カテゴリーアーカイブ:社会の見方

アルファベット日本語

2020年1月12日   岡本全勝

困るハイブリッド語」の続きです。
これまで私が批判していたのは、英語をカタカナに置き換えた、カタカナ語(カタカナ英語)です。しかし、ここで取り上げられているのは、カタカナにも変えないアルファベット表記のままの「日本語」です。

フランスでは、アカデミー・フランセーズ(フランス学士院の一部)が、フランス語を守り、質を維持していると聞いたことがあります。日本では、国語研究所でしょうか。
そのような仕組みも重要でしょうが、新しい言葉を広める人たちの認識がもっと重要です。

第一はマスコミです(おっと、これもカタカナ語です)。NHK(これはアルファベット表記。日本放送協会)と、朝日新聞をはじめとする新聞社はその代表でしょう。
「NHK」と私たちは何気なく話しますが、これも日本語の文章に入れると、据わりが悪いですね。「エヌエイチケー」と表記するのでしょうか。アナウンサー(これもカタカナ)が読む原稿は、どのような表記になっているのでしょうか。
公共放送を任じるなら、もう少し日本語を大事にして欲しいですね。BS、Eテレ・・こうしてみると、罪深いですね。
役所も、変なカタカナ語を使う罪においては、同罪ですが。

IT関係者(これもアルファベット表記)も、罪は深いです。ITを「イット」と発音した政治家がおられましたが、それを責める方が悪いですよね。
ディスプレイ、キーボード、デフォルト、インターネット、ウエッブ・・・。漢字に置き換えることはできませんかね。画面、鍵盤、初期設定などなど。
業界用語を、そのまま世間で使うからです。一般の人向け、すなわち、中学生や高齢者にも通じるような日本語に置き換えて欲しいです。あるいは、新しい言葉をつくるとか。

国語の時間に、JRやNHK、ITといった言葉をどのように発音するのか、教えているのでしょうか。
「AKB48」はアイドルグループの名前なので、そんなものかと思いますが。これが日本語の文章の中に入ってるとき、どのように発音するのか。国語の教科書に出て来たら、教師も生徒も困るでしょうね。「よんじゅうはち」とふりがなを振ったら、誤答でしょうか。
この項続く

被災外国人に、やさしい日本語

2020年1月11日   岡本全勝

田村太郎さん(注)が、NHK大阪のニュース「被災外国人にやさしい日本語」(1月7日)に登場しました。

ちょうど昨日、このページで、通じないカタカナ語について書いたところです。
日本語になっていない、しかし日本人はそれで通じると思っているカタカナ語(カタカナ英語)、さらにはカタカナにもしないアルファベットのままの単語は、外国人にはわかりにくいです。特にアジアから来ている人には、難しいです。日本人でも高齢者は、困ります。
災害時は、特に伝わることが重要です。

このニュースは、13日朝の「おはよう日本」でも、放送されるとのことです。
(注)このホームページにしばしば登場する、災害支援などを行っているNPOの代表者。先日も「災害時施設運営管理者研修」に登場しました。

困るハイブリッド語

2020年1月10日   岡本全勝

1月9日の日経新聞「私見卓見」は、玉盛映聿・内閣府沖縄総合事務局道路案内標識ローマ字英語表示検討会委員「意味不明瞭なハイブリッド語見直しを 」でした。

・・・在日外国人の友人たちが「日本のハイブリッド語は理解するのが難しい」と言う。ハイブリッド語とは、日本語にアルファベットをミックス(混在)させた表記のことだそうだ。日本語はなんとか理解できても、アルファベットがわからない。外国語のつづりなのか、日本語のローマ字表記か、あるいは和製の外国語か、区別がつかずに困るという・・・
・・・観光客向けレンタカー案内の「1BOXカー」。「ワンボックス」と読む和製英語だ。日本語を覚えた友人は「いち・ボックス」と読んでしまったそうだ。求人広告の「ネイルOKクリニック」もわからない。注意書きを読んで、若い人のネイル(付け爪)をOK(許容)している職場であるクリニックだと理解できたという・・・
・・・訪日外国人客の8割がアジアからである。英語圏からの観光客と違い、アルファベットは苦手だという声が多い。そこで観光ルートの案内標識と関連施設では、中国語、韓国語、タイ語などの表記を用意している。しかし街中は依然、英語、フランス語、イタリア語などの単語に日本語のローマ字と和製外国語が混在したハイブリッド表記であふれている・・・

