テレビで世界の鉄道や駅を旅する番組があります。例えば「NHKヨーロッパ発 駅ロマン」。中には、立派な駅があります。建物が立派なだけでなく、広々として、開放的な空間があります。新しくなった広島駅の路面電車乗り場もきれいなようです。
それに対して、東京駅です。丸の内側の正面外観は風格があります。もっとも、これを見るのはニュースくらいで、多くの人はこれを見ずに駅の中を移動します。
では、構内はどうなっているか。みなさんは、どのような印象を持ちますか。私は、混雑した通路としか思えません。
利用客は、当初の想定をはるかに上回っているのでしょう。人とぶつからずに歩くのが難しいくらいです。しかも、不案内な旅行客や、大きな荷物を持った客も多いです。
広い空間や高い天井の空間はありません。せいぜい、丸の内側の北と南の入り口、六角形の場所くらいでしょうか。あとは、低い天井の通路だけです。待合場所も狭いです。
絵になる場所、写真を撮りたい場所がないのです。
そして、やたらと売店が並んでいます。駅というより、商店街です。鉄道会社が業績を上げるために、できる限り店を入れているのでしょう。
その意図はわからなくはありませんが、「公共空間」「出会いの場」といった価値は忘れられています。駅には美術館も作られていますが、ちぐはぐです。あるいは、言い訳でしょうか。
新幹線は快適な乗り心地や時間の正確性を誇り、特急列車も外観に力を入れているようです。しかし、駅に関しては、通路・通過点と商店街でしかないようです。
このような公共空間の素晴らしさは、広さと高さ、意匠などにあります。それは無駄かもしれません。しかし、魅力とはそのようなものでしょう。東京駅には、それを期待できません。
駅は、出会いや別れの場です。でも、映画の撮影には、使われないでしょうね。利用した人は、国の内外を問わず、東京駅に特別な印象や記憶を持つことはないでしょう。残念なことです。