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ストレスチェックの活用半ば

10月28日の日経新聞夕刊、「ストレスチェック、業務改善に生かせてますか? 専門家と連携で効果」から。

・・・従業員にかかる心理的な負荷の状況を調べるストレスチェックの活用が道半ばとなっている。高いストレスを抱えていると判定された従業員のうち、医師との面接を受けた人は3%に満たない。面接の有効性に疑問を持つ人がいるほか、職場環境の改善に十分つなげられていない現状も浮かぶ。一部の企業は専門家と連携した対応を進める。
ストレスチェックは労働者のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐため、アンケートを通じてストレス状況を把握し、労働環境の改善につなげる制度だ。これまで従業員50人以上の企業が義務化の対象だったが、今年の通常国会で成立した改正労働安全衛生法によって今後はすべての企業に広がる。

メンタルヘルス対策は企業にとって重要な経営課題となっている。厚生労働省によると2024年度に仕事上のストレスによる精神障害で労災と認められた人は6年連続で過去最多となり、初めて1000人を超えた。
ストレスチェックで高ストレスと判定された場合、本人からの申し出があれば医師による面接指導を実施する。企業側は医師の助言を踏まえて従業員の業務負担を減らし、職場環境の改善につなげることが望ましいとされる。
しかし活用は十分に進んでいない。大手IT企業で働くAさん(30)は毎年ストレスチェックで高ストレスと判定されているが、産業医の面接には行っていない。「会社に高ストレス判定がばれると不利益がありそうだし、周りも高ストレス判定ばかりで何の意味があるかわからない」と懐疑的だ。

全国労働衛生団体連合会による2024年の分析によると、高ストレスと判定された人のうち実際に医師面接を受けた人は2.9%だった。面接によって高ストレスであることが事業者側に知られてしまうことを懸念し、Aさんのようにためらう人が多い。
厚労省の調査によれば、メンタルヘルス対策を実施している企業の割合は50人以上の事業所で9割を超える。ただ職場環境の改善効果を労働者が実感できていないことが、ストレスチェックの活用が進まない背景にある。
みずほリサーチ&テクノロジーズが厚労省の委託を受けて行った調査によると、ストレスチェックを通じて職場環境が良くなったと認識している労働者は2割にとどまる。産業医科大学の岩崎明夫非常勤助教は「ストレスチェックをどう活用したらいいか分からず、ただのアンケート調査になってしまっていることも多い」と話す・・・

学位あっても就職難、ブルーカラー選ぶ

10月28日の日経新聞夕刊に「AI猛進の米国、若者の働き口に異変 学位あっても就職難→ブルーカラー選ぶ」が載っていました。

・・・人工知能(AI)と生きる日常はもはや未来の絵物語ではない。AIが知的労働を担うことで大卒の就職難が深刻になり、電力の大量消費はデータセンターに近い地域の電気料金を急速に押し上げている。見えてきたのは、AIは高成長をもたらすが雇用などの恩恵には偏りがあるという現実だ。いち早く導入が進む米国の現状を追った。

米国の就職戦線に異変が起きている。全米で学生情報を集約するナショナル・スチューデント・クリアリングハウスによると、2025年春は配管工や大工などの技術を習得する職業訓練校の入学者数が前年から12%増えた。伸びは大学入学者の4%増を大きく上回る。
数年前から強まったこの傾向の背景には、AIで変わる将来への不安がある。調査会社コンジョイントリーが10~20代のZ世代の親を対象に実施した今年の調査では「大学の学位があれば長期的な雇用安定が保証される」と答えた割合が16%にとどまり、77%が「自動化されにくい仕事」を選ぶことが重要と指摘した。

米フォード・モーターのジム・ファーリー最高経営責任者(CEO)は6月、「AIによってホワイトカラー職の雇用が半減する」と予想。熟練工を確保する重要性を訴え、若者の職業訓練校へのシフトを歓迎した。
こうした動きにはもっともな理由がある。米国の失業率は全体でみれば4%台前半で安定しているが、大卒前後の「20~24歳」に限ると2024年12月の7.5%から25年8月には9.2%まで上昇した。
キャリアを持たない若者の失業率は振れ幅が大きく、景気減速局面でいち早く上昇するのは珍しいことではない。ただ、今回苦労しているのは高卒などの比較的学歴の低い層ではなく、いつもは景気変動の影響を受けにくい大卒であることに特徴がある。

米スタンフォード大学デジタル経済研究所の教授らは8月の論文で、AIの台頭によりソフトウエア開発の分野で22~25歳の雇用が22年後半のピーク時から25年7月までに約20%減ったとの試算を示した。コード生成などの体系化された知識はAIに代替されやすい。顧客の問い合わせに応じるカスタマーサービスでもAIの活用が進む。
「AIによる雇用喪失の初期段階を目撃している可能性がある」。セントルイス連銀のエコノミストらも8月にAIと失業増の関連を認めた・・・

