投稿者アーカイブ:岡本全勝

去年の今頃

2021年9月16日   岡本全勝

去年の今頃、何をしていたか、世間はどうなっていたか、覚えていますか。
先日ある人から「去年の秋は、旅行に行ったり、飲食もしていましたよね」と言われ、「そうだったけ」と議論になりました。
私は、昨年春のコロナ流行から、行動制限が続いているような錯覚に陥っていました。「1年半も、会食ができず、旅行も制約があるよな」とです。しかしその人の指摘を受けて、思い出しました。ゴーツートラベルキャンペーンって、やっていましたよね。

手帳を出して確認したら、去年の秋は、国内旅行も出かけていて、被災地視察も行っていました。夜の会食もです。
NHKウエッブで見ると、去年の9月ごろは、全国の一日の感染者数が500人程度だったのですね。今年の夏の万単位とは、まさしく桁が違いました。

去年のことを思い出すことも重要ですが、未来を考えなければなりません。来年の春、来年の秋に、どうなっているか。またどうするかです。
コロナウイルスを完全に押さえつけることは難しいでしょうが、うまく制御して、日常生活を取り戻したいです。見通しを示すこと、それに向かって条件を整えることが、為政者の任務でしょう。
子どもたちや学生、新採職員の養成など、そして飲食店や旅行業とその関係者のことを考えると、まずは一定の制約つきで行動制限が緩和できるようになると良いですね

「エビデンス至上主義」の危うさ

2021年9月16日   岡本全勝

朝日新聞デジタル医療サイト、失敗学の畑村洋太郎さんの「「考え」ない菅首相、その罪深さと正しさ」(9月12日)の後段から。

・・・僕は東京電力福島第一原発事故の政府の事故調査・検証委員会の委員長を務めたけど、失敗の原因をさぐるためには、なぜこんなことが起きたのか、「推測する力」が必要な場合もあるんだ。
ところが今の科学は、推測で書いているようなものはどんどん排除しようという方向になっている。「エビデンス」などといって、証拠がないことを発言してはいけない、という空気も強まっているように思う。
でも、そういう考え方の制約を外さないと、正しい考え方はできないんじゃないか。

委員長をやっていたときに開いた国際会議の中間報告書で、僕は「あり得ることはこれからも起こる」「あり得ないと思うことも起こる」と書いた。
そしたら、フランスのラコステ原子力安全庁長官が「『思いつきもしないことさえ起こる』というのも足さないと、人間が考えるすべての領域を全部、採り上げたことにならないぞ」と言ってくれた・・・

2人孤独死

2021年9月15日   岡本全勝

9月14日から朝日新聞社会面で、「2人孤独死」が連載されています。
内容は、記事を読んでいただくとして。高齢者の2人暮らしで、2人とも倒れる、あるいは世話をしていた方が倒れることでもう1人も倒れる事例が載っています。このようなことも起きるのですね。

高齢者の一人暮らしは孤立し、孤独死の可能性があります。このことは、世間では認識されていますが、2人暮らしでも危険性は高いのです。
ここでわかるのは、独り暮らしが危険、2人暮らしが危険というのではなく、孤立していることが危険だということです。外部の人と毎日の付き合いがあれば、助けを求めることができるでしょうに。
プライバシーが守られる、扉を閉めれば内部の様子がわからないアパートやマンションででは、孤立はさらに高まります。

他方で、新型コロナウイルス感染症で、一人暮らしでの危険性も報道されています。
一人暮らしで何かあった際の危険、そして孤立していることの危険。これらへの対処が求められています。連載「公共を創る」で取り上げている主題の一つです。

追いついた後、投資先がわからなくなった日本の資金

2021年9月15日   岡本全勝

9月10日の日経新聞経済教室「金融緩和の功罪」は、村瀬英彰・学習院大学教授の「政策に期待する機能、熟考を」でした。

・・・低インフレ、低金利、低成長。日本経済は様変わりした。変化の根底には貨幣・国債を中心とする安全資産への需要の膨張がある。それは貨幣・国債の大量発行にもかかわらず、歴史的な低インフレ、低金利をもたらしている(図参照)。また低成長の原因にもなり、金融政策に期待される機能にも変化を生み出している。

貨幣・国債といった安全資産の需要が異例の膨張をしたきっかけは、1980年代に遡る。その時期、日本は欧米諸国にキャッチアップした。だがフロントランナーになると、成長の成果として蓄えた膨大な資金をどこに投資すべきかがわからなくなった。行き場を失った資金はバブルの狂乱を生み、バブル崩壊後の不良債権処理の遅延は銀行のリスク負担能力を奪っていった。
銀行融資中心の日本の金融では、銀行こそがリスクマネーの供給者であり、資本市場のリスク負担能力は十分でなかった。日本はフロントランナーになり一層のリスクマネーを必要とするタイミングで、リスクマネーを失う最悪の事態に陥った。
実際その後、銀行は貸し出しよりも国債購入を選好するようになり、大規模な金融緩和の下でも超過準備を積み増す傾向を強めた。不良債権の処理が終わった後も、無形資産や人的資本を中核の生産要素とする情報通信技術(ICT)企業などの資金需要に十分な対応ができない状況が続いている。

一方、銀行というリスクマネー供給者を失った企業は投資主体から貯蓄主体に転化し、金融危機が起きるたびに現預金を蓄える傾向を強めた。さらにリスクマネーが消失すると、企業活動のリスクは他の誰かに押し付けられるようになる。非正規雇用の増加など労働者がバッファー(緩衝)として使われるようになり、家計も将来不安の増大から安全資産需要を高めた。
日本の金融機関や企業、家計を覆う全面的な安全志向は、フロントランナーとして不確実性の高い技術革新や資本蓄積、つまりリスク資産への投資が求められる状況で重い足かせとなった。日本が他の先進国の停滞にも増して、より長く深く先の見えない停滞に陥った大きな理由といえる・・・

詳しくは原文を読んでいただくとして。連載「公共を創る」でも、欧米へ追いつくことを国是とした日本が、それを達成した後、長い混迷の時期に入っていることを説明しています。この村瀬先生の説明は、資金の運用から見た、追いつき達成後の日本経済の低迷が明快にわかります。そして、バブルの原因も。

本能

2021年9月14日   岡本全勝

小原嘉明著『本能―遺伝子に刻まれた驚異の知恵』 (2021年、中公新書)を読みました。本能とは何か、昔から気になっていました。
ウィキペディアでは「現在、この用語は専門的にはほとんど用いられなくなっている」とも書かれています。でも、昆虫や動物が親から教えられなくても、歩いたり飛んだり、餌を取り、生殖します。学習しなくても、複雑な行動をすることは、本能なのでしょう。

この本には、いくつもの驚くような行動が書かれています。しかし、まだまだわからないことが多いようです。長い進化の歴史の中で、それぞれの種が身につけたのでしょうが。遺伝子や脳の働きといった「仕組み」の解明は進んでいません。「まだわからないことが多いのだな」ということがわかりました。

本能という言葉が避けられるようになったのは、人間の行動や性格を、十分な根拠もなく「本能だから」と説明したからではないでしょうか。科学的に解明されていないことを、不正確な俗説で決めつけるのは、話は早いのですが、有害な場合もあります。