カテゴリーアーカイブ:社会と政治

高齢先進国日本、その2

2012年10月10日   岡本全勝

オショティメイン氏は、次のようにも、話しています。
・・UNFPA(国連人口基金)の大きな使命は、人口爆発を防ぐことだった。過去60年間で、合計特殊出生率は、6.0から2.5へと半分以下になった。私たちは、産む、産まないは女性が選択すべきだという考えを広め、女性差別をなくすように求めて、出生率を低下させてきた。だが、それが高齢化社会をもたらしたわけではない。
高齢化は、衛生、環境、栄養、医療、保健のすべてを改善してきた結果、我々が勝ち取ったものだ。まさに祝福すべき成果なのである。
とはいえ、各国政府が必要な社会制度を整えなければ、たちまちさまざまな問題が噴出するだろう。素晴らしい制度を持っている日本でさえ、不断に努力する必要がある・・
日本は、世界のお手本になると期待している・・

出生率が、6.0から2.5へとなったのは、すごいですね。お母さんが産む子どもの数が、6人から2.5人に減ったのです。日本では、2人以下になっています。それでも人口が爆発的に増えているのは、寿命が延びたからです。特に、子どもの死亡率が減りました。
それを成し遂げた条件は、オショティメイン氏が述べているとおりです。日本も、戦後半世紀で(実際はもっと早く)それを達成しました。拙著『新地方自治入門-行政の現在と未来』で、解説しました。昭和30年代の保健婦さんの活動や、農水省が進めた生活改良普及員の貢献などは、今の若い人は知らないでしょうね。

交付税課の課長補佐の頃、1990年代ですが、中国共産党の視察団に、お話をしたことがあります。話題は、「日本はどのように地域間財政格差を緩和しているか」でした。
私の答えは、「工業再配置、公共事業による地方振興、それに国庫補助金と地方交付税による財政補填」です。
すると、幹部の方が質問しました。「日本では、人口移動を規制していないのか?」と。私は、「日本では、規制していない。その結果、都市部への人口集中や太平洋ベルト地帯への人口移動は起きた」と答えました。
彼の反応は、交付税制度に対する高い評価と、「中国とインドでは、人口爆発を防ぐこと(一人っ子政策)と、都市部への人口集中を緩和することが、人口政策の2大課題である」とのことでした。

高齢先進国日本

2012年10月9日   岡本全勝

10月6日の朝日新聞オピニオン欄、ババトゥンデ・オショティメイン国連人口基金事務局長のインタビューから。
・・国際高齢者デーの10月1日、国連人口基金は・・報告書「21世紀の高齢化、祝福すべき成果と直面する課題」を東京で発表した・・
日本は世界一の高齢社会だ。高齢者比率は、2012年の統計で31.6%で、世界で唯一30%を超えている。だが今回日本を選んだ理由は、それだけではない。
例えば「敬老の日」の存在は、世界が見習うべき慣行だ。60歳を超えても働き続けられるし、起業したければ融資も受けられる。国民すべてが加入する医療保険システムや年金制度、支援が必要な人たちを登録し、必要に応じてケアを提供する介護保険システムもある。認知症の対策を全国規模でとっている点はとりわけ評価できる。大切なのは、高齢者をコミュニティーの一員ととらえる考え方だと思う。こうした日本の取り組みは、途上国の多くにとって非常に参考になる。ぜひ広く世界に伝えてほしいと願っている・・

高齢社会については、日本が世界の最先端を走っています。そしてその対策も、たぶん先頭を走っています。上に引用したように、国際機関からも評価してもらっています。この日本の経験を、諸外国に「輸出」しましょう。かつて日本が、先進諸国にいろんな技術や社会制度を学んだように。