小中高生の半数、読書0分

10月26日の日経新聞に「「読書0分」小中高生の半数、スマホ時間長いほど短く」が載っていました。

・・・1日に全く本を読まない子どもは半数超――。ベネッセコーポレーション(岡山市)が2024年に小中高生や保護者に尋ねたところ、読書をしない(0分)との回答が52.7%で、15年調査時の34.3%から約1.5倍に増えた。一方、スマートフォンの使用時間は延びており、長いほど本を読む時間が短くなる傾向がみられた。
同社が25日までに発表した。調査はベネッセ教育総合研究所と東大社会科学研究所の共同実施で、無作為に抽出した同一の親子を対象に15年から継続して調べている。24年は7〜9月にインターネットで行い、約1万2千組から回答を得た。

24年調査で読書をしないとした割合は、小1〜3年33.6%、小4〜6年47.7%、中学生59.8%、高校生69.8%。いずれも15年に比べ14〜22ポイント増えた。1日の読書時間の平均は小4〜6年で15.6分、高校生で10.1分などで、15年に比べ小4以上で約5〜6分減った。
1日のスマホ使用時間(小4以上が回答)は、小4〜6年33.4分、中学生95.7分、高校生138.3分で、それぞれ15年から約22〜52分増えた。スマホの使用時間が0分の小4〜6年の読書時間は17.8分だったのに比べ、3時間以上だと9.5分に落ち込んだ。中学生もスマホが0分の読書時間は21.7分だったが、3時間以上は12.5分だった。
調査を担当した東大の秋田喜代美名誉教授(教育心理学)は「読書と学力は関連しており、授業の中で紙や電子の書籍に触れる機会を増やすことが必要だ」と指摘している・・・

福井ひとし氏の公文書徘徊7

『アジア時報』11月号に、福井ひとし氏の連載「一片の冰心、玉壺にありや?―公文書界隈を徘徊する」第7回「楽園は何処いずこに―戦前の科学技術政策」が載りました。ウェッブで読むことができます。

今回は、10月に2人の方がノーベル賞を受けられたことにあわせて、戦前の科学技術政策についてです。
日本のノーベル賞受賞第1号の湯川秀樹博士と、第2号の朝永振一郎博士が、旧制中学から大学卒業後まで、京都で同じ学校で学んでいたのです。
今回も、いろんな話が載っています。なかなか、知ることができない話です。

明治の初めに、欧米から最先端の科学技術を輸入することに努めました。御雇外国人を迎えることや留学生を送ることでです。その後の科学技術の振興については、知られていません。世界を相手に戦う(それ自体は間違いですが)軍事技術を持つためには、それを支える科学技術が育っている必要があります。政府や大学が、努力したのでしょうね。

経営の専門家をつくる2

経営の専門家をつくる」、10月16日の日経新聞経済教室、松田千恵子・東京都立大学教授「日本企業は経営のプロを生み出せるか」の続きです。

・・・より大きな問題は、教育にしろ修羅場にしろ体験する年齢が遅すぎることだ。40歳未満の社会人が管理職研修を経験する割合は米国が20.7%、中国が30.8%である一方、日本では7.4%しかない(ベネッセ教育総合研究所の調査)。経営者として実戦で輝くべき世代になってから、ようやく基本の勉強が始まる。
この傾向は、執行役員研修などで顕著にみられる。仮にも「役員」と名の付く人材が、こぞって経営や財務の基本を叩きこまれているのは実に奇妙な光景だ。オペレーショナルエクセレンスに秀でることと、マネジメントプロフェッショナルを極めることは、似て非なるものであり、日本企業に欠けているのは、早いうちから意識的に後者を選抜し、育成する仕組みや仕掛けである。

企業における「経営」や「経営者」の定義が曖昧であることも、それを目指す人々に混乱を与えている。経営の勉強はまだこれからという人材ならば、「執行役員」と呼ぶのもそろそろ見直した方が良かろう。呼ばれる側も焦るかスポイルされるかどちらかである。コーポレートガバナンス上も、法的な責任範囲が曖昧になりがちで、経営判断に対する当事者意識が希薄になるといった問題が懸念される。

「管理職」という名称も評判は悪い。本来、どんなに小さな単位でもチームを束ねる存在は「マネジャー」としてチームの経営を担うはずだ。しかし、多くの場合中間管理職はプレイングマネジャーとして働くことを求められ、マネジャーの仕事は定義もされず、経験を積むことも学習機会を与えられることもなく劣後しがちだ。その結果、マネジメント不在による問題が多発し、仕事は苦情受付と事後処理ばかりとなる。これでは管理職になりたい若者が激減するのも当然だ。

本来、経営とは統合的・俯瞰(ふかん)的な視野に立ち、人々との協働によって目指す未来を実現するエキサイティングな仕事であるはずだ。せめて管理職ではなく「経営職」と呼ぶことから始めてはどうか。
「経営」について真剣に考え、将来を担う経営者候補を選抜し育成する仕組みや仕掛けを抜本的に設計し直すことは急務である。「マネジメントのプロフェッショナル」を生み出せない企業が生き残るのは、今後ますます難しくなっていくだろう・・・