困るハイブリッド語

1月9日の日経新聞「私見卓見」は、玉盛映聿・内閣府沖縄総合事務局道路案内標識ローマ字英語表示検討会委員「意味不明瞭なハイブリッド語見直しを 」でした。

・・・在日外国人の友人たちが「日本のハイブリッド語は理解するのが難しい」と言う。ハイブリッド語とは、日本語にアルファベットをミックス(混在)させた表記のことだそうだ。日本語はなんとか理解できても、アルファベットがわからない。外国語のつづりなのか、日本語のローマ字表記か、あるいは和製の外国語か、区別がつかずに困るという・・・
・・・観光客向けレンタカー案内の「1BOXカー」。「ワンボックス」と読む和製英語だ。日本語を覚えた友人は「いち・ボックス」と読んでしまったそうだ。求人広告の「ネイルOKクリニック」もわからない。注意書きを読んで、若い人のネイル(付け爪)をOK(許容)している職場であるクリニックだと理解できたという・・・
・・・訪日外国人客の8割がアジアからである。英語圏からの観光客と違い、アルファベットは苦手だという声が多い。そこで観光ルートの案内標識と関連施設では、中国語、韓国語、タイ語などの表記を用意している。しかし街中は依然、英語、フランス語、イタリア語などの単語に日本語のローマ字と和製外国語が混在したハイブリッド表記であふれている・・・

同感です。英語らしく表記した会社名や商品名は、日本語の文脈になじまないのです。
例えば、JR(ジェイアール)です。これだけでは、初めて見た人は、鉄道会社とは思わないでしょう。また、この単語を日本語の文章の中に入れてみてください。JRでは、据わりが悪いですよね。俳句や短歌には、「ジェイアール」で入れるのでしょうか。みんなが利用する鉄道ですから、もう少しわかりやすい略称はないのでしょうか。

最近よくニュースで取り上げられる「IR」も、わかりませんね。複合観光施設だそうです。これもよくわからない。カジノがある行楽地だそうですが。カジノも日本語ではありません。しいて言えば、賭博場でしょうか。
マンションの名前にも、訳のわからない、英語のような表記やカタカナ語があります。それがかっこよいと思っているのでしょう。

現代人の造語能力の低下を、嘆きます。明治人は苦労しながら、西洋語を日本語に置き換えました。哲学、化学、科学などなど、これが英語をカタカナにしただけの言葉(フィロソフィー、ケミカル、サイエンス)になっていたら、私たちも理解するのに苦労したでしょう。

かつて、次のようなことを書きました。「私の嫌いな言葉」(2006年4月26日)
「ロシアに出張したとき、同行した職員がロシアの友人への土産に「外来語辞典」を持って行きました。彼はロシアで暮らしたことがあり、日本語を勉強している友人への土産だというのです。私は、最初その意味が分かりませんでした。
「何で、そんなの持って行くんや」
彼曰く、「ロシア人にとって、日本語を勉強するとき、カタカナ英語は分かりにくいものなのです」・・・」
この項続く