「日経グローカル」1月23日号が、空き屋対策を特集していました。
総務省の調査では、人の住んでいない空き屋は、全国で757万戸、住宅全体に占める割合は13%だそうです。かつて土地と家屋は、第一の財産でした。しかし、地方では過疎化が進み、都会でも相続人がいなくて、空き屋が増えています。
今年の冬は積雪が多く、雪下ろしをしないと、積もった雪の重みで家が倒壊することも起きています。防犯や防火の観点からも、危険です。もちろん、景観も損ねます。
各地の自治体が、知恵を出して対策を講じています。土地を寄付してもらう代わりに、自治体が古家を取り壊すとか。時代が変わると、地域の課題も変化するという例の一つです。
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送り出す際と受け入れる際の、使い分け
2月18日の日経新聞夕刊、宮島喬お茶の水女子大名誉教授のインタビュー「築こう多文化社会」から。
・・バブル期の労働者不足を補うため、日系人の受け入れが決まった。受け入れるなら日本人労働者と平等にと思い、見守っていましたが、そうならなかった。多文化共生という言葉には、対等な関係を築くという響きがある。でも日本では、ほとんどの大企業が日系人を直接雇用しなかった。受け入れたのは、中小や下請け企業。それが対等の受け入れにならなかった原因です。日系人は、派遣や契約社員など非正規労働者になってしまった。ドイツのフォルクスワーゲンもフランスのルノーも、自社の生産ラインに移民を受け入れていました・・
・・日本は米国や南米などに、大量の移民を出してきた。それだけに戦前、米国で排日移民法が成立したときは、日本の世論が激高した。それなら日系人などが日本で働きたいと扉をたたくとき、自分たちの過去を思い、温かく迎えても良いのにと思います。送り出し国は、伝統的に受け入れの姿勢ができていない・・
ソフトウェアの働き
玉井哲雄著『ソフトウェア社会のゆくえ』(2012年、岩波書店)が、勉強になりました。専門家向けでない、ソフトウェア、コンピュータやインターネットの社会への影響を解説した本です。よって、私のような文系の熟年社会人に、ぴったりでした。
「コンピュータ、ソフトなければただの箱」と言われるように、コンピュータを動かしているのも、携帯電話を動かしているのも、ソフトです。自動改札機も、銀行のATMが動くのも、新幹線が走るのも、ソフトがあるからです。冷蔵庫や炊飯器にも入っています。1台の自動車には、100個ものコンピュータが載っているとのことです。かつて、家庭に何個の時計があるかというクイズがあって、その多さに驚いたことがあります。しかし、今や1家庭にあるコンピュータの数は、すごいものでしょうね。
そして、携帯電話に書き込まれたプログラムは、1,000万行だそうです!
目に見えるモノではなく、符号ですから、素人にはつかみ所がありません。音楽で言えば楽譜でしょう。演奏され耳で聞けばわかりますが、オタマジャクシの行列では、なんのことやら。
本書は、ソフトウェアの言語としての機能、フリーなソフトがどうして成り立つか、ハッカー、ヒューマンエラー、産業としてのソフトウェア、著作権と特許権など。科学の解説書ではなく、社会への影響や産業としての視点など、多角的に分析してあります。
面白いです。ご一読をお勧めします。理科系でなくても、コンピュータがわからなくても、読みやすく理解できます。
指導者に求められる資質
塩野七生著『ローマから日本が見える』(2008年、集英社文庫)から。
・・「指導者に求められる資質は、次の五つである。知力、説得力、肉体上の耐久力、自己制御の能力、持続する意志。カエサルだけが、この全てを持っていた」(イタリアの普通高校で使われている歴史教科書より)
(編集部)いやはや、イタリアの高校生というのは、すごいことを学校で習うのですね。日本では歴史教育問題が騒がれていますが、この一節を見ると正直言ってがっくり来る・・
(塩野さん)・・私もこの一節を見つけたときには、「参った」と思いました。
そもそも「指導者の資質」などというテーマは日本のビジネス誌でもよく採り上げられる話題ですが、日本の場合なら必ず登場してくる決断力、実行力、判断力などといったことが、ここではまったく触れられていない。その理由はなぜだと思いますか?
要するに、人の上に立とうとする以上、この三つの資質は当然持ち合わせているべきことで、改めて採り上げるまでもない。そう考えられているからです・・
ところで、組織管理者に求められる資質と、指導者に求められる資質は違う。それは何かと、近年考えています。私はこの職業について以来、行政組織管理に関心を持ち、勉強してきました。自ら実践するためだけでなく、後輩たちの参考になるようにいくつか文章も書きました。
(本屋に行けば、古今東西の指導者論と、現代の組織の管理者論が、山のように並んでいます。ところが、ある本には「君子危うきに近寄らず」とあり、別本には「虎穴に入らずんば虎児を得ず」とあります。また、「初志貫徹」を遂げた偉人とともに、「臨機応変」の必要も述べられています。困りますねえ、凡人には。それはさておき)
現在の日本の指導者に求められている能力は、組織管理者の延長ではないと思います。日本社会や会社の経営がうまく行っている時には、そんなに違いはないのかもしれません。しかし、明治以来のあるいは戦後の「日本の成功」と言われた「日本型経済政治行政モデル」が立ちゆかなくなった時に、従来型の組織管理者では、社会や組織を良い方向に転換できないのです。
組織内部をうまく管理すること。これは同じです。違いを簡単に言えば、「外の変化にどう対応するか」と、「将来に向けてどうかじ取りをするか」でしょう。そのための改革を、どのように構成員に説得するか。反対者を説得するかです。
もちろん平時でも、指導者と組織管理者とでは、求められる能力が異なるのでしょう。しかし転換期に、その違いが目立つのでしょう。指導者だけでなく、官僚にも求められる違いもあります。この議論は、もう少し丁寧な説明が必要ですね。今回も、短文でお許しください。
日本の感覚
(日本の感覚)
このページでも時々紹介していた、原研哉さんの連載が、本になりました。『日本のデザイン―美意識がつくる未来』(2011年、岩波新書)です。各紙の書評でも取り上げられているので、読まれた方も多いでしょう。連載時の表題「欲望のエデュケーション」は、私にはわかりにくかったですが、この本になって理解できました。
日本人の持つ日常生活での美意識や感覚を評価し、それを伸ばすとともに世界に輸出しようという主張です。それは、繊細、丁寧、緻密、簡潔といった価値観であり、コンパクトな車や小さくても快適な住まいなどです。
日本文化というと、江戸時代以前の伝統文化、わびさび、茶道、華道、数寄屋造り、和服、日本画などが取り上げられます。この本で取り上げられているのは、「現代日本の生活文化」ともいうべきものです。すなわち芸術文化ではなく、古典文化でもありません。今の日本人の暮らしの中にある生活文化であり、都市の日本人の生活です。それは、経済発展を続ける新興国の中間層にとって、憧れなのです。
ヨーロッパの貴族やアメリカの富豪がつくった生活文化は庶民の憧れですが、それを手に入れることは多くの人にとって困難です。しかし、日本の中流家庭が手に入れた快適な生活は、新興国の人にとって手の届く目標になるでしょう。車でいえば「アメ車」でなく、日本の小型車です。ビバリーヒルズの豪邸でなく、戸建てかマンション(日本の集合住宅)での暮らしです。そこには、こぎれいなキッチン、快適なお風呂とウオッシュレットのトイレ、広くはないが居心地の良い居間(リビングルーム)、省エネの電化製品があります。
これからの日本が世界の中で生きていく際に、ヒントになることがたくさん書かれています。勉強になりました。ご一読をお勧めします。