投稿者アーカイブ:岡本全勝

NHK「 証言記録東日本大震災」

2020年8月2日   岡本全勝

NHK総合テレビ、8月2日午前10時5分から「明日へつなげよう 証言記録東日本大震災」は「経営危機の瀬戸際を生き抜け~水産加工起死回生の策」でした。
・・・東北沿岸の基幹産業である水産加工業。国は震災後、工場や設備復旧のために前例のない企業への資金援助に踏みきった。しかし近年、資金繰りが行き詰まり倒産する会社が続出。補助金の運用面などでの問題が明らかになった。一方、補助金だけに頼らず、地域の企業が連携して商品開発や販路を開拓、徐々に効果を見せているプロジェクトもある。ポストコロナの時代にも通じる経営の知恵を石巻市の水産加工業者の復興から探る・・・

取り上げられたのは、グループ補助金と結の場です。
公共施設と住宅の再建だけでは、地域と住民の暮らしの復興はできない。産業とつながりの再建が必要だと考え、東日本大震災では、それまでにない支援策をとりました。中小企業グループ補助金もそうです。これまで、企業への災害復旧補助金はなかったのです。
ところが、施設設備を整えても、経営が回復しない事例もでてきました。事業再開までの間に、都会の売り場の棚を他の産地に奪われていたのです。これは、補助金では解決できない問題です。補助金を出せば、その期間は売れるでしょうが、補助金がなくなればダメになります。そこで、大企業から人とノウハウの支援をもらうことにしました。
それが、結の場です。この仕組みを考えてくれたのが、民間から復興庁に来てくれた職員たちです。

番組では、この二つを紹介するとともに、グループ補助金の限界・欠点も取り上げていました。初めてのことでもあり、現場の要望にすべて応えることができていなかったのです。いくつか修正しましたが。復旧を急ごうとすることの限界があります。反省して、次に進みましょう。
もう一つの問題は、企業の実態や現場を行政は十分に知らないのです。かつてに比べ、公務員が現場を見ること、意見交換をする機会が減っています。災害復旧だけでなく、多くの政策分野で問題になると思います。
この二つの政策が、現場でどのように受け入れられたかを丁寧に取材した、良い番組でした。役所は制度をつくるとその広報はするのですが、その結果についての評価は下手です。この番組は、復興庁にとっても、良い記録になります。

番組に登場した山本啓一朗君(NEC)から、見るようにと言われていたのですが。すみません、事前にお知らするのを怠っていました。2週間は、無料でオンデマンドで見ることができるようです。

連載「公共を創る」50回達成

2020年8月1日   岡本全勝

連載「公共を創る 新たな行政の役割」が50回になりました。2019年4月から始めて、1年3か月です。

これまで、次のような内容を書いてきました。
まず第1部では、東日本大震災で体験し考えた、政府の役割とその変化を述べました。そして、災害復興だけでなく、社会の変化によって行政の哲学が変わったことを説明しました。
第2章では、その行政の哲学の変化から社会全体を見直すと、これまでの行政の対象が狭かったことを指摘しました
第3章では、日本社会が大きな転換期にあることを説明しています。経済成長を達成し、近代を完成させた時に、これまでとは違った課題が生まれてきたこと、これまでの行政手法や私たちの考え方が機能不全を起こしていることを説明しています。

第1章 大震災の復興で考えたこと
1 想定外が起きたー政府の役割を考える 第3回~第8回
2 町を再建するーまちとは何か 第9回~第11回
3 哲学が変わったー成長から成熟へ 第12回~第23回
第2章 暮らしを支える社会の要素
1 公私二元論から官共業三元論へ 第24回~第28回
2 社会的共通資本 第29回~第38回
第3章 転換期にある社会
1 日本は大転換期 第39回~

全体構成」では、これでほぼ半分を過ぎました。もっと早く進む予定だったのですが、書き始めると分量がどんどん膨らみます。歴史になったことや、その時々の問題や事件は書物になっているのですが、近過去そして私の視点のような変化は書かれたものが少ないです。
執筆に当たっては、私の視角から筋書きを書き、そこに事実を当てはめていきます。事実の確認に手間がかかります。簡単にはインターネットで調べ、そこからより詳しく調べることをしています。数表作成などは、知人たちの協力を得ています。ありがたいことです。そして、右筆たちに手を入れてもらいます。私の考え違いを正され、読みにくい文章がわかりやすくなります。さらに、編集長が1回ごとに切り分け、校閲さんが文章を正しくしてくださいます。

