量子論、科学の進展と社会の見方

マンジット・クマール著『量子革命―アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突』(邦訳2013年、新潮社)を読みました。20世紀前半(主に1940年頃まで)の、量子論量子力学の発見と進歩の過程を、読み物にしたものです。各章を、それぞれの理論を発見・開発した科学者の伝記風に仕立ててあります。一人ひとりに、さまざまな苦悩があったことが描かれ、高度に抽象的な理論の基に、人間くさい物語があったことがわかります(理論の方は、難しいです。はい)。
副題にあるように、後半は、アインシュタインとボーアとの論戦が描かれます。ニュートンを書き換えたことで、アインシュタインと相対性理論は有名ですが、より大きな革命である量子論とボーアたちの名前は知られていません。
かつて、ハイゼンベルク著『部分と全体』を読んで、このHPでも紹介しました(2010年5月9日の記述。ハイゼンベルグとシュレーディンガーの位置づけも、理解できました。
1927年に開かれた研究者の会議(第5回ソルベイ会議)の記念写真が載っています。集合写真に写っている29人のうち17人がノーベル賞を受賞しています。理論物理学にとって、輝かしい時代です。
しかしその後、アインシュタインをはじめとするユダヤ人はナチスの迫害を受け、原子核の研究者たちは原子爆弾開発に巻き込まれます。
私の関心は、理論を理解するというより、社会との関わりです。科学によってわかった「世界観」は、私たちの社会の認識をどう変えるのか。科学技術は、社会をどう変えるのか。政治と行政は、科学技術とどうつきあえばよいのか。公害問題、BSE牛、パンデミック、大津波、原発事故をみても、行政や官僚にとって、大きな課題です。