カテゴリーアーカイブ:社会と政治

アジアの知的貢献

2012年9月27日   岡本全勝

9月24日の朝日新聞オピニオン欄「私の視点」、羽場久美子・青山学院大学教授の「アジアの連携、国家超え『知』結集の場を」から。
・・世界の課題はいまや、20世紀には考えられないほどの広がりと緊急性を持っている。テロ、防災、温暖化、原発事故、国境管理、金融の変動、移民、エイズなど、20世紀の国民国家の枠組みでは対応しきれないものばかりだ。
私はこの10年間、国家を超えたアジア地域統合の問題を、欧州の地域統合と比較しながら研究してきた。痛感するのは、アジア地域の「知の結集度」の低さだ。
近代の技術・情報・知の発展は、圧倒的に欧米の成果に依拠する。それを支えてきたのが欧米の強大なシンクタンクやトップクラスの大学・大学院であった。ハーバード大、欧州政策研究所、欧州大学院研究所などの研究機関は知的成果を上げるだけでなく、世界の政治や経済・科学技術の若手リーダーを養成する場としても機能している。
これに対し、アジアは教育水準が高いにもかかわらず、国家を超えた世界レベルの問題を共同で検討するシンクタンクや知的作業の場を欠いている。欧米と連携を保つ各国共同の研究・教育機関・ネットワークをアジアに設立することは、この地域の将来にとって緊急の課題である・・
アジアの人口、経済規模、経済発展を考えたら、至極もっともな発想です。いつまでも、欧米に留学し先端知識を持ち帰るだけでは、発展はないのでしょう。羽場先生は、緊張が続くアジア各国間の協力も、述べておられます。原文をお読みください。

武装警備員の是非

2012年9月17日   岡本全勝

9月17日の日経新聞の法務欄が、海運業界が海賊対策として、民間の武装警備員が乗船できるように法制の整備を求めていることを、解説していました。
ソマリア沖での、海賊による商船襲撃は続いています。世界での海賊発生件数は昨年は439件、うちソマリア沖が237件です。日本の船も被害に遭っています。海上自衛隊が、護衛活動に派遣されています。このホームページでも、何回か紹介しました。
しかし、自衛隊による護衛には限界があり、船主協会は、自衛官の乗船か、無理なときは武装警備員の乗船を求めています。アメリカやイギリスは、武装警備員の乗船を認めているとのことです。日本船籍の船は、日本国に管轄権があります。一方、日本の銃刀法では、武器の所持を制限していて、武装警備員は認められていません。
先日、紛争地域での、外国の民間軍事会社を紹介しました(8月16日の記事)。あれは外国のことだと思っていましたが、そうでもなさそうです。

外交の民間委託

2012年8月24日   岡本全勝

これまた、買って読もうと思っていた本をようやく読んだので、その紹介です。高木徹著『ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争』(2005年、講談社文庫)です。
1992年、ユーゴスラビア連邦から独立を宣言したボスニア・ヘルツェゴビナは、ユーゴスラビアとその主体であるセルビア(人)との間で、内戦状態に入ります。ボスニアの外務大臣(外交は素人の大学教授)を支えて、アメリカや国際社会の同情を集め、「ユーゴスラビア=悪、ボスニア=被害者」というレッテルを貼ることに成功した広告代理店の話です。ついには、ユーゴスラビアを国連から追放することにも、成功します。
どうやら実態は、そんな簡単なものではなく、「セルビアもボスニアもどっちもどっち」だったようですが。この広告会社の活躍で、欧米の主要マスコミにセルビアが一方的に悪いという認識を植え、国際世論を誘導することに成功します。キーワードとして「民族浄化」「強制収容所」といった言葉をはやらせ、写真をつけて一人歩きさせるのです。
まあ、読んでみてください。おもしろいです。もちろん素材は「おもしろい」という言葉では不適切な、多くの人が死んでいる内戦です。
外交および国家の国際宣伝を、民間会社に外注したという観点からも、読むことができます。また、マスコミを動かすテクニックを学ぶことができます。嘘をついたり嘘の演出をする広告会社もあるようですが、この会社はそのようなことをせず、ぎりぎりの「危険な用語」を使い効果的な演出を行います。このほんの副題では「情報操作」となっています。勉強になります。もちろん、いつもこんなにうまくいくとは思えませんが。
会社や役所の広報担当は、日頃の記者との付き合いを先輩たちから教えられます。最近は、事故を起こした際の「危機管理」を勉強しています。しかし、そのような「起こった際の対応」「ダメージを抑える広報戦略」という「後ろ向きの広報」ではなく、ある方向に誘導する「積極的な広報戦略」「前向きの広報」です。広報担当者には必読の文献だと、思うのですが。

政治を支える制度と文化

2012年8月22日   岡本全勝

読売新聞8月19日「地球を読む」は、フランシス・フクヤマ氏の「長引く欧州危機」でした。そこで、最近よく言われる「二つの欧州」についての指摘があります。通常は、EUを拡大した際に、プロテスタントが多く、勤勉で規律ある北部諸国と、怠惰で浪費癖があるカトリック・ギリシャ正教諸国が、対比されます。
しかし、フクヤマ氏は、次のような主張をします。これら二つの欧州の違いは、「政治的恩顧主義」がはびこる欧州と、そうでない欧州との違いである。イタリア、ギリシャなどは、政党が血縁、地縁関係を利用して支持者を集め、政府の役職を支持者に分配することで、権力を争った。官僚機構が、選挙で選ばれた政治家に利用されてきた。他方、ドイツやイギリス、オランダは、そのような恩顧主義的な政党に支配されたことがない。
通貨同盟を創設したマーストリヒト条約には、それに対応する財政同盟を欠いていた。だが、それ以上に問題なのは、欧州人としての共通意識を醸成できなかったことである。EUの諸制度は、高度な専門知識を持つ官僚によって作られた。だた、汎欧州的な愛国心をどう生み出すかについては、誰も腐心しなかった・・
詳しくは、原文をお読みください。私が学生の頃、文化人類学や比較文化政治学という学問が、盛んだったことを思い出します。政治を支えるものには、制度だけでなく「文化」や「意識」「歴史と伝統」がありますね。
それでも、その差を乗り越えようと挑戦する欧州は、立派だと思います。

祝賀パレード

2012年8月20日   岡本全勝

今日20日、東京銀座で、ロンドンオリンピック日本代表メダリストのパレードが行われました。「行かなければ」と思っていたのですが、忘れていたのと、仕事が忙しくて・・。土曜か日曜にやってくれれば良いのに。たぶん、いろいろな事情があったのでしょう。
新聞によると、50万人が詰めかけたそうです。新聞記事の写真をご覧ください。球場ではなく、あの広くない道路に50万人ですよ!球場でも、せいぜい5万人ですから。暑かったでしょうね。
(これだけの人数になると、輸送、誘導のほか、トイレ、急病人の手当、迷子のお知らせなど、裏方は大変な準備が必要になります。ちなみに、首都直下型地震の際の、想定される東京駅の帰宅難民が47万人です。)
オリンピック・メダリストのパレードは、今回が初めてだそうです(これもびっくり)。このようなイベントは、もっとやっても良いですよね。野球やサッカーなど、地元球団が優勝したら、みんなでお祝いしましょう、御堂筋でも、県庁前通りでも。
「政治は劇場だ」という説もあります。狭い劇場もありますが、広い劇場は盛り上がりますよね。