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中根千枝先生「タテ社会と現代日本」

2019年12月9日   岡本全勝

中根千枝先生の新著『タテ社会と現代日本』(2019年、講談社現代新書)を読みました。『タテ社会の人間関係』(1967年)は半世紀にわたるベストセラーなので、読まれた方も多いでしょう。「紹介

新著は、タテ社会から現代日本を読み解いたものです。
タテ社会では、参加者は全面的な参加を要求されます。それが、長時間労働を生みます。契約や資格によって参加していないので、長くその組織にいる者が上位に来ます。それが、新参者へのいじめ、非正規雇用問題を生みます。家族という小集団が、家庭内虐待問題を生んでいることなど、ハッとさせられる指摘が並んでいます。

『タテ社会の人間関係』は1967年、昭和42年の出版です。東京オリンピックが昭和39年、大阪万博は45年です。高度経済成長の前半期でした。それから半世紀、日本社会は大きく変貌しました。しかし、場を重視するタテ社会という、日本社会の基本構造は変わっていないようです。
いま、連載「公共を創る」で、社会の文化資本、この国のかたちを書いているところです。中根先生の本も、引用しています。この項続く

政治家が示す目指す社会像

2019年12月9日   岡本全勝

12月4日の朝日新聞オピニオン欄、国分高史・編集委員の「仏改憲が教えること めざす社会像、論じるのが先」から。
・・・ フランスは戦後、昨年まで27回の憲法改正を経験している。多くは議会の行政監視機能の明確化など統治機構に関するものだが、憲法院(憲法裁判所)による違憲判断を克服し、研究者に「特筆すべきだ」と評価されている例がある。
1999年と2008年に、男女の平等な社会参画を促す条項を加えた改正だ。前者は議会選挙の候補者を男女同数にすることを政党に義務づける「パリテ法」制定に道を開き、後者はそれを議会だけでなく、企業の取締役など広く社会一般に広げることを目的とした。
仏国民議会(下院)の女性議員比率は、改憲前の水準から4倍近い40%になった。ひとまずここまで来るには、女性たちの粘り強い運動や議会内外での論争など、国民合意に向けた長年の積み重ねがあった・・・

・・・フランスでは家父長制の伝統が根強く、1789年の人権宣言でも女性は対象外とされた。女性参政権が認められたのは、欧米ではかなり遅い1944年のことだ。
それでも70年代から女性の政界進出の機運が高まった。82年には社会党の女性議員が北欧発祥の「クオータ制」を地方議会選挙に導入する選挙法改正案を提出。候補者名簿に25%以上の女性を載せることを政党に義務づける内容で、議会を通過した。
だが、憲法院はこの改正案を違憲と判断した。全ての市民は法の前に平等であり、性で候補者を区別するのはフランス共和主義の理念に反するという理由だった。
この壁を乗り越えるには、どうしたらいいのか。そこで出てきたのがパリテの理念だ。一定割合を女性にあてるクオータ制には、男性への逆差別との批判がつきまとう。これに対し、パリテはざっくり言えば「世の中は男女半々なのだから、議会も男女半々に」というものだ・・・

・・・政治の動きを、最後に後押ししたのは世論だった。憲法のどの条項を改正するかをめぐり、政府・国民議会と保守的な元老院(上院)が対立すると、一般紙だけでなく大衆紙や女性ファッション誌も競うように賛否両論を特集。関心が薄かった市民を巻き込み、パリテに消極的と見られた上院に批判的な論調が強まっていった。
上下両院は妥協に向かい、政府案提出から1年後の99年6月、「選挙で選ばれる公職への男女の平等なアクセスを促す」など二つの条項を加える案が、両院合同会議で可決された。採決では、国民投票がなくても成立する「有効投票の5分の3」を超え、ほぼ満場の賛成票を集めた・・・
・・・この経験から日本が得られる教訓は何か。「多くの人が正義だと考える政治課題の実現を憲法が妨げている時、合意をつくって改正という最終手段をとる。これこそが憲法改正のあるべき姿だと思います」と糠塚さんは話す。
私は、日本でも女性議員を増やすためにすぐに改憲すべきだと主張したいわけではない。フランスでも改憲までの丁寧な合意形成やその後のフォローアップがなければ、前進はしなかっただろう・・・

