年別アーカイブ:2026年

人口減少は脅威か

2026年3月18日   岡本全勝

2月25日の日経新聞、マーティン・ウルフさんの「人口減少は本当に脅威か 現役世代の負担増、吸収可能」から。
・・・米生物学者のポール・エーリック氏と妻アン氏は、1968年に著書「人口爆弾」を出版し、大規模な飢饉が迫っているという悪名高い予言をした。彼らは飢饉の脅威は、人口の爆発的な増加によって生じると主張した。
だが今日、出生率は人口の維持に必要な水準(人口置換水準)を下回るようになり、バンス米副大統領などが人口減少への懸念を表明している。飢饉に直面しているというエーリック夫妻の見立ては誤っていたのだ。
では、その正反対の警告も間違っている可能性はあるのだろうか。答えは「イエス」だ。

英オックスフォード大の研究者などでつくる「アワー・ワールド・イン・データ」の推計によると、1万2000年前の世界人口はわずか500万人だった。西暦0年時点では2億3000万人、1800年には10億人、1960年には30億人、現在は80億人だ。将来については、国連が2100年の世界人口を102億人と予想している。
地球から人類が消滅しそうにはない。問題なのは、多くの国で出生率が人口置換水準に満たなくなっていることだ。特に中国などでこの傾向が著しい。世界の主要地域における例外は南アジアとアフリカだけだ・・・

・・・では、多くの地域で人口が縮小し、人類が絶滅に至る可能性を憂慮すべきなのだろうか。英国の経済学者アデア・ターナー氏は「ノー」と答える。
出生率の低下が惨事を招くと議論されやすいのは、現役世代が高齢者と年少者をどれだけ支えているかを示す「従属人口指数」が急上昇するという考え方にある。15歳未満の年少者と65歳以上の高齢者を足した人口を、生産年齢人口で割った値という一般的な定義においては、確かにその通りだ。
ところが、この計算方法では若者の多くが20代まで親に扶養されている点は見過ごされている。出生率が極端に低い場合を除き、従属人口指数の上昇はそこまで大きくならないだろう。また一般的な定義では、高齢者が働き続ける可能性も無視している。フランスでは2024年、65歳以上で働く人の割合がわずか4%にとどまった一方、韓国では38%に上った。
ターナー氏によると、人工知能(AI)によって加速すると期待される生産性の向上も解決策の一つだ。2世紀前に比べて労働時間がはるかに短くなったのは、1800年ごろに比べて生産性が飛躍的に高まったからだ。その結果、高所得国では15歳以上が労働に費やす時間の割合が、少なくとも60%減少したと指摘する。
一方、1人あたりの生産量は15倍に拡大したという。こうした傾向は今後も続く公算が大きく、従属人口指数が若干上昇しても十分に対処可能だろう・・・

・・・つまり、人口の減少を恐れるべきだという決定的な理由は存在しない。出生率が1を割り込めばさすがに問題だが、1.5以上であれば少しばかりの先見の明で万全に対応できるのだ・・・

「ボールにみんなが群がる子どものサッカー」

2026年3月17日   岡本全勝

働き方改革を時間で語るな」の続きになります。安永竜夫・三井物産会長は「働き方改革 時間で語るな」の中で「ボールにみんなが群がる子どものサッカーではダメだ。全体像を把握し、各組織・チームで最適な働き方を考える必要がある」と語っておられます。

思い出しました。高校時代にサッカー部に所属したのですが、いくつか金言を教えてもらいました。
例えば、「後ろの声は神の声」です。ボールを持った選手は、前とボールを見ます。周囲を見ることは難しいのです。その際に、横や後ろの選手が声をかけることは、とても役に立ちます。一番後ろにいるゴールキーパーやバックスが書ける声を「後ろの声」という場合もあるようですが。

この「ボールにみんなが群がる子どものサッカー」は、私の頃は「百姓一揆」と呼びました。みんなが一斉に、同じ所を目指して走って行くのです。
攻撃には、空きスペースを使うことが重要です。左サイドから攻めていて、敵の防御も左に寄っていると、右前に空いたスペースができます。右ウイングの選手は、ボールに近寄ることなく、離れてその空きスペースに動いてボールを待ちます。
野球のテレビ中継とサッカーの中継との違いが、ここにあります。野球の場合はボールを追いかけていたら画面ができます。しかしサッカーの場合は、それでは攻撃の善し悪しがわからないのです。

