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アメリカ、戦争通じ国家形成の歴史

2026年3月22日   岡本全勝

3月18日の読売新聞「デイビッド・シルビー米コーネル大准教授に聞く」「米、戦争通じ国家形成の歴史 武力行使多発「特異でない」」から。

・・・米国の第2次トランプ政権の武力行使が甚だしい。現行のイラン戦争、年頭のベネズエラ攻撃、昨夏のイラン核施設攻撃の他にも、イエメン、イラク、ソマリア、ナイジェリア、シリアの反米武装組織への空爆を重ねてきた。トランプ大統領は米国史上、特異なのか。軍事史に詳しいデイビッド・シルビー米コーネル大学准教授に聞いた・・・

―第2次トランプ政権の武力行使が目立つ。米国史上、突然変異なのか。
「否。米国人には米国を平和国家とみなす傾向があるが、実際は独立革命(1775~83年)以来、戦争に終始してきた。19世紀は白人入植者が先住民を排除して西部開拓に邁進(まいしん)する一方、メキシコ戦争で領土を一気に獲得し、太平洋岸に到達する。南北戦争(1861~65年)は75万人もの戦死者を出した。1898年に太平洋のハワイを併合し、米西戦争でスペインの植民地フィリピンを得た。20世紀は二つの大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争。戦争の他に軍事作戦を数多く遂行してきた。21世紀初頭に米同時テロを被り、アフガニスタン戦争、そしてイラク戦争に出た」

―米国の国柄の本質を戦争とする指摘もある。
「米国は戦争を通じて『国のかたち』を作ってきたといえる。建国は独立革命の成果だ。南北戦争を経て奴隷制を廃止し、連邦制を定着させた。第2次大戦は米国を世界の超大国にした。米国の国柄を南北戦争は国内的に、第2次大戦は世界的に定めたといえる」
「第2次大戦は多くの米国人にとって、米国がナチスドイツと軍国日本を負かして民主主義を防衛し、文明を救った正しい戦争だ。1945年9月2日の戦艦ミズーリ号での日本の降伏式典の映像がある。米国人はそれを正義の祝賀式典として記憶している」
「無論、美化がある。米国の参戦は日本の真珠湾攻撃とドイツの対米宣戦布告を受けた決定。民主主義擁護が理由ではない。米国には国益のために、民主主義を拒む多くの独裁政権を支援してきた歴史もある」

―米国は20世紀後半、ベトナム戦争を経験する。
「大きな転換点だった。米国は南ベトナムを支援し、北ベトナムを空爆した。戦争は長引く。米政府は戦況の悪化を隠し、米軍の住民虐殺事件を伏せた。米国民はウソを見抜き、政府を信頼しなくなった。世界における米国の役割、そして米政府の唱える『正義』『善行』は怪しくなった」
「結局、南ベトナムは崩壊し、米軍は撤退した。敗戦にも等しい介入失敗の始まりだった。21世紀のアフガン戦争、イラク戦争はベトナム戦争の延長線上だ」

墨の生産量、80年で3%に

2026年3月22日   岡本全勝

3月5日の読売新聞夕刊「伝承のサイエンス」は「奈良墨 黒の秘密 小さい芯・炎から良質の煤」でした。

・・・1400年前の飛鳥時代に中国から朝鮮半島を経て製法が伝わったとされる墨。神社仏閣の多い奈良では伝統的に墨の需要が高く、今では全国の固形墨の9割以上が奈良県で生産され、「奈良墨」は国の伝統的工芸品に指定されている。その原料に科学の光を当て、墨への理解を深める取り組みが行われている。
墨は610年に朝鮮半島の僧・曇徴が日本に初めて製法を伝えたとされる。写経や文書の作成、学問に欠かせず、奈良の地で墨作りが発展した。興福寺(奈良市)の灯明を使って作った墨は、黒みが強く光沢を放ち、高い評判を集めた。
昔ながらの固形墨は、菜種油や松材などを不完全燃焼させた時に出る黒い微粒子の凝集「煤(すす)」と、動物の骨や皮を煮出したコラーゲンなどを含む天然の接着剤「膠(にかわ)」を、10対6ほどの割合で混ぜて作る。香料を加えて練り、型に入れた後、数か月かけて乾燥させる・・・・

詳しくは記事を読んでいただくとして、私が気になったのは次の文章です。小学校と中学校では書道を習いましたが、その後は筆を使いませんねえ。
・・・奈良製墨組合によると、1935年に2265万丁(1丁=墨15グラム)だった固形墨の生産量は2013年に70万丁となり、たった80年で3%にまで落ち込んだ。書道人口の減少に加えて手軽に使える液体墨の普及が拍車をかけ、組合員数も減少した・・・

変化した日常風景

2026年3月21日   岡本全勝

物心がついてから、70年近くの時間が経ちました。社会は大きく変わったところと、あまり変わっていないところがあります。

特に変わったものとして、育児の風景があります。
私の子どもの頃は、赤ちゃんはお母さんが背中に背負うものでした。乳母車も、船のように大きかったです。乳母車の中で、遊ぶことができました。
最近では、お父さんも赤ちゃんを連れています。その際は、胸の前で抱っこをしています。お父さんもお母さんも、おんぶしている人はめったに見かけませんね。乳母車も、折りたためる、軽い小さなものになりました。ただし、シートベルトがついています。ベビーカーと呼ぶそうですが、これも和製英語らしいです。
電車の中でも、普通に見るようになりました。バスにも乗ることができますが、車内が狭くて窮屈ですね。

