投稿者アーカイブ:岡本全勝

人災による文化財の損傷

2026年2月16日   岡本全勝

1月26日の朝日新聞が、「文化財 危機と未来 悠久の宝、災害から守るには」を載せていました。
・・・私たちは「大災害時代」を生きている。悠久の時を刻む文化財たちも例外ではない。その歩みは被災と復興の繰り返しであり、それぞれの来歴を知ることは文化財の未来を占うことに等しい。先人が残した宝を次世代に引き継ぐため、いま私たちにできることはなにか。まずは被災の歴史を振り返ることにしよう。
1949年1月26日、奈良・法隆寺の金堂壁画が燃えた。酷寒の模写作業中で電気座布団の切り忘れが原因ともいう。日本が誇るアジア仏教美術の至宝の焼損が放った衝撃は翌年の文化財保護法のスピード制定につながり、被災の日は「文化財防火デー」として痛恨の記憶を後世にとどめている・・・

そして、写真ともにその後の文化財の損傷が載っています。台風や地震は仕方ないとしても、人災、主に火災が多いことに驚きます。
1950年7月2日には、金閣寺が放火で全焼。1954年8月16日には、京都御所内の小御所が、花火大会の打ち上げ花火の落下傘で全焼。1956年10月11日には、比叡山延暦寺大講堂が全焼。1976年1月6日には、平安神宮本殿や拝殿が放火で全焼。2019年10月3日には、首里城が炎上(電気設備からか)。
せっかく長年にわたって大切に保存されてきた建物が、こんなことでなくなるとは。

新聞社社長に必要なもの

2026年2月15日   岡本全勝

日本経済新聞社は、次期社長に飯田展久専務が社長に昇格する人事を内定しました。経歴を見ると、記者の出身ですが、編集局長を経ず、情報サービス部門から就任されるようです。

新聞社の組織の中では、記事を書く編集部門が最右翼です。記事が商品なのですから。しかし、優秀な記者が良い経営者になるかというと、そうではないでしょう。求められている能力が違うのです。良い料理人が良い経営者になるとは限らない、良い選手が良い球団経営者になるとは限らないことと同じです。
新聞社も企業ですから、そしてかつてのように良い記事を書けば売れる時代でなくなったので、どのようにして「稼ぐか」が課題です。日経新聞は、それを前面に出したと思われます(間違っていたらごめんなさい)。
外国なら、会社の外から経営の専門家を呼ぶこともあります。でも、私は、記者のようにその会社の第一線の経験があり、その苦労がわかっている人が幹部になる方が、経営にも良いと思います。

この記事には「日経電子版の有料会員数は24年12月に100万人を超え、英フィナンシャル・タイムズなどを含めた有料ID数は世界3位に成長した」ともあります。
他方で、2月6日の読売新聞「民主主義 揺らぐ恐れ 米紙大リストラ メディア縮小 権力監視機能低下」は、ワシントン・ポスト紙が従業員の3分の1を解雇したことを伝えています。アメリカでは、主な日刊紙の発行部数が1980年代の6200万部から、2025年には1525万部と、4分の1に落ち込んでいます。2005年に8900紙あったのが、3500紙に減少しています。ニューヨーク・タイムズが内容を拡充し収益を多様化したのに対し、ワシントン・ポストはオンラインの収益化で苦戦したのだそうです。
2050年のメディア

「総合的」とは

2026年2月15日   岡本全勝

1月27日の朝日新聞夕刊「いま聞く」は、イアン・アーシーさんの「「総合的」?何を総合してますか」でした。

・・・「総合的に判断して」「総合的・俯瞰(ふかん)的に検討しまして」。判断の理由がわかったようなわからないような……。政治ニュースでよく聞くこの言葉、著書「ニッポン政界語読本 単語編」で取り上げた翻訳家のイアン・アーシーさん(63)に聞いた。「総合的」って、総合的に考えてどんな言葉ですか?

1984年に初来日。「総合的」の言葉は「かなり早い時期から気になっていました」と言う。「何を総合するのか分からない。訳すのに苦労したことが幾度となくあります」
90年代、大学に「総合○○学部」といった名称の学部が出てきた。広い視野で物事を考え研究する学部と思いつつ、「いったい何をする学部なのか」。
2015年、自衛隊による武力行使が可能な範囲を広げる安保法制の法案をめぐる議論でも「総合的」はよく使われた。例えば、存立危機事態とは何か。当時の安倍晋三首相は「状況を総合的に判断して存立危機事態に当たり得る」(15年7月)。

20年秋に発覚した、日本学術会議の会員候補6人を菅義偉首相(当時)が任命拒否した問題でも「総合的」は頻出した。ただ、菅首相の「総合的」は「進化とも言える変化形」と言う。
例えば、20年10月5日の内閣記者会インタビューなどで、菅首相は「総合的・俯瞰的」を多用した。俯瞰的とは、高いところから全体を見下ろす、という意味。「総合的とセットになると『恐れ入った』と思わせる効果すらありますね」。この言葉はさらに進化を遂げ、以降の官房長官会見では「総合的・俯瞰的観点」と「観点」がつくようになった。
6人をなぜ任命しなかったのか、明確な理由は今に至るも分からない。「『総合的』とは判断の根拠をあやふやにするのに便利なぼかし言葉。政治家はよく言葉を分かっています」

