コメントライナー寄稿第12回

時事通信社「コメントライナー」への寄稿、第12回「一身にして二生を過ごす」が、7月10日に配信されました。

高度経済成長によって、私たちの暮らしは大きく変化しました。私たちは今、もう一つ大きな変化を経験しています。経済成長期にできた「標準的家族の終わり」です。漫画「サザエさん」に描かれているです。夫婦と子2人の4人家族、父親は仕事に出かけ、母親は家庭を守ります。ところが今や、片働きより共働きが多くなりました。家族の数は1人暮らしが一番多いのです。

人権意識も大きく変わりました。私が就職した頃の人権教育は、同和問題が主でした。現在では、いじめや体罰、家庭内暴力、パワハラ、セクハラ、性的少数者へと広がりました。特に男女間の格差解消は、革命的な変化です。

福沢諭吉は江戸と明治の二つの時代を生き、『文明論之概略』で「一身にして二生を経るが如し」と述懐しています。明治維新に続き戦後改革でも、憲法体制が革命的に変わりました。
平成と令和を生きている私たちは、憲法は変わらなかったのに、革命的経験をしています。しかも前2度の革命より、暮らしの形と社会の意識は大きく変化しています。政治革命を伴わない社会革命です。