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社会

発達障害の児童生徒への支援

年末に、児童生徒の8.8%に発達障害の可能性があることを紹介しました。12月29日の日経新聞は、「学習困難な子 支援手探り」を伝えていました。

・・・学習などに困難を抱える児童生徒への支援が十分に行き届いていない。13日公表の文部科学省の調査で、通常学級の小中学生の8.8%に発達障害の可能性があるとされ、35人学級なら3人ほどの割合になる。このうち4割は授業中の個別の配慮を受けていなかった・・・

明治以来の、よい子を育てる、優秀な人を育てる教育は、よい成果を上げたのですが、他方で落ちこぼれる子供に対して十分な支援ができていませんでした。
優秀な生徒は比較的手がかかりません。教員が困るのは、ついてこられない生徒、家庭の事情で勉学に専念できない生徒支援や、モンスターペアレント対策でしょう。大学の教員課程でも、それらの技術が十分に教えられていないようです。

読売新聞の人生相談欄

読売新聞くらし欄に「人生案内」という、読者からの相談欄があり、識者が回答します。私も「こんな悩みがあるのだ」「私ならどのように回答するかな」と考えながら読んでいます。
12月25日は、2022年の回答者座談会でした。詳しくは本文を読んでいただくとして、そこに、相談内容が分析されています。

総数352件のうち、自分自身に関することが101件、家族に関することが204件、家族以外が47件です。家族の中でも、親が59件、夫が40件、子が37件です。
相談があった件数すべてではなく、紙面で取り上げたものですから、編集部による選択があるとしても。家族が、そして親が、一番の悩みになっているのですね。

男性的働き方が障壁

12月27日の日経新聞経済教室「ワーク・ライフ・バランス」、筒井淳也・立命館大学教授の「「男性的働き方」こそ障壁」から。

・・・「共働きが増えた」といわれるが、実態は「妻が短時間あるいはパートタイムで働いている世帯」の増加だ。22年版「男女共同参画白書」で示された共働き世帯数の長期推移をみると、フルタイムの共働きは1986年の男女雇用機会均等法施行以降も増え続けてきたわけではない。ここ数年間は増加が目立つが、全体としていまだに性別分業が基軸となった男性稼ぎ手社会だと言わざるを得ない・・・
・・・国も手を打ってきた。均等法施行以降、90年代からは段階的に公的保育と育児休業制度の拡充が図られてきた。仕事と家庭の両立のスローガンの下、女性を職場に招き入れ、育児期を中心とした支援が展開されてきた。保育制度は財源的問題も抱えているが、育児休業制度は21年の国連児童基金(ユニセフ)の政策評価で1位を獲得するなど、制度としては世界トップクラスだ。22年度からはさらに男性の休業が柔軟に取得できるようになった。
ただ、この方針だけでは性別分業の問題の改善は限られるだろう。ワーク・ライフ・バランスは、しばしば女性にとっての、しかも主に育児期における仕事と家庭の両立のことだと考えられているが、本来もう少し広い視野でとらえるべき課題だ。最終的な目標は、「両立」というよりは、私生活に強く影響する仕事の領域における負担(長時間労働や勤務地の変更など)を減らし、生活全体にゆとりをもたらすことだ。
辛うじて両立できていても、余裕がなければ女性は仕事を減らすしかない。雇用機会均等法は余裕のない男性的働き方の世界に女性を招き入れる制度であり、その後の改正もその方針に沿ったものだった。本来必要なのは男性的働き方のほうを改革し、女性が育児期でも男性と肩を並べて働ける環境をつくることだ・・・

・・・育児休業については、男女賃金格差を背景にどの国でも男性の取得率は女性よりもかなり低い水準にとどまる。日本も世界一と評される制度のポテンシャルを十分に活用できていないのは、男女賃金格差が他国と比べ大きいこと、管理職的立場まで昇進する可能性が男女で極端に異なることなど、日本の雇用における各種ジェンダー差の結果だ。
育休取得が女性に偏り、他方で多くの男性が取得しない、もしくは短期間の取得に抑えるのなら、育児休業制度は女性の継続就業率を上げられても、管理職への昇進機会と賃金格差を縮めるようには機能しない。
次に前述したように、雇用機会均等法は男性的働き方を温存したうえで、そこに女性が加わるための障壁を取り払うという趣旨で改正を重ねてきた。だが本来の障壁は男性的働き方そのものだ。働き方改革とセットでないと意義が小さい・・・

