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政治の役割と評価、特に争点の設定とその評価

(「新地方自治入門」p297)について、
2003年11月9日に投票が行われた衆議院選挙では、「マニフェスト」が大きく取り上げられました。私は、今回の選挙は、後世「マニフェスト選挙」と呼ばれるものになると考えています。
「今回、有権者がマニフェストによって投票したか」「マニフェスト選挙は2大政党制を進めたか」については、今後明らかにされるでしょう。私が言う「マニフェスト選挙」は、このような「その時点もの」を指してはいません。
私が今回の選挙を「マニフェスト選挙」というのは、今回のマニフェスト、特に与党のものが今後の政治を「縛り」、そしてそのことが日本の政治を変えると考えているからです。
躍進はしましたが負けた民主党は、マニフェストを実行する必要はありません(できません)。しかし、勝った与党は、約束を実行しなければなりません。そして、野党は、与党の実績を追求します。
その中でも注目されるのは、「三位一体」です。これは、時期と量が明示されています。しかも、「3年間で4兆円」というと、多くの人は初年度にある程度の成果を期待するでしょう。そして、このマニフェストは次回の総選挙はもちろん、来年7月に行われる参議院選挙が「中間試験」になると考えられます。
私が著書で述べた「争点の設定と評価」に、新しい時代が来ると期待しています。

関西学院大学東京オフィス開設記念講演会

当日のアンケート結果を、見せていただきました。9割を超える方が、「大変満足」「満足」と答えてくださいました。ありがとうございます。「なんとも言えない」「やや不満」の方も、おられました。その方にはご期待に沿えず、申し訳ありませんでした。「もっと質問を取り上げて欲しかった」という記述もありましたので、以下、意見を書かれた方への回答です。
「聴衆が地方公務員だから、もう少し専門的でもよかった」について。私もそう思ったんですが、最初に挙手をお願いしたら、案外公務員でない方が多かったもので。一方、「交付税制度についてもっと解説して欲しかった」という意見もありました。
「これからの見通しについて、具体的な数字を聞きたかった」について。ええ、私もお話しできれば、お話ししたいのですが。しかしこれから、いくら増税し、いくら歳出を削減するか。その方向を決めるのは、内閣であり国会です(拙著「新地方自治入門」p128、p292)。官僚は、その政治が決めたことを実行する機関です。私が、責任を持って決めることはできないのです。(その代わり、意見を述べたり、案を書いたりして、職責を果たそうとしています。)
「首長や議員は、事業をすることが住民の幸福だと思っている。岡本の意見は通じない」「市民参加を進めることと議員をボランティアにするのが良い」といった意見について。同意見です。そう思って「新地方自治入門」を書いたのですが。私の主張が「常識」になるのには、まだまだ時間がかかりますね。

関西大学出講

10日には、関西大学で「三位一体改革と地方交付税」を講義してきました。100人を超える学生が、聞いてくれました。数人「意識不明=居眠り」がいましたが、その他は私語もなく、熱心でした。学生の皆さん、質問時間をとらなくて、ごめんなさい。でも、「教室の後ろの方に座る」というのは、講師に対して失礼だと思いませんか。来年は、前の方から座ってください。

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(林先生が撮ってくださった授業風景です。
それなら、もっときれいに板書すべきでした。)

新地方自治入門 補足

「新地方自治入門」の補足と追加のページです。
地方自治については地方行政も、日本の行政については官僚論日本の政治行政の構造的課題にも、私の考えを述べています。
(1人あたりGDPの国際比較)
内閣府の研究で、最新の状況を勉強しました。2004年時点では、日本は35,922ドルです(59ページの図表5-1)。地方自治入門p6では、2001年度の数字として、32,763ドルと書いたので、そんなに大きく変わっていません。しかし、外国との比較では、大きく変わっています。
アメリカは39,732ドルで、これも大きな変化はなし。ところが、イギリスが35,616ドル、フランスが32,918ドル、ドイツが33,346ドルです。拙著では、これらの国は日本の3分の2程度と書きましたが、現在では日本と並んでいます。なお、韓国は14,136ドルです。
これだけ変動が激しいのは、ドル換算していることが要因としてあります。ユーロはこの間に、ドルに対して3割も高くなっています。国内で同じGDPでも、ドルに換算すると3割り増しになるのです。
そこで、購買力平価で比較すると(62ページの図表5-4)、日本29,064に対し、アメリカ39,732、イギリス30,805、フランス28,994、ドイツ28,813となります。もっとも、この比較では、1995年は日本22,473、アメリカ27,542、イギリス19,862となり、ドル換算での日本41,927、アメリカ27,542、イギリス19,538、フランス26,425とは全く違った姿が見えます。(2006年9月4日)
【第2章】
図表2-4中「地縁団体」について、総務省が平成14年11月に調査をしました。総数は29万7千でほとんど変わっていませんが、法人格を取得した団体は2万2千と大幅に増加しています。詳しくは月刊「地方自治」(ぎょうせい)平成16年2月号をご覧ください。
【第3章】
地域自治組織(p53)については、地方制度調査会が、最終答申を出しました。今後の地方自治制度のあり方に関する答申(平成15年11月13日)
それに基づき、「地方自治法改正」が、改正されました(平成16年5月)
【第5章】
景気回復と国債の金利(p121)について、
国民の持つ金融資産が、かつては銀行預金や株式を通じて企業への貸付に回っていました。そして、経済が成長しました。それが近年、企業への貸付が減り、国債・地方債に回っています。不況だから国債が売れ、金利も低いのです。逆に言うと、国債で金融資産を吸い上げている限り、景気は良くならないのです。
具体的な数字は、2003年6月9日の経済財政諮問会議に提出された資料(p4資金循環の10年前との比較図)を見てください。(2003.11.29)
その他、国家財政のページをご覧ください。
【第6章】
地域社会の課題(国が考えている課題)p155
地域の財産(暮らしの環境)p186について
単行本では割愛しましたが、内閣府(旧経済企画庁)が毎年出している「国民生活白書」は、お金やものでない暮らしの豊かさを研究しています。毎年のテーマを並べるだけでも、興味深いものがあります。
【2004年国民生活白書:新しい地域の公共】
今年の「国民生活白書」(6月刊)は、「人のつながりが変える暮らしと地域―新しい「公共」への道」です。NPOなど地域の住民が集まって行っている多様な活動を取り上げています。いくつもの事例を紹介し、その意義や条件を分析しています。さらに、地方公共団体との関係や新しい形の公共になることを述べています。「官」ではない、「公共」です。
国民生活白書は、毎年、興味深いテーマを取り上げています。昨年はデフレと生活、若年フリーター問題。14年は家族の暮らし、12年はボランティア、10年は中年などです。その他、東京と地方、安全で安心な生活設計、多様な豊かさも。「地方自治50年の成果と課題」の連載時にはそれらにも言及したのですが、「新地方自治入門」にまとめたときに、分量の関係で削除しました。経済的価値でない豊かさという観点で、第7章に少し触れてあります。(7月2日、3日)

関西学院大学東京オフィス開設記念講演会

11月11日に新宿住友ホールで、「地方自治の創造と破壊-地方交付税の来し方行く末」と題して、講演と小西砂千夫先生との対談をしました。当日は雨にもかかわらず、大勢の方が来てくださいました。いろんな方々の前で話すことは、勉強になります(その分、大変ですが)。ありがとうございました。