同感です。英語らしく表記した会社名や商品名は、日本語の文脈になじまないのです。
例えば、JR(ジェイアール)です。これだけでは、初めて見た人は、鉄道会社とは思わないでしょう。また、この単語を日本語の文章の中に入れてみてください。JRでは、据わりが悪いですよね。俳句や短歌には、「ジェイアール」で入れるのでしょうか。みんなが利用する鉄道ですから、もう少しわかりやすい略称はないのでしょうか。

最近よくニュースで取り上げられる「IR」も、わかりませんね。複合観光施設だそうです。これもよくわからない。カジノがある行楽地だそうですが。カジノも日本語ではありません。しいて言えば、賭博場でしょうか。
マンションの名前にも、訳のわからない、英語のような表記やカタカナ語があります。それがかっこよいと思っているのでしょう。

現代人の造語能力の低下を、嘆きます。明治人は苦労しながら、西洋語を日本語に置き換えました。哲学、化学、科学などなど、これが英語をカタカナにしただけの言葉(フィロソフィー、ケミカル、サイエンス)になっていたら、私たちも理解するのに苦労したでしょう。

かつて、次のようなことを書きました。「私の嫌いな言葉」(2006年4月26日)
「ロシアに出張したとき、同行した職員がロシアの友人への土産に「外来語辞典」を持って行きました。彼はロシアで暮らしたことがあり、日本語を勉強している友人への土産だというのです。私は、最初その意味が分かりませんでした。
「何で、そんなの持って行くんや」
彼曰く、「ロシア人にとって、日本語を勉強するとき、カタカナ英語は分かりにくいものなのです」・・・」
この項続く

労働における負の連鎖

2020年1月9日   岡本全勝

12月31日の日経新聞経済教室、小原美紀・大阪大学教授の「貧困の現状と対策(下)労働巡る負の連鎖を断ち切れ」から。

・・・日本の世帯間格差は2000年代後半まで緩やかに拡大した後、高止まりしている。18年の経済協力開発機構(OECD)統計によれば、他の先進諸国でも同じ傾向にある。先進国の格差拡大の背景には高齢化の進展がある。加齢とともに世帯間格差は通常拡大するので、高齢者が増えれば社会全体の格差は大きくなる。
また技術革新とともに教育を受けた者とそうでない者の差も拡大したといわれる。高度な技術を使える者への収益が相対的に増えたことに加え、技術に見合う教育を受ける者が増えていないことも指摘される。
だがこれらだけでは日本の世帯間格差の特徴を説明できない。日本では働いているかどうかの差よりも、働いている者の中での格差が拡大している。特に低所得階層の増加が背景にあるといわれる。これは所得よりも、包括的な世帯の厚生(満足度)を表すとされる消費でみた場合にも当てはまる。多くの先進国でみられる高所得層がますます富む現象とは異なる特徴だ・・・

・・・このように、働きながらも低い階層に分類される世帯の経済厚生は低いとされる。その何が問題なのか。一つにこのグループに属する世帯が将来を考えた行動をとりにくいことがある。例えば不慮の事態、特に好ましくない出来事の発生に備えた貯蓄や投資がなされにくい。そして予備的行動をとれない世帯の方が、負の出来事に直面する確率が高く、発生したときの厚生の損失が大きい可能性もある。このことは個々の世帯の問題にとどまらない。社会全体の厚生の損失だ。
さらにそうした世帯に子供がいれば、予備的な行動をとらないことは長期的な厚生の損失につながる。次世代への負の連鎖である。「Great Gatsby Curve」として知られるように、格差が大きい国で階層移動が少ないという関係がある。これによれば格差が大きい社会では、低所得階層の親から生まれた子供が低所得階層にとどまる確率が高い・・・

