カテゴリーアーカイブ:人生の達人

鎌田浩毅著『武器としての教養』

2022年2月15日   岡本全勝

鎌田浩毅先生が『武器としての教養』(2022年、MdN新書)を出版されました。
私たちだけでなく科学が予想できない、大災害や感染症の世界的流行が起きています。本の紹介には、次のように書かれています。
「これからを生きる私たちは「人生はコントロールできない」こと、そして今までの「正解」など通用しないという考え方から始めなければなりません。「超想定外」の時代を生き抜く羅針盤」

「超想定外の時代を生きるための教養」と言えばよいでしょうか。鎌田先生の経験、読書から得た知識が満載です。地下のマグマが縦糸で、人間の内にある熱い想い(マグマ)が横糸になって、議論が展開されます。

ところで、第8章(270ページ)に、松田道雄編『私のアンソロジー2青春』(筑摩書房)が引用されています。私も高校時代に松田先生を好きになり、このアンソロジーを買いました。アンソロジー(選集)という言葉も、そのときに知りました。田舎の高校生には少々難しかったです。その後の引っ越しで、行方不明になりました。
「へ~、鎌田先生は覚えていて、引用されるのだ」と、感心しました。

子どもの妬みの感情への対応

2022年2月14日   岡本全勝

2月1日の日経新聞夕刊「妬みの感情 成長につなげる」、澤田匡人・学習院女子大学准教授の発言から。
・・・「自分より人気がある」「自分が受からなかった学校に合格した」。人間は自分が持っていない何かを持つ他人が妬ましくなるものだ。雲の上の存在に対しては、憧れることはあっても妬まない。相手との差がわずかだと思い込むときの方が、妬みを感じやすい。
子どもの言動から妬みが透けて見えると、親は思わず「人を妬んでどうするの」などと、否定してしまいがちだ。だが、さまざまな調査や脳画像を用いた実験などから、妬みの感情は痛みの一種であることが分かっている。大事なのはまず「そうなんだね」と子どもの痛みを痛みとして受け止めることだ。
否定してしまうと、本人にとって深刻な悩みであってもそれ以上話を聞けなくなる。子どもが感情をうまく言葉で表現できないなら「羨ましいんだね」などと言語化する手伝いをしてあげたい。親ができるのは対話を通し、何が羨ましいか「妬みの解像度」を上げる手助けをすることだ。
小学生は諦めの気持ちがだんだん強くなる中学生とは違う。相手に近づくために頑張りたいという気持ちから「どうすればいいか助言がほしい」と感じる傾向がある。
つまり、具体的に何に妬んでいるかを聞き出し、どんな努力が可能かを教えると、妬みをきっかけに世界を広げられる可能性がある・・・

・・・妬みの対処法は大きく3つに分類できる。相手に近づけるよう自分なりに努力する「建設的解決」や、気持ちを考えないようにする「意図的回避」、悪口をいったり無視したりする「破壊的関与」だ。
気を付けたいのは、相手に近づく努力だけですべてを解決できるわけではないことだ。身体能力や体つきなど、行動や努力ではどうしようもできないこともある。真面目に取り組みすぎるとさらにつらくなる可能性がある場合、有効なのが意図的回避だ。
例えば、脚の長さは努力で伸ばせないが「かっこいいって脚の長さだけで決まらないよね」と親子で会話する。「あ、もうどうでもいいかな」と子どもが思えればそれでいい。「一緒にゲームやろうよ」と親が誘って気を紛らわすのも一つの考えだ。

友達を攻撃する破壊的関与は避けたいところだ。イライラをぶつける八つ当たりという形で親が受け止めてすむなら、それも解決策だろう。ひとりで抱え込ませるのではなく、解き放てた方が妬みをうまく生かすことにつながる・・・

大人にも有意義な話です。

なぜ思いつかなかったのか

2022年2月12日   岡本全勝

2月2日の日経新聞経済教室、森川博之・東京大学教授の「気づきと共感が価値の源泉 製造業のデジタル化」に次のような文章があります。

・・・経営学者のピーター・ドッラカーの言葉に「イノベーションに対する最高の賛辞は『なぜ思いつかなかったのか』である」というものがある。もちろん、隠れたニーズに気づくことは容易ではない。容易ではないと認識しながら、現場を深く見直し、デジタル化すべきプロセスに気づく努力を続けるしかない・・・