アジアの知的貢献

2012年9月27日   岡本全勝

9月24日の朝日新聞オピニオン欄「私の視点」、羽場久美子・青山学院大学教授の「アジアの連携、国家超え『知』結集の場を」から。
・・世界の課題はいまや、20世紀には考えられないほどの広がりと緊急性を持っている。テロ、防災、温暖化、原発事故、国境管理、金融の変動、移民、エイズなど、20世紀の国民国家の枠組みでは対応しきれないものばかりだ。
私はこの10年間、国家を超えたアジア地域統合の問題を、欧州の地域統合と比較しながら研究してきた。痛感するのは、アジア地域の「知の結集度」の低さだ。
近代の技術・情報・知の発展は、圧倒的に欧米の成果に依拠する。それを支えてきたのが欧米の強大なシンクタンクやトップクラスの大学・大学院であった。ハーバード大、欧州政策研究所、欧州大学院研究所などの研究機関は知的成果を上げるだけでなく、世界の政治や経済・科学技術の若手リーダーを養成する場としても機能している。
これに対し、アジアは教育水準が高いにもかかわらず、国家を超えた世界レベルの問題を共同で検討するシンクタンクや知的作業の場を欠いている。欧米と連携を保つ各国共同の研究・教育機関・ネットワークをアジアに設立することは、この地域の将来にとって緊急の課題である・・
アジアの人口、経済規模、経済発展を考えたら、至極もっともな発想です。いつまでも、欧米に留学し先端知識を持ち帰るだけでは、発展はないのでしょう。羽場先生は、緊張が続くアジア各国間の協力も、述べておられます。原文をお読みください。

武装警備員の是非

2012年9月17日   岡本全勝

9月17日の日経新聞の法務欄が、海運業界が海賊対策として、民間の武装警備員が乗船できるように法制の整備を求めていることを、解説していました。
ソマリア沖での、海賊による商船襲撃は続いています。世界での海賊発生件数は昨年は439件、うちソマリア沖が237件です。日本の船も被害に遭っています。海上自衛隊が、護衛活動に派遣されています。このホームページでも、何回か紹介しました。
しかし、自衛隊による護衛には限界があり、船主協会は、自衛官の乗船か、無理なときは武装警備員の乗船を求めています。アメリカやイギリスは、武装警備員の乗船を認めているとのことです。日本船籍の船は、日本国に管轄権があります。一方、日本の銃刀法では、武器の所持を制限していて、武装警備員は認められていません。
先日、紛争地域での、外国の民間軍事会社を紹介しました(8月16日の記事)。あれは外国のことだと思っていましたが、そうでもなさそうです。

外交の民間委託

2012年8月24日   岡本全勝

これまた、買って読もうと思っていた本をようやく読んだので、その紹介です。高木徹著『ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争』(2005年、講談社文庫)です。
1992年、ユーゴスラビア連邦から独立を宣言したボスニア・ヘルツェゴビナは、ユーゴスラビアとその主体であるセルビア(人)との間で、内戦状態に入ります。ボスニアの外務大臣(外交は素人の大学教授)を支えて、アメリカや国際社会の同情を集め、「ユーゴスラビア=悪、ボスニア=被害者」というレッテルを貼ることに成功した広告代理店の話です。ついには、ユーゴスラビアを国連から追放することにも、成功します。
どうやら実態は、そんな簡単なものではなく、「セルビアもボスニアもどっちもどっち」だったようですが。この広告会社の活躍で、欧米の主要マスコミにセルビアが一方的に悪いという認識を植え、国際世論を誘導することに成功します。キーワードとして「民族浄化」「強制収容所」といった言葉をはやらせ、写真をつけて一人歩きさせるのです。
まあ、読んでみてください。おもしろいです。もちろん素材は「おもしろい」という言葉では不適切な、多くの人が死んでいる内戦です。
外交および国家の国際宣伝を、民間会社に外注したという観点からも、読むことができます。また、マスコミを動かすテクニックを学ぶことができます。嘘をついたり嘘の演出をする広告会社もあるようですが、この会社はそのようなことをせず、ぎりぎりの「危険な用語」を使い効果的な演出を行います。このほんの副題では「情報操作」となっています。勉強になります。もちろん、いつもこんなにうまくいくとは思えませんが。
会社や役所の広報担当は、日頃の記者との付き合いを先輩たちから教えられます。最近は、事故を起こした際の「危機管理」を勉強しています。しかし、そのような「起こった際の対応」「ダメージを抑える広報戦略」という「後ろ向きの広報」ではなく、ある方向に誘導する「積極的な広報戦略」「前向きの広報」です。広報担当者には必読の文献だと、思うのですが。