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行政

家庭内暴力、男性の被害3割

4月25日の読売新聞「見えない暴力 改正DV防止法」は、「男性からの被害相談 増加…支援体制に遅れ」でした。

・・・大阪市中央区の「カウンセリングオフィス天満橋」は、男性専門のカウンセリングルームだ。2011年の開所以来、延べ3000件の相談を受けてきた。「妻に暴力を振るってしまう」など加害側の立場ばかりだったDV相談に変化が表れたのは、コロナ禍の20年から。現在ではDV相談の約半数が被害を受ける側の声になっている。
40代の男性はコロナ禍の影響で収入が激減。妻から「こんなに給料が下がるなんて能なし、 甲斐性なし、ダメ男」と長時間にわたって責められ、自分でも「稼げなければ男として失格だ」と思えて反論できなかった。コロナ禍で夫婦ともに自宅にいる時間が増え、気持ちが追い詰められていく。カウンセリングを訪れることも「こんなことを相談したら自分が怒られるのでは」と不安で怖かった・・・

・・・警察庁によると、23年のDV相談は過去最多の8万9000件に上り、被害者の30%は男性だった。1日に施行された改正DV防止法(配偶者暴力防止・被害者保護法)で、加害者の接近などを禁じる保護命令を精神的暴力の被害者も申し立てることができるようになり、浜田さんは「男性もDV被害を自覚する契機になれば」と期待する。
内閣府の23年の調査で、配偶者からの暴力被害の経験は女性の28%、男性でも22%が「ある」と回答し、その3年前の前回調査の女性26%、男性18%から増加した。さらに、男性の被害の内訳は、前回は「身体的暴行」が「心理的攻撃」を上回ったが、今回は逆転。精神的暴力をDVとして捉え、被害を認識する男性が増えたと考えられる。
だが、同じ調査で、DV被害について女性は6割が誰かに相談していたが、男性では4割にも満たなかった。女性被害者に比べて相談や支援の体制が整っているとは言いがたく、男性向けのDV相談窓口が設置されていない自治体もある・・・

法人税優遇、適用企業は非公開

4月19日の朝日新聞1面に「法人税優遇、減収2.3兆円 22年度試算、適用企業は非公開」が載っていました。

・・・特定の企業や個人の税負担を優遇する「租税特別措置」(租特)による法人税の減収額が、2022年度は2兆3015億円にのぼり、現行の制度になった11年度以降で最高となったことが財務省の試算でわかった。どの企業に適用されたのかなどの情報開示が乏しく、政策効果の検証が難しい。「隠れ補助金」とも呼ばれる巨額の減税が続いている。
財務省は毎年、租特によってどれぐらい減収したかを試算して国会に報告している。4月に提出された最新の資料によると、22年度の所得税なども含めた全体の減収額は8兆6975億円となり、9年連続で8兆円を上回った。減収が10億円未満の項目や、データ不足で推計が困難なものは含まれていないため、実際の減収額は多くなる可能性がある。

法人税では、企業の研究開発費の一部を法人税から差し引く「研究開発減税」の合計額が7636億円で、前年度より17・0%増、従業員に支払う給与を増やした分の一部を減税する「賃上げ減税」は5150億円で、前年度(2430億円)から倍増した。この二つは「メガ減税」(財務省幹部)と呼ばれ、法人税の減収額約2兆3千億円の半分強を占める。
問題は、国が守秘義務の観点から、どの企業がどれくらい減税されているのかなどを公開しておらず、どれくらい政策効果があったのかを検証しにくいことだ。
ドイツとスイスの政策シンクタンクが昨年、租特を含む税支出の情報公開の透明度をまとめた「世界の税支出の透明性指数」(GTETI)によると、日本の順位は104カ国・地域中94位に沈む。1位は韓国で、主要7カ国(G7)では、カナダ(2位)、ドイツ(4位)、フランス(5位)、米国(6位)、イタリア(7位)、英国(27位)と比べて際立って低い水準だ。政策減税に伴う減収額の計算方法や、政策効果が示されていない点が厳しい評価につながった・・・

国民の税金が何に使われているか(本来納めるべき税金を安くしているか)は、国民に知る権利があるでしょう。また、政策がどのように実現されているかを検証するためにも、どこに使われているかは公開すべきです。対象となっている企業も、後ろめたいことをしているわけではありませんから。

食料自給率の低下

4月24日の日経新聞夕刊、山下一仁・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の「食料自給率、EUと日本なぜ明暗」から。

・・・日本と同様にフランスやドイツなど欧州連合(EU)諸国も第2次世界大戦後は農業生産の激減による飢餓に見舞われ、食料増産に努めた。食料自給率は、1961年の78%から38%へ半減した日本に対し、フランスでは99%から125%、ドイツでは67%から86%へ上昇している。

