カテゴリーアーカイブ:社会の見方

大腸菌は悪者か

2017年10月26日   岡本全勝

大腸菌って、悪いイメージがありますよね。「海水浴場の水から大腸菌が検出された」といったニュースを聞くと、汚いと思います。ところで、大腸菌はそんなに悪い細菌ではないと、知っていましたか。例えば、どのような病気を引き起こすか。すぐに思い浮かばないですよね。
大腸菌は、そんな悪玉ではないのだそうです。一部の菌を除いて、病原性はないのです。では、なぜそんな悪玉のイメージがあるのか。
「腸内に生息する菌であることから、この菌の存在は糞便による水の汚染を示唆し、河川、湖、海水浴場などの環境水の汚れの程度の指標として用いられる」(ウィキペディア)のです。
大腸菌が病気を引き起こすなら、人類全員が毎日、下痢をしていたでしょう。

ウーバー。便利さと安心を支えるスマートフォンの機能

2017年10月22日   岡本全勝

10月17日の日経新聞夕刊「窮地のイエローキャブ」を伝えていました。ニューヨークで、タクシーの乗客より、ウーバー利用者の数が多くなったのです。
ウーバーは、スマートフォンを利用した、タクシー配車の仕組みです。と言っても、アメリカでは車はタクシーでなく、一般の乗用車が使われます。すなわち、普通の自家用車と運転手が、有料で客の送り迎えをするのです。

私も、この夏にアメリカに行った際に、利用しました。私はスマホを持っていないのと、使い方が分かりません。現地の同行者が、送り迎えに使ったのを見ていました。彼がスマホに、今の場所と行きたい場所を入力すると、しばらくして、引き受けたい運転手から応答があります。金額も表示され、明瞭です。
「危なくないのか?」と聞きましたが、運転手も登録されていて評価も受けるので、そんなことはできないとのこと。支払いもスマホでするので、現金の受け渡しもありません。ぼったくりも、取りはぐれもなく、客も運転手もお互いに襲われる心配もありません。
「これだと、そのうちにタクシーは、一部を除いてなくなるのではないか」というのが、私の感想でした。アメリカでは、タクシー免許がなくても一般の人が有料の送迎をできます。普通のおじさんが、空いた時間でアルバイトをしているのです。タクシー業界と競合します。その実態が、冒頭に紹介した記事です。

スマホという機能が、申し込み、応答、支払いという手続きだけでなく、「安全の保障」を支えているのです。
これに似たものとして、自転車シェアリングがあります。これも、借り主が必ず借りた自転車を返すことや支払いを、スマホが保証しているのです。いちいち窓口に行って会員登録をしたり、保証金を事前に納めたり、利用に応じて現金で支払ったりする必要がありません。ほかの事業にも広がるのでしょうね。

第三次産業革命

2017年10月18日   岡本全勝

10月17日の日経新聞オピニオン欄、ジェレミー・リフキン氏の「迫り来る第3次産業革命 」から。
・・・19世紀以降、世界は2回の産業革命を経験してきた。1回目は19世紀で、中心的な存在は英国だった。2回目は米国を舞台に20世紀前半に起きた。今はそれに続く3度目の産業革命が生起しつつある。今回の産業革命は、私たち人類が地球温暖化や富の格差といった難問を克服していくうえで、大きな威力を発揮するだろう。

過去の2回を振り返ると、単なる個別の技術革新にとどまらない、イノベーションの連鎖反応が起きていたことが分かる。その結果、3つの非常に重要な分野、すなわちエネルギーとモビリティー(移動手段)、そして情報伝達の領域で同時並行的に飛躍的な変化が起き、社会の姿や生産様式を一変してしまった。
第1次革命では蒸気機関の発明によって、人手や家畜とは比べものにならない、桁違いの動力を人類が使えるようになった。その結果、大量生産に適した近代的な機械化工場が登場し、大量のヒトや物資を遠くまで運べる鉄道や蒸気船も普及した。電信サービスが商用化されたのも19世紀半ばのことだ。
第2次革命のエネルギーは電力が、最初は工場に、続いて家庭に普及した。モビリティーでは自動車が誕生し、コミュニケーション手段としては電話が注目を浴びた。この時現れた新技術は今の私たちにとってもなお身近なものだ・・・

