カテゴリーアーカイブ:行政

自治体による認知症事故保険。民間活用

2019年11月27日   岡本全勝

12月26日の朝日新聞1面は「認知症の事故補償、広がる 自治体、保険料肩代わり」でした。
・・・2025年には認知症の高齢者は約700万人に増えると見込まれる。「認知症になっても安心して暮らせる街」への壁になるのが、賠償責任が問われるような万一のトラブルや事故のリスクだ。本人や家族の不安を軽減するため、民間の保険を使った事故救済制度を独自に導入する自治体が増えている・・・

・・・2017年11月に神奈川県大和市が全国に先駆けて導入し、18年度に5市町が続いた。19年度に自治体数は急増した。
神戸市は個人市民税引き上げ(1人400円)で年約3億円の財源を確保、新たな認知症支援策を打ち出した。このうち事故救済制度(賠償責任保険+被害者への見舞金)は4月運用開始。賠償責任保険の申込数は8月までに2893人。市によれば「他人の自転車を壊した」「店舗を汚した」などで3件の支給(約9700円~約13万8600円)があったという・・・

・・・認知症の人の事故の補償について検討した関係省庁による連絡会議は16年、「ただちに制度的対応を行うことは難しい」として、公的補償創設を見送った。こうしたなか、認知症の人や家族が安心して暮らせる街にするため、独自の補償制度導入に踏み切る自治体がでてきた・・・

官と民とで垣根が低くなっていること、協働することの例です。このうち、神戸市の事例はこのホームページでも取り上げました。

保険は、個人では負担できないリスクの被害を、大勢で負担しようとするものです。火災保険や自動車保険は分かりやすいですね。みんなに関わるものとして、健康保険、年金保険、介護保険もあります。民間会社によるもの(火災保険など)、政府が制度を決めて民間が運用するもの(自動車保険など)、政府が運用するもの(介護保険など)があります。
その点で、政府は究極の保険です。健康保険、年金保険、介護保険、失業保険などのほかに、生活保護や災害時の救助など、困った人を助けるのが政府の役割です。税金という「保険料」によってです。現在連載中の「公共を創る」では、詳しく解説しようと考えています。

ポピュリズム権威主義

2019年11月26日   岡本全勝

11月25日の読売新聞文化欄、神保謙・慶應大学教授の「論壇キーワード」は、「ポピュリズム権威主義」でした。

・・・グローバルな民主主義の後退が10年以上にわたり続いている。国際NGOフリーダムハウスによれば、過去13年間連続で権威主義体制が興隆し、民主主義体制の国々でも政治的自由度が低下するか、体制自体が瓦解するというトレンドが続いている。これら民主主義体制の瓦解には、ケニア、ロシア、タイ、トルコ、ベネズエラといった戦略的重要度の高い国々が含まれる・・・
・・・かつての民主主義の瓦解は、軍事クーデターと戒厳令による統治権の剥奪はくだつや、選挙による代表制の停止など、唐突な形での政治体制の転換が多くみられた。しかし今日の民主主義の後退は、むしろ民主的手続きを経て信任されたポピュリスト政治家が、徐々に司法の独立を制限、報道規制を強化、市民の政治的自由に介入し、権威主義化を進めていくモデルが目立っている。これを「ポピュリズム権威主義」もしくは「ポピュリズム独裁」と呼ぶ・・・

・・・ポピュリスト政治家が権威主義化を進める現象は、民主制が根付いた国家にも広く及ぶようになった。米国のトランプ大統領、ハンガリーのオルバン首相、ブラジルのボルソナーロ大統領、フィリピンのドゥテルテ大統領など例に事欠かない。欧州・アジア・ラテンアメリカにおけるポピュリスト政党や政治家の伸長も、さらなるポピュリズム権威主義の予備軍となっている・・・
・・・新興国の権威主義体制は経済成長の果実とIT技術による統治強化を携え、社会の自由をますます制約しながら権力の強靱きょうじん性を強めているようにみえる。先進国の民主主義はグローバル化に対する反動と、低成長期の分配政治の限界を抱え、反エリート主義を掲げるポピュリストが権力を握る傾向が顕著となっている。こうした動向から、経済発展が民主化を促し定着させるという近代化仮説は、その役割を終えたとする議論すらある・・・