これらの考え方は、官僚になってからも役に立ちました。本人があることに夢中になって、周囲が見えなくなることがあります。その時に、他者からの助言は役に立ちます。また、みんなが同じ方向を向いているときに、少し離れて見てみる、そして別の方向を考えるのです。すると、違ったことが見えてきます。

復興予算32.5兆円の内訳

2026年3月17日   岡本全勝

3月5日の朝日新聞に「東日本大震災15年」「復興予算 32.5兆円、どこからどこへ」が載っていました。

・・・国が東日本大震災と、東京電力福島第一原子力発電所事故の復興予算に投じたお金は、2024年度までで約32.5兆円になった。国民1人当たり27万円に相当する。どこから集め、どう使ったか、お金の流れから探った。

復興に使うお金は増税や国の借金「復興債」などで賄っている。24年度までの国の決算でまとめると、国の借金は約17・4兆円分増え、増税額は約7・2兆円に達した。「借金」は税収や政府保有株の売却益などで返していく。
災害復興のための増税は戦後初。復興特別所得税は今年まで2・1%、27~47年は1・1%を上乗せする方向。法人税は12年度から原則2年、10%を付加。住民税も14~23年度、納税者1人当たり年1千円を上乗せした。「今を生きる世代全体で連携し負担を分かち合う」との考えが増税の原点にある。

使い道は、防潮堤や高台移転などの「住宅再建・復興まちづくり」が約13・5兆円と最多で、「産業・なりわいの再生」は約4・5兆円。生活支援などの「被災者支援」は約2・3兆円と全体の1割弱。復興庁のまとめだ。

5年ごとに見直してきた復興予算の枠は膨らみ続ける。15年度までの「集中復興期間」は26・3兆円で、20年度までの「復興・創生期間」で32・0兆円へ。今年度で終わる「第2期復興・創生期間」で32・9兆円、次の「第3期復興・創生期間」の終わる30年度までで34・9兆円となる見込みだ・・・

職場に残る不思議な習慣

2026年3月17日   岡本全勝

2月28日の日経新聞別刷りに「Z世代が選んだビジネスの謎習慣」が載っていました。
・・・あなたの職場に、なぜあるのか分からない習慣はないだろうか。Z世代の正社員1000人に、時代遅れだと思う「ビジネスの謎習慣」をアンケートした・・・
1位「上司が帰るまで帰れない雰囲気」です。へえ、今時そんな職場があるのですね。
2位、有休申請時に「申し訳ありません」
3位、今もなお残るハンコ必須の紙書類
4位、面識がなくても「お世話になっております」と書くメール
5位、休日の社員旅行や社会イベント
まだ続きますが、これくらいにしておきましょう。

情報が多すぎると伝わらない

2026年3月16日   岡本全勝

時事通信社の地方自治体向け情報サービス「iJAMP」2025年3月7日号に、岡本正弁護士の「自治体職員のための災害復興法学(5)=情報はあっても伝わらない ラストワンマイルをつなぐ災害ケースマネジメント」が載っていました(今ごろ紹介してすみません)。

・・・自治体側が情報を精力的に発信しても、被災者には伝わらず、その結果生活再建に役立つ支援制度の申請に至らず再建できない―――。その理由は、情報が多すぎること、情報が難解であること、そもそも情報が公表されていないこと、などが挙げられます。

災害復興支援の各種制度の根拠は法律です。所管する省庁の担当部局が、災害時に利用できる支援制度を情報発信します。それ自体はとても大切ですが、その量があまりに多いのです。私が内閣府出向中におきた東日本大震災では、半年間で約2000通の災害に関する「通知」「事務連絡」「お知らせ」が、各省庁から都道府県等へ発出されました。とても被災地でさばききれる情報量ではありません。

内容も特殊です。日常業務では聞いたこともない単語が次々出てきます。「災害に対する金融上の措置」(財務省等)、「被災者に係る被保険者証等の提示等について」(厚生労働省)、「被災中小企業・小規模事業者対策について」(中小企業庁)などの通知類は平時に目にすることはまずありません。市民に周知すべきものなのか、誰がどう説明するのか、判断がつかないまま、大量の情報が掲示板等にあふれて埋もれていきます。

国が自治体に通知等を発出しながら、それを公表しない場合もあります。災害救助法が適用された災害で必ず発信される通知「避難所の確保及び生活環境の整備について」(内閣府)は、国が自発的に公表しません(なお、現在公表中のものはすべて私や支援専門家らが内閣府へ働きかけて公表に至ったものです)。応援職員や被災した市町村も目にすることなく、支援の遅れ、法解釈の誤りを生んでしまったこともあります・・・