年別アーカイブ:2026年

「東大教師が新入生にすすめる本」2026年

2026年4月7日   岡本全勝

東大出版会「UP」4月号は、定例の「東大教師が新入生にすすめる本」特集です。
大学の先生が最近はどのような学問を教えておられるのかを知るとともに、学生にどのような本を薦めておられるか、勉強になります。特に後者は、古典というより新古典というような本が紹介されていて、参考になります。

本屋にはたくさんの本が並んでいますが、どれを読んだら良いか迷いますよね。その際に役に立つのが、新聞の書評欄です。書評欄は新刊書が中心です。その点で、「東大教師が新入生にすすめる本」は新古典などが挙げられていて、少し趣旨が違います。
いくつか読みたくなって、注文してしまいました。頂き物の本も溜まっているのに・・・。
東大教師が新入生にすすめる本」2019年、「文化、政治、経済の新しい古典

板垣勝彦著『分権改革の現在地と法』

2026年4月6日   岡本全勝

板垣勝彦著『分権改革の現在地と法――分権と集権の狭間で揺れる地方自治のいま―』(2026年、第一法規)を紹介します。板垣先生は、地方行政の現場を踏まえた行政法学を展開しておられます。本書は最近発表された論考を集めたものですが、はしがきで「少し思い切った3つの視座を設定した」と書いておられます。分権改革以降の法的課題がよく整理されていると思います。一部を引用します。

第一は、地方自治の「法化」ともいうべき事象である。岩沼市議会事件の最高裁大法廷判決は、これまで地方議会の自律的判断に委ねられてきた議員出席停止処分に対し司法審査を及ぼすという判例変更を行い、幾次にもわたる辺野古紛争は、国-地方間の紛争の舞台をインフォーマルな政治過程から公開の法廷へと移した。泉佐野ふるさと納税訴訟などは、以前であれば地方が国に抑え込まれる決着に終わっていたことは想像に難くない。

第二は、目の前の政策課題に対し、条例制定を通じて解決を試みる政策法務の進展である。空き家条例がまさに好例で、平成22(2010)年に埼玉県所沢市で制定されてからわずか数年で全国400以上の市区町村へと広がり、とうとう空家特措法という形で国全体の施策へと上り詰めた。これは、住民に最も身近な存在である市町村こそ、住民ニーズを最も早期かつ的確に把握し、迅速に対応できるのだから(認知的先導性)、住民の暮らしにかかわる事項は第一次的に市町村に任せるべきだという補完性の原理の表れといえる。

第三が、俄かに押し寄せた「集権」の動きである。個人情報保護法制の一元化とマイナンバー、そして令和6年法改正による「補充的指示権」の立法は、程度の差こそあれ、「分権」一辺倒であった数十年間の動きに対する反作用といえる要素があり、様々な評価があると思われる。しかし、私は、あえて積極的に、わが国が「分権」と「集権」の間で最適なバランスを模索する時代に突入したのだと理解したい。
皮肉にも分権改革が一応の区切りを迎えた21世紀に入ると、少子高齢化の進行、デジタル社会の到来、災害・感染症リスクの現実化、社会保障費の激増など、分権を取り巻く環境が大きく変化した。国が慢性的な財政難に陥る中で、地方においても、増大する一方の事務・事業に人員確保が追い付いていない。

世界と異なる日本の通知表

2026年4月6日   岡本全勝

3月23日の朝日新聞に、「学校の通知表、世界と違う?」が載っていました。

・・・年度末になると手にする「通知表」。子も、親も、開くときにドキドキします。世界と日本の通知表について、佛教大の田中耕治客員教授(教育評価論)に聞きました・・・

―世界各地の通知表の特徴を教えてください。
米国カリフォルニア州では保護者が子どもの成績や学習状況をウェブ上で確認できます。途中経過も見られる仕組みになっていて、子どもが学年末の基準をどの程度、習得しているのかが分かるようになっています。
スウェーデンで通知表にあたるのは「個人発達計画」と呼ばれ、低学年の子どもの成長や学習の進み具合を記録することが重視され、高学年では、その記録は進学資料となります。
オーストリアの通知表には「資格証明」が含まれます。たとえば「5年生の内容を理解した」ことを、校長や担任の教師が署名して証明します。進学の成績証明としても利用されます。
通知表に成績が書かれていないのは韓国の初等学校(小学校に相当)です。全国共通の様式である「生活通知表」は、生活面や行動特性などの生活記録が中心です。学校内での暴力に関し、処罰があった場合は記載が義務化されています。処罰を受けた場合、多くの大学に入学できません。