ちなみに、同じく『地方行政』に連載した「明るい公務員講座」は、初級編が35回、中級編が42回でした。

心理社会的なストレスによる病気

2020年8月1日   岡本全勝

7月26日の読売新聞、中井吉英・関西医大名誉教授の「心療内科の神髄 体と心 患者さんに触れる」から。
「社会が複雑化し、ストレスであふれた現代。先の見えないコロナ禍も重なり、今後は心身の調子を崩す人がじわじわと増えることが予想される。ストレスが背景にある病気は、検査で異常が見つからないことも多く、診断と治療が難しい」

「ベッドサイドで手を握る。体をさする。大人もそれで安心します」
・・・心療内科医になって50年がたちました。でも、いまだに心療内科は多くの人に誤解されています。
精神科は、統合失調症やうつ病、不安症などの精神疾患が対象。神経内科は、パーキンソン病や脳梗塞こうそくなど脳神経系の病気を診ます。
一方、心療内科は、「体と心を分けずに診療する内科」です。主に心理社会的なストレスの影響で、体に不調が表れたり、もともとあった病気の症状が悪化したりした身体疾患(心身症)を診る「心身医学」を、内科の領域で実践します。心療内科医は名前の通り、内科医なのです。

1995年の阪神大震災の時、避難所の体育館に70代の男性がいました。被災後に血圧が高くなり、降圧剤を飲んでも上の血圧が180から全然下がらない。話を聴くと、地震で家が倒壊し、親友が目の前で亡くなった。その場面が何度もフラッシュバックとして現れ、1か月間、ほとんど眠れなかったといいます。私は彼の脈を診ながら手を握り、じっくりと話に耳を傾けました。その後に睡眠薬を処方すると、男性はぐっすり眠れるようになり、血圧も120台にまで下がりました。

人間関係の悩みからじんましんが度々発症していた30代の男性。夫の言葉による暴力から胸痛が表れていた50代女性。幼少時から親に甘えられず大量の飲酒を繰り返して慢性膵炎すいえんになった40代男性――。こうした患者さんたちは、医師が身体所見を正確に診た上で、心理面をはじめ、家族、学校、職場などの社会・環境まで見据えた「全人的医療」を行うことで症状が改善されるのです。
このような心療内科の診療で特に大切なのは、患者さんに「触れること」です・・・

テレワークの短所

2020年7月31日   岡本全勝

7月27日の日経新聞、西條都夫・編集委員の「一過性で終わらせない 希望と不安のテレワーク」から。テレワークの長所と短所が並べられています。

・・・これがテレワークの理想像とすれば、他方で負の側面も浮かび上がった。現時点で明確になったマイナスは2つあり、一つは(田中社長の感想とは正反対の)生産性の低下、もう一つは働く人の不安の増大だ。
前者については6月の内閣府の調査で「仕事の効率が上がった」と答えたテレワーク経験者が9.7%だったのに対し、「下がった」は47.7%に及んだ。他の調査でも同様の結果が出ており、これが緊急事態宣言解除後にオフィス回帰が急速に進んだ理由である。
背景にあるのは、「コロナによって、突然余儀なくされたテレワーク」による準備不足だろう。テレワーク研究で有名な米スタンフォード大のニコラス・ブルーム教授は生産性の足を引っ張る最大の要因は「子供」だという。
「うちにも4歳の男の子がいて、パパが家にいると遊んでほしくて書斎に乱入してくる。これは生産性の大きな妨げ」と教授はいう。ほかに「自室がなく家族共用の食卓で仕事をする」「通信状態が悪い」といった要因も大きく、家で働くための環境整備がテレワークの成果を引き出す前提条件であることが分かる。

「不安」については、職場における基盤が弱い若年層がより強く感じているのが特徴的だ。例えばパーソル総合研究所の調査によると、見えない場所で仕事をするので「上司から公正に評価してもらえるか不安」という人は50代では23%にとどまったのに対し、20代は43%に達した。
全員が会社に来ない一斉テレワークより、来る人と来ない人が混在する「まだらテレワーク」のほうが不安を助長するというデータもある・・・
・・・コロナによるテレワークの機運が一過性で終わるのは、やはり惜しい。日本経済の直面する人手不足やワークライフバランスの改善などの課題解決にテレワークは威力を発揮する。マイナス面を抑える取り組みが企業には求められる・・・