幼児を自転車に乗せている風景も、普通になりました。昔は、幼児を乗せる椅子がなかったのです。今は、自転車の前と後ろに幼児を乗せる椅子がついています。また、安定がよいように高さが低い(車輪が小さい)自転車や、楽にこげる電動補助自転車も多いです。

広告費の半分はネット広告

2026年3月21日   岡本全勝

3月17日の朝日新聞、小林美香さんへの取材「作られた像、誘われる有権者 ネット広告と衆院選、ジェンダー表象研究者に聞く」から。

・・・選挙期間を通して、ネット広告の多さは異様に感じました。特に自民党は、YouTubeのような動画プラットフォームだけではなく、写真を用いたバナー広告など、量で圧倒していたように見えます。
広告は数秒のビジュアルや短いメッセージで消費者の「内なる欲望」を喚起し、消費行動へと誘導するように設計されています。
「アテンションエコノミー」という言葉で言い表されるように、いかに短時間で人々の認知を獲得し、情報を刷り込むかが、商品やサービスの消費行動のみならず、投票行動にも大きな影響を与えます。有権者の多くが、政策や公約を比較し検討するよりも、膨大な広告費をつぎ込んで出稿された広告の単純接触効果によって、投票先を選択しているのではないか、と強い危機感を抱いています・・・

次のような数字が載っていました。
・・・電通が公開する「日本の広告費」によると、2024年の日本の広告費は7兆6730億円。同年度の防衛予算7・9兆円に近い金額です。うちネット広告費は3兆6517億円と総広告費の47・6%を占め、マスコミ4媒体(テレビ、新聞、ラジオ、雑誌)の広告費2兆3363億円を大きく上回っています。
今後も増加が予測される広告費は、私たちの価値観や生活に大きな影響を与えているのにもかかわらず、その機能や全体像がつかみづらいのが実情です・・・

所得格差は拡大、再分配所得格差は横ばい

2026年3月21日   岡本全勝

3月2日の日経新聞オピニオン欄に、西條都夫・上級論説委員の「日本が向き合うべき問題は格差ではなく貧困だ 再分配の効率化進めよ」が載っていました。

・・・日本経済をめぐって、過去四半世紀にわたり格差拡大のナラティブ(物語)が繰り返されてきた。非正規労働の拡大や行き過ぎた新自由主義のせいで貧富の差が広がり、昭和時代の総中流社会は過去のものになった、という言説である。
先の総選挙でも、左派系のある政党は「税金は大金持ちから取れ」というスローガンをかかげ、それが格差を縮小する道だと主張した。
だが、本当に格差は広がっているのだろうか。2025年12月に厚生労働省が公表した「所得再分配調査」から浮かび上がるのは、通念とは少し異なる日本経済の姿だ。

それによると、23年の世帯別所得分布の均等度を示すジニ係数(0〜1の値をとり、格差は0に近いほど小さく、1に近いほど大きい)は当初所得では前回調査より上昇したが、再分配所得で見るとほぼ横ばいで、格差は広がりも縮みもしなかった。
世代別にみると、シニア層ほど所得や資産のバラツキが大きいのは周知の事実だ。高齢者の経済環境は長年の仕事の遍歴や人的なつながり、運不運といった個人的な要素を強く反映するので、若い世代に比べ、世代内の格差がどうしても大きくなる(大竹文雄著「日本の不平等」)。
したがって高齢化の進む日本である程度の格差が生じるのは自然な流れで、これが当初所得のジニ係数を押し上げた要因とみられる。

むしろ注目に値するのは、当初所得から税金や社会保険料を差し引き、社会保障給付(公的年金や医療などの現物給付を含む)を加えた再分配所得のジニ係数が横ばいだったことだ。
この傾向は実は今回に限らず、1999年の調査以降、一貫して続いているトレンドで、再分配ジニ係数は0.37〜0.39のボックス内を微妙に上下しているだけだ。
ちなみに人々の意識も驚くほど変化に乏しい。内閣府が24年夏に実施した「国民生活に関する世論調査」では、中流を自認する国民が89%に達し、1.7%の上流や8.7%の下流を圧倒した。
高齢化が世界トップ級の日本で、格差拡大に歯止めがかかっている現状をどう評価すべきか。欠点は多々あっても、税や社会保険などの再分配システムが今のところ何とか機能している証しだろう。
龍谷大学の竹中正治名誉教授は「過去10年以上にわたって人手不足が続き、その間、失業率の低下や最低賃金の上昇、そして非正規から正規雇用への登用が進んだ。これも格差を抑止する効果があった」と分析する・・・

・・・ただ、格差の不拡大を喜んでばかりもいられない。一橋大の小塩隆士特任教授は「所得格差・貧困の近年の動向」という最近の論考で、今の日本経済は「みんな仲良く貧乏に」状態だと指摘した。
米国のように人工知能(AI)長者などのスーパーリッチが大量に誕生するわけでもなく、上流とそれ以外の差はさほど開かない。それはいいとしても、長期に及ぶ低成長の結果、所得分布の重心が低い方向にシフトした。さらに足元では円安による輸入物価、とりわけ食品価格の上昇が家計に重くのしかかる。

今の日本が早急に向き合うべき社会経済のテーマは、おそらく貧困リスクである。
それを浮き彫りにしたのが、総務省が2月に公表した25年のエンゲル係数だ。消費支出に占める食費の割合を示すエンゲル係数は貧しい世帯や国ほど高く、裕福になると低下することで知られる。
その値が2人以上世帯のケースで25年は28.6%に上昇し、44年前の1981年の水準に近づいた。05年ごろからじわじわ上がってきたが、近年は上げ幅が急だ。円安や天候不順による不作で、生きていくために必須の食品の値段が上がり、生活を圧迫される人が少なくない・・・