カテゴリーアーカイブ:社会の見方

まだ外国人には不親切な日本

2018年4月28日   岡本全勝

先日の夜のことです。地下鉄新宿3丁目駅で乗り換えた時、プラットフォームでまごついている白人女性2人がいました。英語で声をかけると、柱に表示された丸ノ内線の駅の一覧を示しながら、「中野新橋駅に行く方法がわからない」とのこと。

中野新橋駅は、丸ノ内線の支線にある駅です。ほとんどの列車は、本線の荻窪駅行きなので、途中の中野坂上駅で乗り換えます。
確かに、案内表示を見ても、直ちには理解できません。本線の駅が順に並んだ後、支線の駅が並んでいるのです。乗り換えることは、日本語表示でした。彼女たちは、英語の路線図も持っているのですが、小さくてよくわかりません。
と言うか、知っている私には理解できるのですが、初めての人には難しいでしょうね。駅のアナウンスは、「方南町方面は中野坂上駅で乗り換えです」と繰り返していますが、日本語でした。英語でこれですから、ほかの言語だと、もっと苦労するのでしょうね。

英語で説明したのですが、私の英語が通じているか不安だったので、「中野坂上駅まで一緒に行くから」と一緒に乗り込み、中野坂上駅では列車から降りて誘導しました。
オーストレイリア(オーストラリア)から休暇で来た、ご婦人と娘さんでした。聾唖者の学校の先生でした。
さび付いた私の英語では、説明は苦労しながらもできるのですが、聞き取るのは難しいです。

伊藤聖伸著『ライシテから読む現代フランス』

2018年4月25日   岡本全勝

伊藤聖伸著『ライシテから読む現代フランス』(2018年、岩波新書)を読みました。ライシテとは、日本では耳慣れない言葉です。「フランスでの政教分離」と訳すとわかりやすいです。「ウィキペディア」。しかし、フランスでは大革命以来、日本では理解できないほどの、厳しい歴史があります。かつて、谷川稔著『十字架と三色旗―近代フランスにおける政教分離』を紹介したことがあります。

政教分離と言っても、各国の歴史的背景、社会での変化によって、状況が異なります。時代によっても変わります。
西欧では、キリスト教が広まる際に、ローマ帝国(皇帝)との戦いがあり、その後、国教となります。中世は、「カエサルのものはカエサルに」と、共存・相互分担でした。王様が、教皇から破門されることもありましたが。フランス革命で、キリスト教は国教の地位を追われます。しかし、教育は実質的に教会が担っていました。国民の多数も、教会に行くのです。その後、教育が世俗化する過程も、興味深い物があります。フランス革命は、身分を取り払うとともに、その支えであった宗教やギルドなど「中間集団」を認めず、国家が国民を直接支配することを目指します。
さて、「カエサルのものはカエサルに」と共存していた政治と宗教が、再度、緊張関係に立ちます。イスラム教徒の増加です。イスラムそれも原理主義は、政教分離でなく、一体です。
またスカーフをかぶることを、政教分離として認めるのか、逆に政教分離だから認めないか。難しい問題が生じます。

日本では、「八百万神」という考えが主流で、どのような宗教も許容します。しかし、スカーフをかぶるイスラム教徒が増加した場合、どのようになるでしょうか。輸血や手術を認めない宗教の信徒が、けがをして病院に運ばれた場合、医師はどのように対処したら良いのでしょうか。「政教分離」では解決しない問題が出て来ます。
「ほかの宗教も認める」という立場だから、複数の宗教が並存できます。「我が神が絶対第一だ。ほかの神は認めない」という宗教だと、政教分離は成り立ちません。

社会の分断や亀裂を、どのようにまとめ、統合するか。そこに、政治の役割があります。宗教は、統合の仕組みでもあり、他者との排除の仕組みでもあります。
ここには書き切れないほど、難しい問題です。新書ですが、深く考えさせる本です。お読みください。

フェイスブックの功罪

2018年4月23日   岡本全勝

4月16日の日経新聞オピニオン欄、ジョン・ギャッパー氏(ファイナンシャルタイムズ)の、「フェイスブック 「つながり」管理に限界」から。詳しくは原文をお読みください。
・・・フェイスブックはすでに、従来おざなりだった個人情報の管理を厳格化した。ところが対処できない問題もある。20億人のユーザーの無数のやり取りの中であらゆるコンテンツがウイルスのように拡散し、人々の感情や行動を左右する可能性があることに対してだ。
フェイスブックはザッカーバーグ氏が創業当初に描いた「愛する人たちとのつながりを維持し、自分の意見を表明し、コミュニティーやビジネスを築く」ようなやり取りを促したいと考えている。
それは賢明なことだろうが、問題の核心からは外れている。というのも、フェイスブックは米社会学者マーク・グラノベッター氏が言うところの「強い紐帯(ちゅうたい)」と「弱い紐帯」を特に区別しないことで急成長したからだ。前者は家族や友人、同僚との親密な関係を指す。後者は遠い知り合いや他グループの人々とのつながりだ。フェイスブックでは全ての「友達」が平等だ・・・

