カテゴリーアーカイブ:人生の達人

危機対応、マニュアルを作っても。

2017年3月31日   岡本全勝

3月27日の日経新聞の法務欄は、「DeNA問題、法令順守迫る」でした。いわゆる「まとめサイト」が、出典不明や根拠のない記事、著作権侵害の記事のコピーを載せていた問題です。詳しくは本文を読んでいただくとして。ここでは、問題が起きた際の対処について、上沼紫野弁護士の発言から。
・・・DeNAがトラブルを広げてしまったのは、問題を初期段階で見つけ、対処する体制が整っていなかったためだ。第三者委員会の報告書を読むと、部門間、現場と管理者などの間で意思疎通ができていなかったことが分かる。マニュアルを作っても、内容が適切か、正しく運用されているかをチェックする体制ができていなかった。
法的責任を避けることだけを重視してモラルが低下したことが、確認の甘さにつながり、著作権法や医療関係の法律に触れる事態を招いた。企業が挑戦することは悪いとはいえないが、行為の結果を背負うのは企業自身だ。挑戦はリスク管理と両輪で行わなければならない・・・

青春期の仕事と、老年期の仕事

2017年3月27日   岡本全勝

三谷太一郎著『日本の近代とは何であったか』(2017年、岩波新書)のあとがきに、次のような文章が書かれています。
・・・私はこれまで、いつのころから、学問人生の中の「青春期の学問」に対する「老年期の学問」の意味を考えてきました。多くの場合、学問の成果(特に目立つ学問の成果)は、「青春期の学問」の成果であり、「老年期の学問」の成果と目すべき実例は、ほとんど念頭に浮かんできませんでした・・・
・・・「老年期の学問」は、所詮「青春期の学問」の可能性の範囲を超えるものではない。それぞれの「青春期の学問」が持っていた可能性を限界にまで追求することによってしか、「老年期の学問」は成り立たない。結局「青春期の学問」のあり方が「老年期の学問」のあり方を決定する。それが私の結論です。・・・
・・・ただ「老年期の学問」は、どちらかといえば、特殊なテーマに焦点を絞る各論的なレベルの発展よりも、より一般的なテーマに傾斜した総論的なレベルの発展に力点を置くべきではないかと考えます・・・

詳しくは、本を読んでいただくとして。納得します。
春から慶應大学に教えに行きますが、行くことが決まってから、どのように授業を構成するかを考えてきました。かつて東大の大学院や慶應大学で教えていたときは、当時の私の問題意識と周りにある実務の実例やデータを教えることに重点を置きました。しかし、この歳になって、またいろいろなことを経験して、それとは違うことを教えるべきだと思うようになりました。
もちろん大学の授業ですから、知っておかなければならない事項を、教えなければなりません。でも、それは、市販されている教科書に書かれています。私が「付加価値」をつけるとするなら、これまでの経験を生かして、現場の実態を教えるとともに、地方自治を通じて「社会の見方」をお教えすることでしょう。
いま、そのような観点から、講義ノートを作成中です。

中間管理職の重要性

2017年3月27日   岡本全勝

日経新聞「やさしい経済学」、守島基博・一橋大学教授の「毀損した日本企業の組織力」(3月22日の記事)の続きです。3月24日の「要の中間管理職に余裕なし」から。
・・・例えば、日本能率協会が2012年に行った調査によると、対象となった323社のうち89%の企業が組織力向上対策に取り組んでいると答えています。具体的な対策としては、従業員満足度調査、理念・経営ビジョン・経営方針の浸透、部門間・部門内の関係性向上、リーダーシップの強化などとなっています。
ただ、同時に明らかになったのは、組織力強化に取り組んだ企業の多くが、その効果を実感できていないということです。上記の調査でも、対策に取り組んだ企業のうち実に82%が、具体的な成果が出ていないと答えています。全体では約73%を占めています・・・

・・・多くの企業の話を聞いていると、もう一つの要因が働いているように思われます。それは中間管理職(ミドルマネジャー)の役割の変化です。組織力は基本的に職場のあり方に依存します。そのため、こうした組織力を維持または向上していくためには、現場リーダーである中間管理職の役割が大きくなります。
ところが肝心のミドルマネジャーは、組織力の維持・向上に取り組む余裕がない状況に置かれているのです。多くの中間管理職がプレーイングマネジャーの役割を与えられ、産業能率大学の11年の調査では、プレーヤーとしての仕事の割合が業務の半分を超えている人の割合は約40%となっています。これでは組織力の維持・向上に割く余裕はあまりないでしょう。
要となるべき職場リーダー(中間管理職)が、組織力の維持・強化に注力できる環境の整備が必要です・・・

