NHKカルチャーラジオ、吉川泰弘先生の「生物の進化の謎と感染症」、テキストp55から。
・・・1997年、世界保健機関は「新しく認識された感染症で、局地的にあるいは国際的に公衆衛生上問題となる感染症」を新興感染症と定義しました。なんでもないことのようですが、定義を決め、それに該当する事柄をまとめると、それまで曖昧としていた、いろいろなものがみえてきます。この定義により過去20年間に30種類以上の新興感染症が出現したことがわかりました・・・
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感染症の歴史、2
インフルエンザウイルスの大きさは、10のマイナス7乗(100nm)です。人の子どもの大きさを1mとすると、1,000万倍違います。地球の大きさは直径13,000kmで、子どもの1,300万倍です。インフルエンザウイルスと子どもの大きさの比が、子どもと地球の比とほぼ等しくなります。子どもに感染するウイルスは、人を乗せて地球に接近する宇宙船のようなものです。
くしゃみで、2m先の別の人に感染する場合、ウイルスから見た距離は、2×10の7乗の距離で、人に置き換えると2万kmになり、北極から南極までの距離になります。1回のくしゃみに、10の8乗(1億個)のウイルスが含まれる1mlの唾が飛ぶとすると、1億人が北極から出発し南極を目指すことになります。たどり着くのは、なかなか大変なことです(p158)。でも、風邪がうつりますよね。
海水中のウイルスは、少なくとも1ml中に、深海で100万個、沿岸で1億個と推計され、世界の海全体でウイルスの総量は10の30乗個といわれています。ウイルスの大きさは平均100nmと極めて小さいのですが、海のウイルスをすべてつなぐと、10のマイナス7乗×10の30乗=10の23乗で、1,000万光年(1光年=10の16乗m)になります。銀河系の直径の100倍だそうです! 全人類70億人が手をつなぐと、2m×7×10の19乗=1.4×10の10乗m。光の速度が1秒で30万キロメートルなので、47光秒です。太陽と地球の距離の10分の1です(p39)。ひえ~。
感染症の歴史
NHKカルチャーラジオ、吉川泰弘先生の「生物の進化の謎と感染症」が興味深いです。私はテキストを読んだだけで、放送は聞いていないのですが。うつると怖い伝染病。かつては人から人へ伝染すると教えられましたが、動物由来の感染症も多いのです。テキストを読むと、これでもかこれでもかと、怖い病気が出てきます。エイズ、SARS、エボラ出血熱、デング熱、O157・・・。蚊に刺されたり、食べ物に入っていてそれを食べたり。
私たちは、ウイルスや細菌が人体を攻めてくると考えますが、ウイルスや細菌にとっては、遙か以前から地球で暮らしていたのは彼らの方で、人類はあとから地球にきた新参者です。彼らは30億年、こちらはせいぜい500万年。彼らは、多細胞生物から魚類、両生類、は虫類と次々と乗り物を変えて、生き延びてきました。
大坂落城400年
朝日新聞8月29日オピニオン欄「戦後400年!」、堺屋太一さんの発言から。
・・・400年前に大阪はいわば焦土となりました。大坂夏の陣で豊臣氏が滅ぼされ、大坂城が落城した。そんな場所はそのまま衰退してしまうのが歴史の常識でしょうが、大阪は違いました。
「八百八橋」をはじめとして様々な異名がありますが、江戸期の大阪を表す最も的確な言葉は「天下の台所」でしょう。諸大名がコメや特産物を売るための蔵屋敷が軒を並べ、西国を中心に全国で生産されたコメが大阪に持ち込まれ、金や銀などの通貨と交換されました・・・
・・・大坂の陣の後、淀川の中州を開発し、現在の中之島を整備したのが、豪商・淀屋常安(じょうあん)でした。そこに諸藩の蔵屋敷が集まります。淀屋が架けたのが、今もビジネス街の中心を結ぶ「淀屋橋」です。
息子の个庵(こあん)は天才的なイノベーターでした。大名の蔵米販売を引き受け、店前にコメの市を立てました。これが堂島米会所へと発展し、全国の米相場の中心地になります。
大阪の米相場から生まれたのが先物取引です。やがて8代将軍徳川吉宗の時代、世界最初の公認先物市場となり、今や世界に広まる商品先物取引に発展するのです。
この他、繁華街の宗右衛門町や街々を結ぶ多くの橋も、町人たちによって開発されたのが江戸時代の大阪です。
官需なしに住民自ら興した都市は、日本広しといっても大阪ぐらいでしょう。政府の財政赤字が膨大になった今こそ、注目されるべきです・・・
中国経済リスク、戦前日本との類似。2
朝日新聞8月25日、猪木武徳先生へのインタビュー「世界経済、不安の正体」の続きです
「戦後、世界経済は多くの制度が整備され秩序がつくられてきたのに、なぜこのように不安定要素が増えてきたのですか」という問に。
・・・経済の基盤である自由民主主義が次第に劣化しているからです。民主主義には内在的に財政赤字を生む構造がある。政治家の生きる道は、いかに多くの人を満足させて票を獲得するかにあります。その結果、政治は時に人々の欲望をより膨らませ、資源配分をゆがめてしまう。そして、何でも税金や国家に頼ろうとする風潮が広がります。健全財政で対応できるならいいが、どの国の政府も借金を膨らませて要望にこたえようとする。これではどの国もギリシャと似た運命をたどってしまう・・・
「財政赤字を生みやすい民主主義の弱点を克服する手段はないのでしょうか」
・・・国家対個人の対立軸だけで考えたら解はありません。二つの間を調和させる何かが必要です。税金への依存が比較的少ない米国や英国では、NPO、労働組合や消費者団体のような中間団体がその役目を果たしています。たとえば日本では各省庁が受け持つ各種の統計づくりも、米英では一部NPO組織が担っている。あるいは米国の地方自治の強さも、健全な民主主義をうまく機能させようというメカニズムの一例です・・・
「政府を動かすことだけが民主主義ではないのですね」
・・・自分たちの身の回りのことは自分たちで決める。お上や国家から言われてやるのではない。民主主義を堕落させないためには、そういう独立自尊の精神が不可欠なのです。
ただし大事なのは公共精神という土台も欠かせないことです。私も市場経済は尊重しますが、皆が私的な欲求を満たそうとするばかりではいい社会は生まれません。公と私のバランスが必要です・・・
詳しくは原文をお読みください。