カテゴリーアーカイブ:社会と政治

量子論、科学の進展と社会の見方

2013年5月20日   岡本全勝

マンジット・クマール著『量子革命―アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突』(邦訳2013年、新潮社)を読みました。20世紀前半(主に1940年頃まで)の、量子論量子力学の発見と進歩の過程を、読み物にしたものです。各章を、それぞれの理論を発見・開発した科学者の伝記風に仕立ててあります。一人ひとりに、さまざまな苦悩があったことが描かれ、高度に抽象的な理論の基に、人間くさい物語があったことがわかります(理論の方は、難しいです。はい)。
副題にあるように、後半は、アインシュタインとボーアとの論戦が描かれます。ニュートンを書き換えたことで、アインシュタインと相対性理論は有名ですが、より大きな革命である量子論とボーアたちの名前は知られていません。
かつて、ハイゼンベルク著『部分と全体』を読んで、このHPでも紹介しました(2010年5月9日の記述。ハイゼンベルグとシュレーディンガーの位置づけも、理解できました。
1927年に開かれた研究者の会議(第5回ソルベイ会議)の記念写真が載っています。集合写真に写っている29人のうち17人がノーベル賞を受賞しています。理論物理学にとって、輝かしい時代です。
しかしその後、アインシュタインをはじめとするユダヤ人はナチスの迫害を受け、原子核の研究者たちは原子爆弾開発に巻き込まれます。
私の関心は、理論を理解するというより、社会との関わりです。科学によってわかった「世界観」は、私たちの社会の認識をどう変えるのか。科学技術は、社会をどう変えるのか。政治と行政は、科学技術とどうつきあえばよいのか。公害問題、BSE牛、パンデミック、大津波、原発事故をみても、行政や官僚にとって、大きな課題です。

海外からの移民、ドイツの例

2013年5月11日   岡本全勝

朝日新聞5月11日の国際面に、「ドイツへの移住、危機国から急増」が載っていました。ドイツ政府が発表した2012年の統計によると、海外からドイツへの移住者数は108万人、前年比12万人増。このうち、スペインからは45%増の3万人、ギリシャからは43%増の3万4千人、ポルトガルからは43%増の1万2千人、イタリアからは40%増の4万2千人です。
ドイツでは、かつてトルコ人を労働力として迎え、共産圏の崩壊で東欧からの労働者が入ってきました。しかし、経済危機で南欧からの移住が増えています。
日本は、島国という障壁、厳しい入国管理、国民の意識で、移住を制限しています。「雇用と賃金の開国」(5月9日の記事)に続き、いずれ「人の開国」が来るのでしょう。その際には、いろんな困難が予想されます。日本社会は、地域から、また国民の意識から、大きく変化するでしょう。「日本への移民」「日本の外国人

起業生む社会、政府の役割

2013年5月1日   岡本全勝

また、古い話で、恐縮です。4月17日の朝日新聞オピニオン欄「起業は日本を救うのか」、猪子寿之・ウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」代表の発言から。
・・政府が成長分野を決めて起業させていくなんて、絶対できない。未来の方向が大まかにわかったとしても、ビジネスとして成り立つかどうか誰にもわからないからね・・
これだけ経済のグローバル化が進むと、一国の小手先のテクニックのような金融政策が、効果を永続できるはずがない。閉塞した社会構造を変えるイノベーションこそが、経済を成長させる唯一の処方箋でしょう。しかしイノベーションは政府の音頭で生まれるものではないし、業界の中枢とは少し離れたところから創業した人たちが起こしている。
それでは政府に何ができるか。立派な成長戦略を描くより、何事にも挑戦できる寛容な社会をつくることです・・

海外に日本を売り込む

2013年4月28日   岡本全勝

観光庁が、海外から観光客を呼び込む事業「ビジット・ジャパン」を行っています。畏友の井出憲文観光庁長官から、「ビデオが良くできているから、宣伝せよ」との命を受けました。
確かに、今の日本を紹介する、良くできた「宣伝」(約6分)です。定番の京都のお寺や舞妓さんもちらっと出てきますが、主題は阿波踊りです。回転寿司も出てきます。これには納得。でも、私のような日本人が見てもダメで、外国の方に見てもらないと。
そのほかにも、いろいろ動画が載っています。(2013年4月27日)
と書きましたが、4月28日現在、霞が関(復興庁のパソコン)では、フィルタリングがかかって、見ることができません。「業務に関係ない遊びのページ」と判断されたのでしょうか。

アジア主義から見た現在の中国

2013年3月31日   岡本全勝

朝日新聞3月29日オピニオン欄、中島岳志北海道大学准教授の発言「アジア主義から見た中国」から。
「アジア主義は、戦前日本の侵略思想だったのではありませんか」という問に対して。
・・利益や打算に基づく「政略」としてのアジア主義はそうです。大東亜共栄圏を目指す帝国主義の道具として利用されました。しかし当初、頭山満や宮崎滔天は西洋列強の侵略に、アジア諸国と手を携えて抵抗しようと訴えた。彼らの「心情」としてのアジア主義は、出発点から侵略を意図していたわけではありません・・
この観点で世界に目を転じたとき、頭山には欧米の帝国主義と国内の封建体制という二重の圧政に苦しむアジア人民の姿が見えました。古い王朝を倒し、近代化によって万民が救われる新しい政治体制をつくるのがアジアの王道である、と考えた。各国で闘っているナショナリストたちと盟友として組み、二重の圧政を打倒しようと踏み出していく。これがアジア主義の源流です・・
「そういうアジア主義者なら、今の中国をどう見るでしょう」という問に対しては。
・・一部特権層の圧政と格差社会に多くの人民があえいでいる、と見て取るでしょう。彼らを救おうと海を渡って、民主化運動を担う学生や活動家を支援して一緒に闘ったかもしれません。まさに宮崎が上海に渡り、私財をなげうって、日本に亡命して後に辛亥革命を成し遂げる孫文を支援したように・・
しかし、中国のナショナリズムは反日と重なっています。それでは支援も連帯も、難しいのでは」
・・二十一カ条の要求、満州事変、日中戦争という歴史をへたために、民主化を要求するナショナリズムが対外的には反日デモにもなる。そこがとても難しいところです。これは日本が自らまいたタネでもあります。かつて中国の主権を踏みにじった当事者なのですから、歴史をしっかり見つめ直すべきです・・
「歴史を持ち出されると、ものが言えなくなりませんか」
・・そんなことはありません。中国にも、かつてあなたたちが抵抗した日本帝国主義と同じ覇権主義の道を進んで一体どこに行くつもりですか、と問わなければなりません・・
詳しくは、原文をお読みください。