60年ごろに食料自給が実現できるようになると、日本も独仏も農産物価格(コメ農家が大半を占めていた日本は米価)を上げて農家所得を引き上げようとした。需給が均衡する価格よりも高い価格を設けたので、生産は増えて消費は減り、供給過剰が生じた。
ここまでは同じだが、過剰処理の仕方が違った。日本は補助金を出して減反(生産調整)し生産を減らした。コメ生産は終戦直後の587万トンから67年には1445万トンに増えたが、今はエサ用などを入れても720万トンにすぎない。日本の食料自給率低下の原因は国内市場の縮小に合わせたコメ生産の減少だ。EUは生産を拡大して過剰分を補助金付きで輸出した。食料自給率は生産を消費で割ったものだから、輸出すると100%を超える。EU農業は食料安全保障のための生産確保という使命を忘れなかった。

次に93年にEUは価格を下げて農家への直接支払いに転換した。補助金なしでも輸出できる価格競争力がついたばかりか、輸入していた飼料穀物を域内産で代替し、さらに食料自給率は上昇した。今やEUは世界最大の小麦輸出地域である。
我が国も輸出を振興し始めた。しかし、小手先の対策ばかりで、減反をやめて米価を下げ、世界最高峰の品質を持つ日本米の輸出を大々的に行う考えはない。米国のコメ小売価格は日本よりも高くなっているが、米国のスーパーには数年前までなかった韓国産のコメが並んでいる・・・

経産省、一貫性なき半導体政策

4月11日の朝日新聞夕刊「取材考記」、大鹿靖明記者の「瞬発力のみ 経産省、一貫性なき半導体政策」から。

・・・自民党の萩生田光一前政調会長は文部科学相と経済産業相を歴任した。両省の官僚気質をこう例える。
「文科省は生徒会長の集まりのようなところで、地味だけどルールを守ってこつこつやる人が多い」
「それに対して経産省は文化祭実行委員長みたい。とても優秀で短時間にワーッとやるけれど、文化祭が終わったら関係ナシ。短期集中突破型で持続力がないんです」・・・

・・・ 前のめりになったかと思えば後ずさりし、「シリコンサイクル」とは経産省の半導体政策の「やる気度」のことを言うのかと思えてしまう。そう話すと、「まさしくそう」と萩生田氏。
「普通の役所は『引き継ぐ』でしょう。でも経産省は違います。自分の代に何かを『仕掛ける』。チャレンジングな文化なんです」
確かにそうだ。コロナ禍の半導体不足という一瞬の「市場のゆがみ」に飛びつく経産官僚の瞬発力たるや、すごい。それで台湾のTSMCを誘致し、ラピダスを設立するのだから。

50歳代の課長級が言う。「ウチの役所は大きなことを仕掛けることにロマンを感じる人が多い」。さらにこう付け加えた。「日本の農業を守る農林水産省や財政規律を大切にする財務省と違って、経産省は背負うものがないんです」
同省は過去にグーグルに対抗した検索エンジン構想や、脱ウィンドウズのOS構想などを打ち上げてきたが、成功したとは聞かない。その時々話題になりさえすればいいようである。過去の半導体の日の丸プロジェクトの資料を情報公開請求すると、担当課から「残っていない」との返答を受け取った。つい20年前のプロジェクトなのに。「ウチは2年で記憶喪失する役所」と元担当官は苦笑い。やはり文化祭実行委なのか・・・

隠れ教育費

4月6日の朝日新聞別刷り「フロントランナー」は、「隠れ教育費」研究室、福嶋尚子さん・柳澤靖明さんの「学校の「当たり前」を問いなおす」でした。

・・・制服、ランドセル、計算ドリルや国語ワーク。子どもが小中学校に入学すると買わねばならないものは、多岐にわたる。部活動費や、修学旅行費など行事に関わる出費も少なくない。そうした学校にまつわる保護者負担を「隠れ教育費」として、問題提起をしてきた。

なぜそれを買う必要があるのか。購入に至るまで、教職員や保護者らでどんな話し合いがあるべきか。費用はいくらが妥当で、誰が負担するべきなのか――。
憲法26条には「義務教育は、これを無償とする」とある。家庭の経済状況に左右されず、全ての子どもが教育を受けられるようにするためだ。にもかかわらず、文部科学省の「子供の学習費調査」を元にした試算では、公立小6年間では約63万円、公立中3年間では約51万円の保護者負担が発生する。憲法の「無償」はどの範囲で、どう考えたら良いのか・・・

盲点でした。経済成長が始まる前は、家が貧しくて修学旅行に行けない子どももいました。悲しかったでしょうね。