そうですよね。私たち行政の仕事も、「世紀の大発見」や「人類初の・・・」といった発明や発見ではありません。でも、改善することは、いくつも出てきます。
それを、どのようにして早く見つけるか。一人で自席で考えていても、思いつきません。
発見する方法の一つは、住民やマスコミからの「苦情」です。改善のきっかけが含まれている場合があります。
もう一つは、外に出て外の人と意見交換することです。広い視野から見ると、違ったものが見えてきます。

がんは治る病気に

2022年2月11日   岡本全勝

2月2日の日経新聞夕刊、中川恵一・東京大学特任教授の「がん社会を診る」は「がんは「治る病気」の時代へ 治療前の離職は早計」でした。

・・・大変残念ではありますが、がんと診断されると、1年以内の自殺率が20倍以上になるというデータがあります。また、がんと診断された会社員の約3分の1が離職し、自営業者では17%が廃業したという調査結果もあります。
別の調査でも、がんと診断されると約2割の人が仕事を辞めていました。さらに問題なのは辞めたタイミングです。仕事を辞めた人のうち、32%は診断が確定した時点で、9%が診断から最初の治療までの間に離職していました。つまり、4割以上が、実際に治療を受ける前に辞めてしまっているのです・・・

それに続く文章で、多くのがんが簡単な治療で治ることが書かれています。成人のがん全体の5年生存率は7割、10年生存率も6割です。
早く見つけて適切な治療を受ければ「治る病気」になったのです。医学の進歩はすごいです。これを知れば、仕事を辞めたり、自殺することが少なくなると考えられます。

職員のやる気を引き出す

2022年2月10日   岡本全勝

社員や職員にやる気を持って仕事をしてもらう。どの組織、どの管理職にとっても、最も重要なことの一つです。なぜ、それが、近年大きな問題になるのか。この問題は、時代と地域を越えた共通課題であるとともに、違った要因もあります。
すなわち、貧しい時代や失業の恐れがある時代は、給料が良く安定している、そしてつらくない職場であれば、多くの職員が満足しました。経済成長期には、つらくて貧しいことの多い農業や自営業から、会社勤めが憧れでした。しかし、多くの人が会社員になり、それなりの給料をもらえるようになった今では、給料と安定だけでは、職員はやりがいを持ちません。

1月29日の日経新聞の広告の中で、パーソル総合研究所の井上亮太郎・主任研究員の分析が載っていました。ワーク・ライフ・バランス、自己成長、満足な報酬、やりがいがある仕事、自分の居場所などです。参考「はたらく上で「幸せ/不幸せ」を感じる要因
職員は、給料のためだけに働いているのではありません。職場と職業は、居場所であり、自分を認めてもらう場所です。

1月31日の朝日新聞生活面、「(テレワーク考)社員同士褒め合い、やる気も給与もアップ」には、次のような事例が紹介されていました。
・・・ 新型コロナウイルスの感染拡大から1年余りの昨年3月、男性下着メーカー「TOOT」(トゥート)の枡野恵也社長(39)は本社がある東京を離れ、岡山県倉敷市に家族で移り住んだ。「コロナ禍の前から考えていた。私が手取り足取り指示ができなくなることで、社員が自発的に仕事をするきっかけにしたかった」と話す。
枡野さんは、テレワークでコミュニケーションが希薄化することを心配し、朝礼や夕礼をするなど、さまざまな手を打った。

ユニークなのは「ピアボーナス」。「ピア(仲間)」と「ボーナス(報酬)」を合わせた言葉で、社員同士で行動を評価し、ボーナスを贈り合う。
仕組みはこうだ。一緒に働いた人のうち「頑張った」と思う人の名前と理由を週に1回、会社に伝える。名前をあげられた人は推薦者1人あたり3千円を給与に上乗せされ、理由も伝えられる。5人から推されれば、1万5千円の臨時収入と称賛を手にできる。
推された社員のやる気が高まるだけではない。推薦する側は「同僚のよいところ探し」が必要なため、テレワークで起こりがちな「自己完結」を防ぐことにつながる。枡野さんは「人を褒めることで自身も前向きになる」と話す・・・