連載「公共を創る」執筆状況、第2章2途中

2019年12月8日   岡本全勝

定例のぼやきです。
第2章「1公私二元論から官共業三元論へ」の原稿を編集長に渡したのが、10月下旬。記事にして5回分あったので、しばらく余裕を持って過ごしました。
しかし、1か月は、あっという間です。貯金が、12月19日発行分で底を突きます。とうとう、編集長から「続きの原稿はまだですか」との催促が来ました。

第2章「2社会的共通資本(1)社会の財産」は書き上げて、右筆たちに手を入れてもらいました。現在執筆している第2章は、これまでに考えていたこと、このホームページでに書いたことなどを基にしています。しかし、論旨が通った文章にするのは初めてです。政治学、経済学、社会学で議論されていることも多いのですが、これだという参考になる書物はありません。二人の右筆から鋭い指摘をもらって、書き換えました。

できた分だけを出稿するという判断もあるのですが、続く「(2)この国のかたち」や「(3)次代への責任」にも、議論がつながってくるので、なかなか完成しません。先達の議論を参考にすることも多く、その確認にも時間がかかります。
しかし、催促が来たので、見切り発車しました。

ところが、出稿してから、執筆準備のために書き留めてあったメモや買ってあった本が出てきます。「あ、これも書く予定だった」と思いだして、加筆を考えます。ゲラになってから手を入ましょう。
うろ覚えだった点を確認しようと本棚を探しますが、なかなか出てきません。しかたがないので、アマゾンに発注して配達してもらっています。中古の本は安いのがあるので、ついつい買ってしまいます。
ところが、なかなか読む時間を作ることができず、執筆に反映できないのです。昼はとてもそのような時間が取れず、夜は異業種交流会から帰って布団の中で読み始めますが、早々と寝てしまいます。全然進みません。その間に、時間が経ってしまいます。困ったものです。

(2)の原稿もまだ生煮えなのですが、早い段階で右筆たちの意見をもらった方が良いと考えて、送り込みました。右筆1号と右筆2号さん、よろしくお願いします。

ネット社会でも共有されない情報

2019年12月8日   岡本全勝

12月4日の朝日新聞オピニオン欄、今年のノーベル化学賞受賞者、吉野彰さんのインタビューに、興味深い話が載っています。
「ネット社会が進み、情報を共有しやすくなっていますしね」との問いかけに。先生は、「ぼくは逆だと思う」と否定しておられます。

・・・表面的な情報はみんなが共有しているけど、肝心の情報は意外とつかめていないんですよね・・・情報を出す側は差し障りのない情報は出すけど、ひそかに自分で考えているアイデアなんて、絶対に出さないですよね。もし出すとしたら、夜の席でワインを傾けながらでしょう・・・
原文をお読みください。

連載「公共を創る」第27回

2019年12月7日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」の第27回「公私二元論から官共業三元論へ 民間非営利活動」が、発行されました。

公私二元論に代えて、官共業三元論で社会を見ると、さまざまなことが見えてきます。行政(政府)と企業(経済活動)のほかに、NPOや中間集団も社会の重要な要素です。
民間活動は、営利活動ばかりではありません。非営利で社会に貢献するような慈善活動や、構成員の利益のための活動などもあります。ボランティア活動やNPOの発展によって、民間非営利活動が再認識されるようになりました。

また、同業団体や宗教集団、さまざまな同好の士の集まりといった中間集団は、個人に帰属意識と安心を与えてくれます。社会にとっても、個人を孤立させない重要な機能を持っています。
政治学も経済学も、まだこれらの機能を十分に位置づけていないようです。