・・・貧困層を含む低所得階層で負の連鎖が起きる背景に意欲を持てないことがあるのならば、推奨される行動をとったときに得られる便益を高める必要があるだろう。例えば子供が医療サービスを受けるといった将来のためになる消費に対する補填が求められよう。子供の厚生でいえば、子供が選択する高等教育への補助拡充も望まれるだろう。消費に対する補助ならば、労働意欲を阻害しない。
労働に関する負の連鎖については、厚生の損失が長期にわたり発生するならば、なるべく早い段階でそれを断ち切る政策が必要だろう。若い時点の方が高い生産性を引き出せるし、社会への貢献も大きい。
貧困層を含む低所得層への補助政策には反対意見も聞かれるが、その多くは意欲を阻害することに対する批判だ。そもそも最初に生活困窮状態に陥ったのは、本人の非によるものだけではない。また理由は何にせよ、生活困窮に陥った者の生活補填は社会的費用となる。さらに格差の存在が機会の平等をゆがめることで階層移動の少なさにつながっているならば、政策で是正されるべきだろう。
次世代の高い生産性を引き出すためにも、貧困層の意欲を阻害しない補助政策が社会全体のため必要だ・・・

ネット口コミ

2020年1月7日   岡本全勝

日経新聞「やさしい経済教室」、菊盛真衣・立命館大学准教授 の「ネット口コミを読み解く」。「(4) 「星」の数は頼れるか」(12月25日)、「(5) 「星」のばらつきに注目 」(12月26日)から。

・・・あなたは友人へのギフト用に大手通販サイトでワインを探しています。商品は5つ星で格付けされ、その横には総合評価を示す点数が表示されています。大半は総合評価が3点台で星3つですが、その中に総合評価が4.7点で、星が4つ半のワインを見つけました。これ以外のワインを探したくなるでしょうか? 多くの人が探すのをやめるでしょう。このように星の数で商品を評価してしまうことが、e口コミの「星の罠(わな)」です。・・・
・・・星の数、つまり総合評価が消費者の購買決定に影響するのは、人が確証バイアスに陥るためです。確証バイアスとは、最初に抱いた考えを支持する情報を重視する傾向です。星の数が多いと、消費者はその商品の品質が購買者から高く評価されていると判断します。その商品を良いと信じた消費者は、個々のe口コミを読み進める際に、自分の考えと合わない否定的な内容より、自分の考えを支持する肯定的なものばかりに注目し、その影響を受けて購買に至ります。逆に星の数が少なければ、品質が悪いと早々に見なして選択肢にすら入れません。・・・

・・・総合評価を表す星の数に頼って商品選択をしてしまう「星の罠」。この罠に陥らないための対処法は、星の「ばらつき」に目を向けることです。
e口コミの投稿者は商品を5段階で評価しています。5つ星はその商品が非常に良かったことを、1つ星は極めて粗悪であったことを意味します。大手通販サイト上では、投稿者の評価の分布が棒グラフで視覚化され、1つ星から5つ星までの各段階で、それぞれ何件投稿されているかが一目で把握できます。この評価が一致しているか分散しているか、分布の状況に注目するのです。

星のばらつきを見極めるポイントは、商品のタイプによって異なります。総合評価が3点で3つ星が付いていても、5つ星と1つ星に投稿者の評価が二分している方が購買意欲が高まる商品と、3つ星に集中している方が購買意欲が高まる商品があることが、近年の研究で分かっています・・・

このほかに、投稿の信頼性も推測することができます。多くの人が5つ星や4つ星なのに、一人だけ1つ星の場合。全体傾向とは違う趣味や判断の人なのでしょう。逆に、多くの人が3つ星なのに、一人だけ5つ星の場合。趣味の違う人なのか、サクラなのか。