在では、想像しにくいかもしれません。

もう一つは、突然動き出して、十分な検討なく成案ができることです。主たる目的である改革は実現するのですが、そのほかの部分まで十分な検討がなされないこともあります。急いでやるので、じっくりとは検討していられないのです。時間をかけると、改革自体が挫折する可能性もあります。
例えば昭和憲法です。地方自治を規定したことは特筆すべきことですが、私には検討が不十分だったと思えます。
憲法第93条は、地方公共団体の二元代表制(大統領制)を定めています。憲法が地方公共団体に二元代表制を義務 付 けたことは不思議です 。中央政府は議院内閣制です。ヨーロッパやアメリカでは、様々な形態が採用されています。議長が市長を兼ねるもの、複数の委員が委員会を作り立法と行政を担うもの、議会が「市管理人」を任命して専門職の人が執行を担うものなどです。じっくり時間をかけたら、二元代表制にするか議院内閣制などどのような機構にするかは、各地方公共団体が選べるようにしたでしょう。
コメントライナー2022年6月7日「憲法改正は地方自治の規定から」

成果がでなかった経済成長戦略

2026年10月21日   岡本全勝

10月9日の日経新聞オピニオン欄、門間一夫・みずほ総合研究所エグゼクティブエコノミストの「「経済成長」は適切な政策目標か」から。指摘のとおりです。内閣府(経済財政部門)や経済財政諮問会議でも、取り上げてほしいです。未来を語る必要がありますが、過去の実績を踏まえない議論は「空論」「希望」に終わる可能性があります。

・・・高市早苗政権は17の戦略分野を中心に官民一体で国内投資を進める。内閣府の「中長期の経済財政に関する試算」によれば、日本経済の潜在成長率は何もしなければ0.4〜0.5%にとどまるが、高市政権の成長戦略で1.7〜1.8%まで高まるという。
過去の実績はよくない。今世紀初頭の小泉純一郎政権以来、政府は累次の成長戦略に取り組んできた。そのつど潜在成長率は2%前後まで高まるとされたが、結果は逆だ。成長戦略の策定・実行が繰り返された四半世紀の間に、潜在成長率は1%程度から0.5%程度へ半分になった。
この間の成長戦略は強力な政治のリーダーシップのもとで、官民ベストの英知を結集して策定・実行されてきたはずだ。それでも成長率が、かすりもしないレベルで目標未達に終わった現実は、厳粛に受け止めなければならない。

規制緩和、イノベーション(革新)の促進、金融市場・労働市場の改革、人材の育成、財政のワイズスペンディング(賢い支出)などを語ることはたやすい。しかし、成熟段階に達した日本のような国で、「野心的な潜在成長率」を政策目標としたとき、その目標に対応する実行可能な政策手段を定量的にひもづけるのは困難をきわめる。
手段が明確でないのに高めの目標を掲げるなら、それは精神論にほかならない。高みを目指す精神論はあってもよいのかもしれないが、弊害があるなら別である。
経済成長とそのための手段のひもづけが難しいということは、ある政策を「成長には無関係」と証明し、排除するのも難しいということだ。その結果、少しでも成長に関係しそうなメニューなら幅広く正当化され、戦略はおのずと総花的なものになる。

しかし財政状況は厳しく、人的資源の制約も強まっている。「成長」の旗が立つなら何でも予算をつけるゆとりはすでに失われている。国民にとって真の課題は何なのか、その中で民間だけでは解決できず、国の強力な関与が必要な課題は何か。成長という言葉を使わずに厳しく問うべきではないか。
例えば、経済・エネルギー安全保障の強化は、成長に資するかどうか以前に、民間だけでは対応できない死活的な課題なのだから、国民に負担を求めてでも推進すべきであろう。老朽インフラの改善や災害への備えも、国民の暮らしを守るために不可欠な課題であり、それが経済成長につながるかどうかは二次的な論点である。
経済格差が問題なら是正を急ぐべきであり、成長してからその果実を分配するという発想では、問題は永遠に先送りされる。女性活躍も外国人材の登用も、労働力の確保という狭い視点ではなく、多様性や活力のある社会が望ましい、という価値観を推進力にすべきである。

経済成長は高いに越したことはないが、目指して実現できるものではないことも過去25年で証明された。むしろ「成長戦略の一環」という発想が課題の優先順位をあいまいにし、真に必要な取り組みや資金投入が、かえって中途半端になることが懸念される・・・

国の役割を規定している地方自治法

2026年10月12日   岡本全勝

地方自治法は地方自治に関する基本法です。ところが国の役割も規定しているのです。

地方自治法は、最初に次の2条を置いています。
第1条 この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。

第1条の2 地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。
② 国は、前項の規定の趣旨を達成するため、国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立つて行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、地方公共団体との間で適切に役割を分担するとともに、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たつて、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない。

第1条の2は、2000年に施行された地方分権一括法で、国と地方の役割分担の基本として定められました。長文でなかなか読みにくい文章ですが、国と地方公共団体の役割分担が書かれていることはわかります。
第2項には「国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務・・・その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い」と書かれています。地方自治法に、国の役割が書かれているのです。もちろん、国と地方の役割を並列して書いているわけではありません。主語は国になっていて、末尾は「地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない」と国に義務を課す形になっています。

第1条では、「国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより」とあり、国と地方の役割分担を定めようとすると、国の役割を書かざるを得ません。
本来なら憲法に規定すべきことでしょう。しかし、日本国憲法は改正がされず、法律で対応しています。憲法第92条は「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」と定めているので、このように法律で定めることもおかしくはないのですが。反対に、国の役割を基本的・包括的に定めた法律はないのでしょうね。