・・・改善に向けた方策はあるのか。男性的働き方を変えるうえでは、慢性的に時間外労働を要請する雇用制度が問題の根本であり、税・社会保障制度については政治要因も絡んで思い切った改革への筋道が見えにくい。変革には大きな副作用(失業増や一時的な家計圧迫)を伴う可能性があるだけに、過渡期における激変緩和措置の検討を含めた政治的決断が必要だ・・・

大学での職業教育

12月14日の日経新聞に「キャリア教育、46%が早期化 ジョブ型採用に備え」という、学長アンケート結果が載っていました。

・・・仕事内容と求める能力を明確にする「ジョブ型」を新卒採用でも導入する企業が増えている。即戦力になる新卒学生を求める企業も現れ始めた。日本経済新聞社が実施した学長アンケートで、変わる人材ニーズへの対応策について聞いたところ、157大学のうち5割弱がキャリア教育の早期化と答えた。一方で大学が職業訓練の場になる可能性を危惧する声も上がっている・・・
「職業訓練校化していくことが高等教育機関の使命ではない」という学長の発言も載っていました。

私は、大学とは職業教育の場で、教養も合わせて学ぶ場だと思っていました。私は、公務員になるために東大法学部に進みました。法学部だけでなく医学部も、職業訓練校です。大学に残って研究者になる人もいますが、多くの卒業生は公務員、法曹、医者になります。教育学部を出た人も、教師になるのでしょう。

東大法学部は、そもそもが官吏を養成するために作られました。当初は公務員試験も免除されていました。その後も、公務員試験、司法試験の予備校の機能があります。
この学校は、明治政府が先進国に追いつくために作った学校です。先進国から先進知識を「輸入」する学者と研究者を育成するとともに、社会でそれを実行する職業人を育てました。実用の学である工学部が大学に作られたのも、先進国では日本が最初だと聞いたことがあります。

大学進学率が5割を超えています。その人たちに、一般教養や専門研究教育を教えるだけでよいのでしょうか。
そのような教育を実施するのは、教員側の都合だと、私は思います。

給食の役割

12月14日の朝日新聞「給食の役割は、費用は誰が」、藤原辰史・京都大准教授「公が担う「家族の枠組み出たケアの場」」から。

――無償化に対して「みんなが無関心になって質が下がる」「給食費を払うことで当事者意識が芽生える」などという声もあるようです。
「確かに一理ありますが、税金そのものだって私たちが払っているのですから、給食費を支払うのと同じことですよね。だからその税金を使って、子どもたちにおいしい給食を食べさせてほしい。学校給食法を、子どもの貧困が深刻化した今の時代に沿った形にしていくべきです」

――今に沿った形とは?
「例えば、朝や夏休みの給食の導入を進めてほしい。おにぎりとみそ汁だけでもいいんです。いろいろな事情で、朝ごはんを家で食べてこない子もいます。夏休み明けにガリガリに痩せて登校してくる子もいます。しかし、せめて学校でおなかいっぱい、1食でも食事をすることができれば『地獄の夏休み』を何とかクリアできる。地域の人と食べたり、子ども食堂とつなげたりしてもいいですよね」
「給食に期待される機能も増えています。バランスの良い食事をとる、人と食べる、家庭以外の味を知る……。給食は、子どもをケアするのは家族だけではない、自治体や国や調理師などいろいろな人と協力して一緒に育てようというプロジェクトなんです」

――給食には多様な役割があるのですね。
「もちろん、無償化は進めるべきだと思いますよ。でも、給食を舞台に、子どもの福祉や教育も一緒に整えることが大切なんです。誰からも見守ってもらえているという意識を感じるために給食が必要であるならば、夜も、子どもと保護者が一緒に食卓を囲めるようになればもっと効果があらわれます。そうすると、労働のあり方も見直さなければなりません」