カテゴリーアーカイブ:行政

働き方改革、霞ヶ関の非常識

2020年2月3日   岡本全勝

日経新聞は、1月28日から31日まで「働き方改革 霞ヶ関の非常識 識者に聞く」を連載しました。

28日の、元厚労省・千正康裕氏の発言から。
――現場の余裕がなくなっている理由は。
「一つは政策立案の速度が速まっていることだ。昔は2年後の国会提出を見越して法案の制度設計をすることができた。今は何か問題が起きたらすぐ法改正などが求められる。児童虐待の件数はここ10年間で増え続けており、児童虐待防止法は4年間で3回も改正された。常に法改正などの案件を抱え、現場も、現場を育成する立場の管理職も余裕がなくなっている」
「人材配置の問題もある。深夜の国会待機が当たり前の働き方では、子育て中の女性らを国会対応が忙しい部局に配置することが難しい。その結果、休まず働けて能力もある一部の職員に次から次へと仕事が集中する状況が続く。今の霞が関ではこうした中核人材が徐々に疲弊し、壊れ始めている。私も企画官になってから休職を経験したが、まさか自分がうつになるとは周りも自分も全く思わなかった」
「第一線で働いていた職員が精神疾患や家庭環境の悪化で厚生労働省を去り、若手も将来のキャリアを描けなくなっている」

29日の、弁護士・菅谷貴子氏の発言から。
――パワハラに耐えて昇進してきた幹部が重要ポストを占めており、組織が変わりにくい側面もあるのでは。
「50代前後の管理職世代は『お気の毒世代』だと思う。かつては仕事一筋の『モーレツ官僚』であることを求められ、管理職になったとたんにワーク・ライフ・バランスを重視する若手の育成や雑用に時間を割かれる。構造的に疲弊しているのは民間企業でも同じだ」
「生ぬるい指導では仕事にならないと思っている人は今も一定数いるだろう。パワハラが横行する職場でたたき上げられ、『あの時代があってこそ地位もスキルも得た』と思い込んでしまう。時代の流れにあわせ、人の育て方を学ぶことも重要なスキルだと伝えたい」

日本の国益

2020年1月15日   岡本全勝

1月13日の読売新聞1面コラム、田中明彦・政策研究大学院大学学長の「安倍外交7年 平和・繁栄・価値観で成果」から。

・・・しかし、そもそも現代世界において外交の評価とはどのように行うべきなのか。外交とは国益を最大化するための非軍事的手段による国際関係の処理である。そうだとすれば、本来、日本の国益とは何かが明確にならなければ評価のしようもない。現代における日本の国益とは何か。

抽象的にいえば、民主主義国の国益は、その民主主義プロセスが明示的・暗示的に定義する国の諸目的の実現にほかならない。多くの人々が大事だと考えること、これが国益である。
具体的に日本にあてはめてみれば、その国益は比較的はっきりしている。
第一に平和であり、日本の安全保障が侵害されないことである。
第二に繁栄であり、日本国民の生活水準を維持・向上させることである。
第三に国民が大事だとみなす様々な価値――自由、平等、法の支配などが維持・向上されることである。
いうまでもなく、細部を吟味していけば、いろいろと意見の違いはあるだろう。しかし、国益の大きな方向性としてそれほど異論はないのではないか・・・

続「自治体のツボ」

2020年1月8日   岡本全勝

ブログ「自治体のツボ」を紹介します。最近も、頻繁に記事を書いておられるようです。地方行政の課題、政府の課題など、結構辛口の評論があります。他方で、身の回りの話や趣味まで。幅が広いです。
去年に紹介したことがあります。

データでみる首相官邸

2020年1月3日   岡本全勝

日経新聞が12月29日から、「データでみる首相官邸」という連載を続けました。
29日、官邸支える人材3割増、首相が精鋭指名 官僚機構も強化
30日、内閣府・内閣官房の出身省庁、経産が最多
31日、首相と面会、外交・安保トップ急増 財務次官は少なく
1月1日、経済財政諮問会議、小泉政権より4割減少

第2次安倍政権になって、官邸の仕事の仕方が変わったと、多くの人が指摘してます。しかし、それらの指摘は断片的で、実証的ではないようです。
このように、数値を挙げて検証することは良いことですね。あわせて、政治主導はどのように変わったか、その方法の解説も欲しいところです。

かつては、各省庁の仕事の仕方について、マスコミや研究者が検証しました。ところが、官邸と内閣官房のしくみや仕事の仕方については、これと言った研究がありません。
そして、この連載でも取り上げられたように、内閣官房は急速に組織人員、仕事の範囲が広がっています。
省庁改革直後の2001年には、515人だったものが(予算定数)、現在では1,188人と2.4倍に膨らんでいます。この外に、併任発令職員がいると思います。
内閣人事局、国家安全保障局という実施組織もできました。1府13省庁と並んで、内閣官房が省庁並みの組織になっています。組織図組織と定員
行政学としても、取り上げて欲しい組織です。

企業と役所の思考の違い、その2

2019年12月15日   岡本全勝

千に三つ、役所と企業の違い」(9月8日)の続きです。このような企業と行政との思考の違いを、広げてみましょう(これもまた、下書きをしたまま、放置してありました)。

一つは公平な取扱いです。
企業の場合は、買ってくれる層を対象とします。買わない人は、相手にしません。しかし、役所の場合は公平原則で、対象となる人は全員平等に扱います。もっとも、企業であっても「公共的サービス」は、平等に扱うことが求められます。

時間についての、意識の差も出ます。
企業は、他の企業に先駆けて新しい商品やサービスを売ろうとするので、なるべく早く作るのが良いことです。完璧を期す必要はなく、やってみてダメだったらやめればよいのです。これに対し、役所の場合は税金で行うので、新しいサービスを作る際に検討することが多くなり、時間と手間がかかります。

もっとも、役所のすべての事業や仕事の進め方を、このような基本的条件の違いで説明することは問題でしょう。
「お役所仕事」という批判です。そこには、遅い、融通が利かないという指摘が含まれています。企業との違いを前提としつつも、そのような批判に説明できるように、しなければなりません。

あなたがやっている仕事について、それが正しいかどうか。その「試験」は、簡単です。あなたが、住民の立場に立ってみることです。
あなたBが申請者であって、市役所の担当者であるあなたAに向かって、「それはおかしいだろう」と言うようでは、あなたAの仕事ぶりは失格です。「公平原則」や「慎重な検討が必要なのです」は、言い逃れでしかありません。