なるほど。原文をお読みください。

企業の組織力

2017年3月22日   岡本全勝

日経新聞「やさしい経済学」で、守島基博・一橋大学教授の「毀損した日本企業の組織力」が始まりました。「組織能力」について、次のように書いておられます。
・・・企業の「得意技」とでもいうもので、競合企業との差別化を持続的に可能にする能力を指しています。製造業のモノづくり能力などが例として挙げられます。
ただ、近年は別の議論も目立つようになってきました。経営戦略と深く結びついた差別化能力と異なり、どの組織も基盤として持つべき強みのようなものが、持続的競争力のためには必要だという議論です。
例えば職場内訓練(OJT)で人を育てる力です。OJTが機能するには、直属の上司が教えるほか、現場で本人の能力よりも少し高いレベルの仕事を与え、周りみんなで支援し、ほめたり注意したりしながら、その経験からの学びを最大にしていくプロセスが大切です。つまり、人材を育てる力は組織全体で担われる組織能力なのです・・・

私は、役所の持つ組織力を考えてきました。「社風」と言った方が通じるでしょうか。「社風」というと、「気風」と取られてしまいますが、能力の違いです。その組織が持っている、過去から引き継いだ能力の高さ、強みです。
国の各省庁でも、省が違うと、新しい課題への取り組み方に違いがあります。自治体も、法令に基づき同じように行政を処理していても、役所によって仕事の仕方や気風、さらには能力が異なるのです。新しい課題に逃げない、議会答弁案作成を逃げないと言ったものもあります。
個人の場合だと、仕事に取り組む積極性といった性格であり能力です。それは文章には表しにくい、また数字ではとらえにくいものです。連載「明るい公務員講座」でも、解説しようと予定しています

作業工程の共有

2017年3月22日   岡本全勝

3月19日読売新聞「震災6年」は、青柳隆・元ルネサスエレクトロニクス那珂工場長のインタビューを載せていました。
那珂工場は、自動車用のマイコンを作っている工場です。これは、エンジンや変速機の制御に欠かせない部品で、世界の約4割、日本の約6割を占めています。この工場が被災したことで、日本の自動車生産が止まる恐れがありました。復旧に際しては、取引先の自動車メーカーが社員を応援に出してくれて、9月復旧予定が、6月には生産が再開することができました。取引先からの応援は、ピーク時には1日2,500人、延べ8万人だったそうです。その状況や教訓は、原文をお読みください。ここでは、応援を受けた際の言葉を紹介します。

・・・「トヨタ生産方式」の手法も活用させてもらった。大部屋を設け、組織図からすべての作業の工程まで最新の情報を壁に貼りだし、情報共有を徹底する。復旧計画が前倒しされる中でも、大部屋に行けば誰もが一目で現状を知ることができ、作業が円滑に進んだ・・・

私も、常に心がけていることです。職員は、部分部分を担当しています。その際に、全体はどうなっているのか、そして自分がどの部分を担っているのかを知ってもらうことが重要です。すると担当者は、自分がしなければならないことを理解するとともに、関連部署に対して「ここはどうなっているの?」と問い合わせたり、「ここを忘れているのでは」と指摘することができるのです。
全体工程を管理するのはもちろん、トップの役割ですが、細かいところまでは把握できません。大きな方向と関係者への役割分担を決めて、後は担当者に任せる必要があります。そして、担当者から「ここはおかしいのでは」「ここが抜けています」といった指摘をもらって、全体工程表を修正していきます。

そのためには、全体の工程表と役割分担を、関係者に見せる必要があります。まずは、それぞれを1枚の紙にすることです。それを壁に張り出したり、パソコンでみんなが見ることができるようにします。それを、毎日のように必要に応じて更新していきます。
また、大震災の被災者支援や復興では、住民や自治体、国民、マスコミにも、課題と進捗状況を知ってもらう必要がありました。それは、ホームページに載せることで、誰でもどこからでも見ることができるようにしました。現在も、インフラ復旧などは、それを続けています。