NHKが、「Jリーグ サポーターの応援規制に苦慮」を紹介しています(12月13日)。
・・サッカーJリーグで今シーズン、サポーターの応援を巡る問題が相次いだなか、NHKが各クラブを対象に行ったアンケートで、クラブ側はサポーターを統制する難しさや応援の規制に悩んでいる実態が分かりました・・
この記事に書かれているように、特に今年問題になったのは、サポーターが差別的な横断幕を掲げたり、外国人選手にバナナを振りかざすなどの、「差別的行為」をしたことです。これまでも応援団の問題はありましたが、それは熱くなった応援団が、他の観客や相手方の応援団ともめ事を起こしたり、物を投げたりといった、「暴行的逸脱」でした。その点で、少し違った行為が問題になっています。人権意識の高まりでしょう。
サポーターや観客は、サッカークラブにとって重要なお客であり支援者です。その人たちを、どこまで規制するのか。さらには、クラブにはどこまで規制する義務があるのか。難しい問題です。試行錯誤を重ねて、解決していくしかありません。「スタジアムで考える正義とは」(マイケル・サンデル教授のもじりです)ですね。
「社会の見方」カテゴリーアーカイブ
公営住宅の課題の変化、建設から住民の支援へ
朝日新聞12月13日朝刊の1面は「公営住宅1/4が高齢独居」でした。朝日新聞が、都道府県と政令指定市を対象に調査したところ、全国の公営住宅で、一人暮らしの高齢者が全世帯の4分の1を占めているそうです。孤独死も多発していて、昨年度1年間では計1,320人に上っています。
公営住宅は、家を持てない人への住宅供給のために建てられました。戦後そして高度成長期に、住宅不足の対策として数が急がれたのです。そしてこの政策は、持ち家助成のための低利融資とともに、成功したといって良いでしょう。
しかし、時代とともに、課題が変わってきました。住宅の戸数は、数だけ見れば余っています。他方で、この記事が取り上げているように、住人の暮らしやつながりが問題になりました。高齢単身者だけでなく、生活保護世帯や、何らかの問題を抱えて支援を必要としている人たちの住宅にもなっています。
多くの自治体で、公営住宅は土木部の所管です。これまでは、建設することが目的でしたから。しかし、現在の状況を見ると、課題は建設ではなく、住んでいる住民の生活支援です。すると、民生部の所管なのかもしれません。また、建設なら、民間企業に委託することもできます。しかし、生活支援やつながりの維持は、やり方自体を模索中です。この問題は、復興に際しての、仮設住宅でも同様です。
拙著『新地方自治入門』で、戦後の地方行政が「役所によるモノとサービスの提供」において大成功を収めたこと、そしてその課題は終わり、「住民の関係と参加」に移っていることを主張しました。「ハードからソフトへ」「物からつながりへ」と表現する人たちも、おられます。
社会の変化とともに、行政の役割が変わり、新しい行政の手法が求められています。この記事を読んで、公営住宅に求められている政策が変わっていることを、実感しました。
倫理と法。生殖補助医療
11月23日の日経新聞「日曜に考える」は「生殖補助医療、どう法整備」でした。夫婦間の不妊治療(人工授精、体外受精)は、親子関係に問題を生みませんが、第三者が関わると難しい問題が起きます。夫婦以外の人からの精子や卵子の提供、代理出産です。問題が多いので法律で禁止するという案もありますが、子供を望む親がたくさんいるので、反対も多いでしょう。そして、隠れて行う人や海外に行って行う人が出てきます。
第三者が関わった場合、誰を親と認めるのか。ここから法律の世界に入ります。親子関係を定める必要があるのです。精子を提供してもらった場合、父親はその男性か、生んだ女性の夫か。卵子を提供してもらった場合、母親は卵子を提供した女性か、生んだ女性か。代理母出産をした場合、母親は誰か。提供者をわからないままに、提供を受けた夫婦の子供にするのが、子供の幸せのような気もしますが、親を知りたいと思う子供の声にどう答えるか。
医療技術が進歩したから、出てきた問題です。現行の民法は、想定してません。どれが正しいという問題ではないので、答えを出すのは難しいです。
「臓器移植を進める際に、何をもって死と認定するか」を決めるときもそうでした。役所(官僚)が検討して、答えを出すことができるテーマではありません。論点は整理できますが、政治が決めなければなりません。倫理を政治がどう扱うか。政治や行政を論じる際の重要なテーマだと思うのですが。教科書には、出てこないようですね。
坂根社長。日本企業、ボトムアップと現場の強さ
日経新聞「私の履歴書」11月は、坂根正弘・元コマツ社長です。11月21日の「現地化の限界」から。
・・2度目の米国駐在は、日本企業と米国企業の強みと弱みを見極める貴重な機会だった。日本企業には米国流の経営を見習って改めるべき点も多いが、逆に「日本のほうが文句なく優れている」と感じた部分もある。それは生産現場の能力の高さだ。
当時交流のあった社外の米国人の一人に、デトロイト・ディーゼル社のペンスケ会長がいた。弁舌さわやかで指導力に富んだ米国産業界で著名な人物だったが、その彼が「どんな優れた経営者もQCDの問題は解決できない」と漏らしたことがある。
QCDとは、クオリティー(品質)、コスト(費用)、デリバリー(納期)の頭文字で、製造現場の実力を測る最も重要な指標だ。ところがペンスケ会長によると、経営トップがいくら旗を振っても、それだけではQCDは改善しない。現場がやる気を出して、地道な努力を日々重ねることが絶対条件。その意味で「ボトムアップの弱い米国企業には限界がある」というのが、彼の嘆きだった・・
アメリカの会社で、坂根社長は、日本人をできる限り減らして、米国人に置き換える方針をとります。しかし、ただ一つ「これだけは現地化が難しい」と感じた職種があります。生産技術者です。アメリカでは、新機種の設計を手がける開発技術者と、工場の設備企画や改善を進める生産技術者の間にステータスの違いがあって、前者が後者より上なのです。だから優れた技術者が、工場に行きたがらないのだそうです。それに対して、日本の多くの大手メーカーでは、開発と生産が対等の立場で協力します。坂根社長の自信は、コマツを回復に導きます。詳しくは原文をお読みください。
カラオケの隆盛
11月24日の日経新聞経済欄に、林三郎・第一興商社長のインタビュー「カラオケから見る消費」が載っていました。カラオケボックスを運営している会社です。記事の主たる内容からは、ずれますが、興味深かった点を紹介します。
「少子高齢化でアルコール離れも進んでいます。カラオケ市場への影響はどうですか」という問いに。
・・夜の生活を楽しむナイトマーケットは年々着実に縮小している。全体的に酒を飲まなくなっているほか、当社がカラオケ機器を提供しているスナックやバーなどの経営者の高齢化が進み、廃業も増えている。このためカラオケ参加人口は2013年が4710万人で、直近のピークである1995年に比べると2割減少している・・人は酒を飲まなくなったとはいえ、どこかで発散する場所が必要なわけで、手軽なレジャーの場として安定需要が見込める・・確かに若者人口は減っているが、最近はシニアや家族連れの利用が増えている。ファミリーが利用したり、高齢者が歌の練習をしたり、昼間の需要が盛り上がっている・・