・・・グラノベッター氏が指摘した通り、弱い絆が強い絆より役立つこともある。例えば職探しだ。身近なところで仕事を探すより、幅広い人脈を活用した方がいい。
フェイスブックの95万7000人のユーザーと彼らがつながっている5900万人を分析した調査では「ほとんどのつながりは弱く、人脈も限定的で、やり取りも少な」かった。だからこそ、フェイスブックは「社会的隔たりを超え、幅広い層の人々に情報を伝える強力な手段」となったといえる。ある研究によると、人は気分や行動、そして体重の増減までも弱い絆の相手に影響されるという。
フェイスブック上で家族と遠い知り合いや、強い紐帯と弱い紐帯の境界があいまいになる問題点はまさにここにある。こうしたつながりは思い通りにはならず、良いことも悪いことも増殖していく・・・

歴史の見方の変化

2018年4月21日   岡本全勝

長谷川貴彦著『現代歴史学への展望』(2016年、岩波書店)を読みました。
歴史学は、20世紀に大きな変化を遂げたようです。かつては、政治を中心にした歴史でした。また、マルクス経済学による歴史の見方が、力を持ちました。歴史小説や英雄を中心にした歴史物もあります。戦前日本の皇国史観もありました。ブルクハルトやホイジンガのような文化史(ハイカルチャー)もありました。

20世紀初頭までの「事実を発見し記述すれば歴史になる」といった見方を、見る人の視点によって歴史記述は変わることを、E・H・カーは「歴史とは現在と過去との対話である」と表現しました。その後、社会史が大きな流れになり、さらに文化史(庶民を含めた文化)に広がりました。

これら歴史学をどのように理解したら良いのか。すなわち「学派」を、どのように配置したら良いのかを知りたかったのです。良い概説書を見つけることができません。長谷川先生の本は論文集ですが、私の疑問に答えてくれました。
西洋絵画を見る際に、「西洋画の歴史案内」を読むと、それぞれの絵の位置づけがわかりやすいです。それと同じように、新書程度のもので、一般向けに史学史を解説してくださると、便利なのですが。

文化や経済といった社会構造が、どの程度、歴史を規定するのか。人という主体が、どの程度、主体性を持つのか。その相互関係なのでしょう。
他方で、見る人が何を主題にして、どのような思考の枠組みで歴史の事実を見るのか。それによって、取り上げられる事実は偏り、記述は違ってきます。
しかし、「見る人の数だけ歴史がある」では、私たちは困ります。それらの配置図が欲しいのです。さらに勉強を深めるべく、関連図書を読んでいます。

生産性を上げるために、サービスは有償

2018年4月18日   岡本全勝

4月12日の朝日新聞オピニオン欄「サボりのススメ」、海老原嗣生さん(雇用ジャーナリスト)の「完璧求める意識変えては」から。
・・・生産性とは、アウトプットつまり成果を、インプットすなわち労働量で割ったものです。成果が一定なら、時間をかけて丁寧な仕事をするだけ生産性は下がります。極端なことを言えば、仕事をいい加減にして労働時間を減らした方が生産性は高まるんです。
日本で「生産性を上げる」というと、労働時間は減らさずに仕事を効率的にして、もっと成果を増やすことを意味します。これは、企業の問題というよりは、生産性に結びつかないものを社会が求めていることがあると思います。
たとえば日本は返品をゼロに近づけようとしますが、欧米は「不良品があれば返品してもらえばいい」という発想です。不良品率を1%から0・1%にするために労働時間が1割増えれば、生産性は落ちてしまうのに、日本はクレーム社会のために不良品には不満や文句がつき、返品すればいいという話にはなりません。社会が完璧を求めて、生産性を下げているんです。

「お客様は神様」の意識も問題です。「明日までに終わらせて」「いくらでやってくれ」と納期や金額の条件を示されると、「できません」と言いづらい。海外は「モノやサービスとお金の等価交換」という意識なので、客が厳しすぎる要求をすれば「やりません」で済みます。
そもそも、「サービス残業」が「無給残業」の意味で使われているのがおかしいんですよ。サービスには対価が伴うのが当然ですが、日本では「サービス=無料」という意識が根強くあります・・・

同じく、中田克哉さん(八重洲地下街相談役)の次の発言には、私も経験があります。
・・・ 当時は右肩上がりの時代で、土日出勤や残業は当たり前でした。一方で、会社には社員の息抜きを許容する余裕があったと思います。時間の流れも緩やかで、ラジオで高校野球の中継を聞きながら仕事することもありました・・・