カテゴリー別アーカイブ: 再チャレンジ

行政-再チャレンジ

女性の昇進を阻む男性たち

3月9日の朝日新聞「「彼らは僕の薫陶を受けてる」 昇進阻んだ男性ネットワーク」から。

・・・大手電機メーカーで成果を出しても課長より上に昇進できず、年下にも抜かれた女性の問いに、上司はこう答えたという。
「君を部長にする気はない。だって、MBA(経営学修士)、持ってないじゃない」
周りの部長の男性たちを見渡しても、MBA取得者は見当たらない。
「MBAを持ってる人、いないじゃないですか」
「彼らは僕の薫陶を受けてるからね。君にはそういう教育をしていない」
「僕の薫陶」という言葉の向こうにある男性ネットワークの存在に、がくぜんとした・・・

・・・日本での賃金や昇進における男女格差は大きい。
経済協力開発機構(OECD)によると、男性の賃金の中央値を100とした時の女性の値(2021年)は日本が77・9。内閣府によると、民間企業の女性管理職比率(課長相当職)は21年時点で12・4%。いずれも先進国最低レベルだ。
格差は経営トップ層にも。企業統治助言会社「プロネッド」によると、東証プライム上場企業の取締役に占める女性の割合(22年)は1割を超えるものの、大半は社外取締役の起用によるもので、内部登用の女性の取締役は1・5%。内部昇格で取締役になれる女性は極端に少ない。
なぜか。女性が育児などを過度に担ってキャリアを断念する場合だけでなく、そうした制約がなくとも昇進の壁に阻まれて、「将来の役員候補」となるべき女性が次々に脱落させられている構図がある・・・

非正規公務員

3月9日の朝日新聞「非正規公務員、女性しわよせ DVの相談員、低待遇に疲弊「限界」」から。

・・・公務員の非正規雇用への置き換えが進み、大半を女性が占めている。専門的な知識が必要な仕事でも低賃金で、多くが有期雇用だ。ジェンダー不平等を解消する旗振り役であるはずの自治体で格差が生み出され、「官製ワーキングプア」と批判されている。

「もう限界だ」。広島県内の自治体で婦人相談員の仕事を約8年続けてきた藍野美佳さん(54)は2021年春、退職を決意した。DV(家庭内暴力)に苦しむ女性を支援する仕事に使命を感じていたが、非正規の待遇の悪さに追い詰められた。
月14万円あまりの給料から税金や家賃、光熱費などを引くと、手元にほとんど残らない。夜はファミレスやホテルで清掃の仕事をし、週末もバイトを入れた。「相談員の仕事を続けるためだった」と話す・・・
・・・難しいケースをいくつも抱えて過労に陥り、最初の3年で2度、医師から就労不能の診断を受けた。しかし、わずかな傷病手当しか出ず、十分に休養することもかなわなかった。
コロナ禍では「夫に居場所を知られずに給付金を受けられるか」という相談が増え、心身が限界に。「仕事に見合った待遇を」と自治体に求めたが、財政難を理由に変わらない。一方で、定年を迎えた男性の正規職員が年収500万円超で再雇用されたと知り、離職に傾いた・・・

・・・1990年代半ば以降、公務員の削減が進んだ。自治労の調査では、94年に328万人だった公務員は2016年には274万人に減った。一方、定数外職員は約3倍の64万人に増えた。女性が多い事務職員や保育士、図書館職員が非正規に置き換わり、相談業務の多くも女性が非正規で担う。20年の総務省の調査では非正規公務員の4分の3を女性が占めた。
公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)の調査では、非正規公務員の79%が年収250万円未満。回答した705人のうち、92%が女性だった。
賞与を出せるなど、待遇改善を図るとして、会計年度任用職員制度が導入されたのは20年。だが、時給や労働時間を切り下げた自治体が多く、収入増にはつながっていない。「契約更新は2回まで」という自治体も多く、今春は雇い止めが大量に起きるとみられる・・・

介護離職対策、悩みの相談

2月1日の日経新聞「介護離職は心のケアで防げ コマツが相談会、満席続く」から。

コマツが介護を理由とする離職の防止に向け、社員の心のケアに取り組んでいる。専門家による相談会を毎月開き、悩みを打ち明けやすくする。会社に相談できずに介護をしている社員は想定以上に多いと判断し、「離職予備軍」の増加を防ぐ。介護離職は2010年代から急増し、近年は年間約9万〜10万人に達する。会社を支えている40〜50代の社員を失うことは大きな痛手で、対策は待ったなしだ。

コマツは18年から約2万4000人の社員を対象に、外部の専門家に介護の悩みを相談できる個別相談会やセミナーを開いている。月間10人の相談枠は昨年12月〜今年2月まで満席が続く。追加の駆け込み案件も多く、需要が高まっている。
外部委託先のNPO法人「となりのかいご」代表理事の川内潤さんらは、のべ約470人の社員の声を聞いてきた。相談者は40〜50代が多く、10人に1人ほどは「いずれ会社を辞めなければならないのか」などと離職への不安を口にするという。
コマツは社員の介護負担の増加について早くから危機感を持っていた。「多くの社員が介護に携わる時代になる」とみた労働組合が介護休業の延長を提案。11年には法律が定める通算93日よりも多い最長3年まで休めるようにしたほか、手当など金銭面も手厚くした。
ところが17年ごろに制度の利用状況を調べると、休業者は5年間でわずか18人。実は会社に相談せずに週末などを使って介護をしている社員が予想以上に多いのではと思い直した。「真の需要に寄り添えていないのでは」と感じた同社が着目したのが、本音を打ち明けやすい環境の整備だ。
介護はプライバシーに関わる問題で、社内では打ち明けにくい面もある。コマツは外部の専門家による相談会にすることで心理的なハードルを下げた。会社には匿名で参加できるのも利点だ。
「親不孝介護」などの著書もある川内さんは、「優秀な社員ほど一人で解決しようとして悩みを抱え込み、突然の離職に至るケースも多い。『プロに任せられることは任せ、親とは適切な距離を保つべきだ』などと助言している」と話す。
相談者からは「自分の生活を優先していいんだと気づいた」「自分が深刻な状態にいることが理解できた」との声が上がるなど、悩みを打ち明けて心の負担が軽くなった人が多いもようだ。現在、コマツの介護離職は数年に1人程度という。石田さんは「介護需要が拡大するなかでもリスクを抑えられているのでは」と手応えを感じている。