仲間の言葉として、「原則として」「など」もあるという。特に「原則として」は、例外を無限に拡大して範囲が不明瞭になると指摘し、「総合的」に並ぶ「ぼかし言葉の二大巨頭」と位置づける。

こうした政治家の言葉に、特に記者たちはどう立ち向かっていくべきなのか。
「面倒くさいまでに具体的に列挙させること。何と、何と、何を『総合』するんですか、と。具体的にどういう項目を判断材料にしたのかを語れないのであれば、それは言葉を隠れみのに使った逃げ。『総合的』という言葉も、そんな使われ方をされたら不本意でしょう」・・・

そうですね。「総合的に勘案して」という場合にも「甲、乙、丙を総合的に勘案して」と使えば、納得してもらえるでしょうか。それぞれの要素の配分点は明らかではないのですが。「甲、乙、丙などを総合的に勘案して」となると、「など」に何が入っているかわからず、ごまかしになります。

それは本当にタイパなの

2026年2月14日   岡本全勝

今時の言葉に、コスパ、コストパフォーマンス(費用対効果)という言葉とともに、タイパ、タイムパフォーマンスという言葉があります。両方とも和製英語だそうです。費用対効果は英語では、cost effectiveness だそうです。
タイパは、かけた時間に対する効果、時間対効果です。若者が重視するとのこと。電車の中で、あるいは歩きながらスマートフォンを操作している人を見ると、タイパが悪いことをしているなあと思います。本人は、空いている時間や歩いている時間にスマホを見るのだから、タイパが良いと思っているのでしょうが。

「ながら」は、効率が悪いです。人間の脳は、一度に一つのことしか処理できません。同時に二つのことをやっていると思っていても、実は頭はその切り替えに時間と労力を費やしているのです。アインシュタインの言葉に「美人にキスしながら 安全運転ができる人間は、 キスに十分集中していない」があります。歩きスマホは、危ないし、周囲の迷惑です。さっさと歩いて、立ち止まってスマホを操作してください。
「電車中なら迷惑もかけない」と思っているあなた。その間に、頭は疲れていますよ。一日のうちに、人間が集中できる時間は限られています。そして、疲れは蓄積されます。電車中で居眠りすることはお勧めしませんが、ぼけ~としていることにも効果があるのです。

あなたは、何のためにスマホを見ていますか。スマホに、あなたの注意と時間を奪われていませんか。それはあなたの人生を充実させ、幸せにしてくれていますか。忙しいことの成果は、何でしょうか。
その瞬間の時間対効果と、一日や長い目で見た時間対効果は別です。スマホ画面の注意を引きつける画像は、害毒だと心得ましょう。スマホは、あなたの時間と脳を盗むの泥棒です。
いつものように、老人の繰り言です。

上司と部下の一対一対話

2026年2月14日   岡本全勝

1月20日の日経新聞夕刊「「1on1」惰性にしないコツ」から。1on1って、一対一対話のことですよね(日本語もここまで来たか)。

・・・職場での新しいコミュニケーションの形である「1on1(ワンオンワン)」に工夫を凝らす企業が増えている。一方通行ではなく双方向のやりとりとして注目されているが、形式的な導入で効果を疑う見方も根強い。鍵となるのは1on1にどのような役割を持たせるかという明確な目的意識の違いだ。

「取引先との商談中にフォローしてもらえなくて悲しかった」「小さな成果だったけど褒められてとてもうれしかった」――。人材サービスのエンの営業部門で2人の部下を持つ小林菜津子さんは毎月末、1カ月の業務を振り返る1on1の中に部下から「うれしかったこと」「悲しかったこと」を聞く「キモチ伝達タイム」を組み込んでいる。
5〜10分程度だが、伝えることをためらいがちな人でも専用の時間をつくれば言いやすくなる。部下は気持ちを率直に言葉にするだけで、上司はあくまで聞き役に徹する。

エンでは社員に求める業務遂行能力の一つに「キモチ伝達力」を定めている。感情を言葉にすることで、チームメンバーの考え方の違いをお互いが理解して、わだかまりをできにくくする狙いだ。
小林さんの部下で新卒1年目の白石彩絵さんは「業務が逼迫してつらいとき、『つらい』ということを言っていいのか分からなかった」と入社当初を振り返る。素直に感じたことを伝えたことで、業務の優先順位を整理するなど具体的な解決につながった。
小林さんは「部下の関心や適性を把握して、今後のキャリアプランを考えることにもつながる」と副次的な効果も実感している。

パーソル総合研究所の調査によれば1on1はおよそ8割の人が経験済みだが、部下の3割は「効果を感じられない」と答えた。月1回などの高い頻度で開かれ、人事評価には直結しないといった点が考課面談とは異なるが、それだけに目的が曖昧なままでは意義を実感しにくい。

面談相手の「指名制」を採る企業も増えている。
教育システム開発のロゴスウェア(茨城県つくば市)は1on1を「ひとりで解決できないことを相談して、解決の方向性をつくる場」(高濱洋子・最高人事責任者)と位置づける。上司や部下に限らず、部門や立場の上下を超えて誰に対しても面談を申し込める点が特徴だ。この仕組みは新しい事業を立ち上げる際のチームづくりに効果を発揮している・・・