第3次革命がどのようなものか。それは原文をお読みください。私は、情報の革命は同意しますが、エネルギーと移動手段は、「そうかな」とやや疑問です。

「第3次革命の結果、バラ色の社会が到来するのでしょうか」という問に。
・・・私はユートピア主義者ではないので、そうは言わない。逆に人類が明るい未来を手にするには、とにかく第3次革命を成功させなければいけない、と訴えたい。このまま人類が化石燃料への依存を続け、温暖化が進めば、大惨事が起きる。気温がセ氏1度上がれば大気に含まれる水蒸気は7%増え、それだけ大型のハリケーンや豪雨、洪水が増えるだろう。私の住んでいる米東海岸のボストンでも昨年は2.5メートルの積雪があり、異常気象を実感した。「環境の激変で今世紀末までに今地球にいる生物種の半分は死滅する」と予言する生物学者もいる。
もう一つの問題は富の格差だ。14年には世界で最も豊かな上位80人が保有する資産は、世界の全人口の貧しいほうの半分が持つ資産の総和に等しかった。第3次革命により貧しい人にも教育の機会が与えられ、資本力の乏しい小さな企業でも事業のチャンスが広がれば、富の格差が縮小の方向に向かうかもしれない・・・

そうですね。産業革命は技術の革命であるとともに、いえそれ以上に、社会がどのように変わったかで判断されるものです。すると、新しい技術を人類がどのように使うかによって、社会は変わってきます。
第一次革命で、農業社会から産業化社会になりました。農民から工場労働者になったのです。第二次革命では、豊かで便利になりました。勤め人がさらに増え、ホワイトカラーが増えました。大衆社会と民主主義が定着しました。では、第三次革命では、私たちの暮らしはどうなるか。それがまだ見えないのです。

日本の美

2017年10月16日   岡本全勝

皇居で、天皇陛下がサウジアラビアの皇太子を引見された際の写真が、話題になっています。お部屋のつくりです。「笹川陽平さんのブログ」を読んでください。
この日本の簡素の美は、諸外国の人にわかってもらえるでしょうか。観光で行くお城などは、装飾も置物も、これでもかというくらいに飾ってありますよね。

長谷川貴彦著『イギリス現代史』

2017年10月8日   岡本全勝

長谷川貴彦著『イギリス現代史』(2017年、岩波新書)が、勉強になりました。
かつて、近藤康史著『分解するイギリス―民主主義モデルの漂流』(2017年、ちくま新書)を紹介しました(2017年7月2日)。後者は、民主主義の母国イギリス政治の変容を分析した本です。前者は、第2次大戦後のイギリスを、首相と政党・その政策の変化によって説明した本です。
ただし、狭い政党政治の世界だけでなく、それを生みだした社会の変化、あるいはその政策が変えた社会を説明しています。戦後の福祉国家とケインズ政策から、サッチャー首相に代表される新自由主義、そしてその延長としてのブレア首相の「第三の道」。二大政党制の機能不全。

社会は、経済成長を続けつつも、アメリカの台頭と帝国の解体による栄光の低下、ポンドの価値の低下が続きます。イギリス病とサッチャリズム。製造業から金融情報業への転換。リーマン・ショック。上流階級と労働者という階級区分が、中間層の増加で薄くなり、他方でアンダークラスと呼ばれる漏れ落ちた白人層が生じ、製造業の衰退は活力のない地域を生みます。移民の増加も、社会を変えていきます。既成秩序に異議を申し立てる若者、パンクロック。スコットランド独立運動、北アイルランド問題。
社会の亀裂、地域の分裂。それを、政治がどのように扱っていくのか。やはり、イギリスは一つのお手本です。

イギリス社会の変化を分析した本としては、アンドリュー・ローゼン著「現代イギリス社会史、1950-2000」(2005年6月、岩波書店)を紹介しました。これも、伝統と秩序の国が大きく変化したことを、様々な分野から分析しています。

本書は、新書という制約の中で、というか新書という形の故に、わかりやすい時代区分と、鮮やかな切り口で、イギリス社会と政治の変化を説明してます。分厚い本より、この方がわかりやすいですよね。もちろん、大胆に特徴づけ分析するのは難しいことです。
戦後の日本社会、あるいはもう少し時期を絞って高度成長期以降の日本社会の変化を、簡潔に分析した本はありませんかね。社会がどのように変わったか、その際に経済や政治がどのように関与したかです。そこを、どのような角度から切り取るか。そこに、筆者の力量が示されます。