中国指導者の最優先事項

2019年11月23日   岡本全勝

11月17日の朝日新聞オピニオン欄、ロバート・ゼーリック元世界銀行総裁のインタビュー「米中の共存共栄は幻か」から

・・・「習近平体制下で中国が圧制の傾向を強めたことは確かです。国家主席に就任した習氏は、『最優先事項は何ですか』と尋ねた私に『8668万人の共産党員です』と答えました。1949年の建国以来変わらず共産党は人民の『前衛』として指導する立場にあり、その強化が最優先だ――。そんな彼の本心が伝わってきました」・・・

無茶な行政指導

2019年11月16日   岡本全勝

日経新聞私の履歴書、11月は、化粧品のファンケル会長、池森賢二さんです。ご苦労なさった人生を書いておられますが、きょう紹介するのは、役所の対応です。どうやら、無添加化粧品の評判を気にした同業者が、行政を使って嫌がらせをしたようです。

11月14日「小瓶革命
・・・人気がうなぎ登りとはいえ、世間的な認知度はまだまだ低い。当然様々な妨害行為や理不尽な目に遭う。1985年、厚生省の薬務課の職員が「おたくの会社は製造年月日を入れているようだが、インチキだという連絡があった。確かめさせてもらう」と言ってきた。ライバルからの嫌がらせだろう。
千葉県流山市の工場に調べが入り、説明した。化粧品は製造した原料をタルクという容器に保管し、3日後に瓶詰めにする。ファンケルではタルクに保管した日を製造年月日としていたら担当者は「製造年月日は瓶詰めの日で構わない」と話す。インチキどころか、良心的だったわけだ。この話はこれで終わった。

当時の神奈川県の薬務課の対応にも手を焼いた。「無添加とは何か」と聞いてくるので、「防腐剤などが入っていない化粧品です」と答えると「既存の商品は規制をクリアしている。ファンケルは我々のやり方にケチを付けるのか」などと因縁を付けてくる。そして「無添加」という言葉を使うなともいう。
そこで「新鮮作りたて」はどうかと聞くと、「それならいいだろう」という。別の担当者に変わると「新鮮というのは意味が不明確だから無添加ならいい」というので再び無添加に戻した。初めての商品とはそういう目に遭うのかもしれないが、余りにひどい。すると今度はチラシにもご指導が入る。とにかく県庁までチラシをもってこいという・・・

11月15日「行政指導と反社
・・・神奈川県の薬務課からお呼び出しがかかった。担当者にチラシを見せると「この表現はおかしい」「あの表現もダメ」とダメ出しを食らう。何度足を運んでもOKが出ない。しまいには「1文字も書くな」などと怒られる。チラシを出すことさえ、許されない状況に追い込まれた。
しょぼくれてエレベーターに乗ると同じ薬務課の人が乗ってきてくれて「大変だね。チラシがうまくいくヒントを教えましょうか」と言ってくる。何かと聞くと・・・

どのようにして、このとんでもない行政指導を切り抜けるか。続き原文をお読みください。公務員の皆さん、他山の石としてください。

移民を受け入れ福祉も充実している国

2019年11月11日   岡本全勝

11月4日の日経新聞オピニオン欄、ジャナン・ガネシュ (ファイナンシャルタイムズ、USポリティカル・コメンテーター)の「移民と福祉は二律背反か」から。

・・・カナダは外国生まれの国民の割合が約20%と米国より高い。それでいて国民皆保険制度もジニ係数でドイツ並みの所得分配も実現している。選挙では有権者の多くが所得再分配を掲げる政党に投票し、最大野党・保守党もあからさまな移民批判は控えた。
カナダのような国籍・民族にとらわれないコスモポリタンな社会民主主義は現実的でないという指摘をよく耳にするようになった。欧米で近年、左派が憂き目をみているのは移民と福祉が並立しないからだとされる。市民は互いの共通項が減れば、暮らしを支え合おうとはしなくなるという理屈だ。

経済協力開発機構(OECD)の加盟国中、租税負担率が最も高いのがフランスだ。しかしフランスを閉鎖的だと思う人はいない。スウェーデンとデンマークは移民の増加で社会保障サービスが以前ほど手厚くなくなったが、福祉国家の旗は降ろしていない。国民の25%以上が外国生まれのオーストラリアは、米民主党がうらやむような公共サービスを備えている・・・