―通知表の役割はどうあるべきでしょうか。
欧州では進級や進学にあたって、その学年にふさわしい学習内容を「修得」できたかどうかを重視します。
日本は「競争」と「序列化」の圧力が強いように感じます。本来、子どもの成長や発達の記録を家庭に伝え、学校と家庭が協力して子育てすることを促すものです。
通知表は「他の子と比べる」ものではなく、「自分の子が、どこまでできているか」「どんな成長をしているか」を知るための記録です。数字だけにとらわれず、成長や発達の過程に目を向けることが大切です。

―日本の通知表は、いつから始まったのですか。
明治初期に学校と家庭の連絡簿として始まり、学籍簿制定の1900(明治33)年ごろに「成績欄」「出欠の記録」「学校家庭通信」などを備えた今に通じる通知表がつくられました。大正時代に入ると、学歴社会の高まりで成績重視に変化しました。相対評価の導入は戦後です。

シン・みらいチャレンジプログラム交流会

2026年4月5日   岡本全勝

今日4月5日は、シン・みらいチャレンジプログラム 交流会に出席のため、福島県郡山市に行ってきました。
サントリーグループは、東日本大震災からの復興支援を、長年続けてくださっています。特に被災3県での地域活動に、助成と助言をしています。行政の手が及びにくい、地域の課題が対象です。ありがとうございます。私は、その審査員を引き受けています。

今日の催しは、助成先代表による成果発表と、助成先団体の交流会です。参加団体のいくつかを紹介します。
大船渡市母子寡婦福祉協会母子部つばめカフェ松島町しおかぜホーム会津若松市ロータス、郡山市しゅふコミ、郡山市ブルーベリーミュージアム、福島市ビーンズふくしま・・・。

それぞれの団体の活動は、ひとり親家庭の母親支援や子どもの居場所つくりなど異なります。献身的な活動に、頭が下がります。ふだんは相互の連携がないのですが、それらの方々に連携を取って協働してもらえないかという試みです。

明日朝から、広島市で出番があるので、夕方東京駅に戻り、続いて新幹線で向かいます。

中学生の英語力が低下

2026年4月5日   岡本全勝

3月22日の読売新聞言論欄に、古沢由紀子・編集委員の「中学英語 基礎定着に課題」が載っていました。
・・・ 小学校で英語を教科化したにもかかわらず、中学校段階の英語力が低下したという調査結果が波紋を広げている。授業で会話などの活動が増えた一方で、文法や語彙の基礎知識が定着していないとの指摘もある。文部科学省はコミュニケーション重視の方向性は維持しつつ、小中高校の次期学習指導要領で英語教育の内容を見直す方針だ。今の時代に求められる「使える英語」の習得に何が必要なのか。

昨年7月に公表された学力調査の結果を受け、文科省や教育関係者に衝撃が走った。全国の小学6年と中学3年計約10万人を抽出して2024年に行われた「経年変化分析調査」。小学校の国語と算数、中学校の国語、数学、英語を対象に3年に1回程度実施されており、前回(21年)に比べて全教科の成績(スコア)が低下した。その中で最も低下幅が大きいのが中学の英語だった。
同調査は毎回大半が同じ問題(非公表)で、学力の変化を把握しやすい。16年に実施されなかった英語は2回目の調査で、文科省の担当者は20年以降の新型コロナウイルスの流行が「話す活動などに影響した可能性がある」とみる。

英語教育に詳しい斉田智里・横浜国立大教授は「話すことだけでなく、『聞く』『読む』『書く』力を問う問題でも全体的に正答率が低下し、英文を正確に書く問題で顕著に下がった」と分析。「コミュニケーションを重視する英語教育の方向性は間違っていないが、授業での文法指導や反復練習の時間が不足している可能性があり、基礎が定着していない生徒の支援が必要だ」と指摘する。
同様の傾向は23年度に行われた全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)からもうかがえる。過去の調査と出題は異なるが、4年ぶりに行われた中3の英語の平均正答率は前回から大きく低下し、デジタル端末を使い「話す」力を測る問題では1問もできない生徒が6割を超えた。

その一方で、一定水準の英語力を持つ生徒の増加を示す調査結果もある。文科省の24年度の「英語教育実施状況調査」では、中3で実用英語技能検定(英検)3級以上、高3で同準2級以上の英語力を持つ公立校の生徒はいずれも増加傾向だ。入試で英検などが重視される影響も大きいとみられ、学校現場には「塾で対策をする生徒が上位の級を取得し、二極化している」との見方がある・・・