「隠れ介護者」の存在は根深い問題だ。仕事と介護の両立を支援するリクシス(東京・港)によると、「介護が理由とカミングアウトしないまま辞めたり、辞めずとも有給休暇などで両立に励むケースが多く、実態を把握できている企業はほとんどない」という。
最大の壁は心理的な要因だ。「職務を奪われるのでは」「賃金に響く」といった不安から、会社への説明に及び腰になるという。特に50代などは「育休世代と違い、仕事を長期で休んだ経験がないことも影響している」(リクシスの佐々木裕子社長)。本音を引き出すため、心理的安全性をどう担保するかが課題だ。

イギリス、お金をかけず社会で子育て

日経新聞夕刊連載「人間発見」、1月30日からは、認定NPO法人キッズドア理事長 渡辺由美子さんの「学ぶ機会の平等を」でした。東日本大震災では、無料で学習指導をしてくださいました。

2月1日は、2001年から1年間英国で暮らした経験です。
「お金をかけず社会で子どもを育てることの大切さを学んだ」
長男は日本では保育園の年長でしたが、英国では小学1年生。何か準備するものはあるかと問い合わせたら、何もないと言われました。筆記用具も教科書も学校側が用意してくれます。英語ができない息子のために半年間、同級生の保護者を補助員として雇ってもくれました。
学校で必要な教材や備品はバザーや寄付でそろいます。子育てにお金がかからないと感じました。そのバザーも経済的に厳しい家は出さなくても構わない。全ての家庭に等しく負担を求める日本とは異なります。

通った小学校は授業中に落ち着かないとペナルティーがたまる仕組みでした。週3回廊下に立たされると翌週は昼休みなどが没収され、先生と反省部屋にいきます。ある日、お迎えに行くと長男のクラスメートのベンが駆け寄ってきました。
彼いわく、長男は「すでに今週2回立たされていて、次に注意されたら大変だ。明日は木曜日だからあと2日頑張れと本人に言っているのだが彼は英語がわからないから伝わらない。ぜひ、お母さんから伝えてほしい」――。友達を守ろうと小さな男の子が勇気を出して伝えてくれたのです。周りに温かく見守っていただき、なんとか1年を過ごすことができました。

帰国して買ったランドセルは5万円。やれ鍵盤ハーモニカだなんだとお金がかかる。夫婦の両親から服やゲームもどんどん与えられますし、周りが通っていると聞けば水泳教室にも通わせてあげたい。「子どもがマーケットにされている」と感じました。
息子たちは都内の公立小学校に入学しました。クラスでちょっとしたいじめがあり、どうすればいいのか親しいママ友に相談すると「絶対巻き込まれないよう、子どもに伝えた」というのです。クラス全体より自分の子を大事にするのが日本のスタンダードなんだと、英国との違いに気づきました。

学童保育の重要性

1月30日の読売新聞が、「学童保育の課題 学童 減らない待機児童 1万5000人 居場所作り不可欠」を書いていました。

・・・共働き家庭などの小学生が、放課後の時間を過ごす学童保育(放課後児童クラブ)。新型コロナウイルス下で減った待機児童の数が、経済社会活動が元に戻りつつある中で、再び増加している。自治体は待機児童解消に向けた取り組みを進めている。

「保育園落ちた」という匿名のブログが話題になってから7年。近年は、公立の学童保育の申し込み結果が出る2月頃になると、SNSに「#学童落ちた」の言葉が並ぶ。
フルタイムで勤務する女性の増加などから学童へのニーズが高まっている一方で、待機児童数は高止まりしている。保護者の勤務状況や子どもの学年などの状況から預かりの可否が決められることも多く、枠が足りずに利用できない人もいる・・・

・・・待機児童の解消には、受け皿拡大とともに専門性のある職員の確保も不可欠だ。しかし待遇の低さなどで離職が後を絶たないのが現状だ。
学童の職員には、保育士や社会福祉士の資格があるなどの条件を満たし、都道府県の研修を受けた「放課後児童支援員」がいるが、基準を満たした職員を確保するのは難しく、学生アルバイトなど非常勤も多い。
全国学童保育連絡協議会が2014年に実施した、学童の正規・非正規の職員を対象とした実態調査によると、週5日以上勤務する職員の46.2%が年収150万円未満だった。半数は勤続年数が1〜3年で、安定した生活を見込めずに離職するケースも多いと指摘されている・・・

新型コロナの感染が広がった頃、保育園、幼稚園、小学校とともに、学童保育が閉鎖され、共働きや一人親が働きに行けなくなるという事態が生じました。学童も子育て中の親にとっては必須の施設です。ところが、保育園や学校に比べ、学童保育は法律や制度の整備が不十分です。
児童福祉法で、市町村の実施責任を定めているのみで、詳細は設備運営基準(や運営指針)が国による参酌基準として定められ、具体的には市町村条例等に委ねられているようです。保育園や幼稚園並みの位置づけが必要でしょう。